あらすじ
信長、秀吉と渡り合った智将が秋田にいた!
綿密な資料研究で初めて描き出される、知られざる英雄の人生とは!?
齢十五にして安東家を継いだ八代目当主、愛季は胸を滾らせた。国の安寧は、民を養ってこそなせるもの。そのためにも、かつて東北有数と言われた
野代(能代)湊を復興してみせる。「載舟覆舟」の国造りを始めた愛季だが、次々困難に直面する。檜山と湊、両安東家の統一、蝦夷との交易、
中央勢力の脅威————。「斗星(北斗七星)の北天に在るにさも似たり」と評された稀代の智将を描く本格歴史長編。
感情タグBEST3
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今年ベスト更新。戦国時代の出羽の雄、安東愛季を描く。陸奥側の戦国史は詳しいが、安東氏のことはよく知らなかった。
まず愛季の人物の描き方が非常に良い。領土拡大よりも領民の民のための戦という軸で史実を紡いでいく技量が素晴らしい。載舟覆舟、一即一切、枉尺直尋という指針が効果的に挟まれていく点も気持ち良い。汀という(恐らく)架空の女性に纏わるエピソードがまさにそうで、運命的な出会いと縁が人生を翻弄していく。
序盤は奥村宗右衛門への三顧の礼、清水治郎兵衛との街づくりといった治世の基盤づくり、後半は領土安寧のための戦といった流れも物語として非常に分かりやすい。戦も馴染みのない人物が多い中シンプルに情報が詰まっておりテンポ良くよめた。個人的には京との連携、織田・豊臣に早くに目をつけていた先見性に愛季の凄さを感じる。
東北戦国史というと、高橋克彦氏『天を衝く』の南部氏、九戸政実との対比で見てしまうが、まず鹿角攻防で『天を衝く』の冒頭の安東氏との戦いが出てきたのは非常に嬉しい(第四章)。安東は安倍氏、南部は源氏の子孫ということで対立する一族だが本書で安東家も好きになった。蝦夷の民として東北史に大きな功績を残したのは間違いない。そもそも後三年の役では共に手を携えたのであり、今も東北という一括りになっていることを考えるとそこにも歴史の面白みを感じる。『天を衝く』を読んだ当時は安東氏に嫌な感じを覚えたものだが物は見方によるのだなと思う。改めて『天を衝く』を軽く読んだが全く嫌な存在ではなくこちらが勝手に作っていたのだと感じる。本書でも大浦氏(津軽氏)は嫌な奴であるし…。
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安東愛季の一代記。
また好きな小説が一冊増えました。
戦国武将や大名好きには当たり前に知られている安東愛季ですが、こんなに名君だとは思っていなかった。
急に家督を継いでからの苦労と大きな目標と自制心などなど素晴らしい大名です。
「戴舟覆舟」の考え方は素晴らしく最期までやり遂げた名君の小説。
戦国武将や大名好きの方にはおすすめ致します。
2022/1
Posted by ブクログ
秋田の戦国大名、安東愛季の一生を描いた小説。 信長の野望で認識してた程度の知識しかなかったので、安東家の家系の話になると少し混乱しましたが、交易を盛んにして国を豊かにすることを目指すという内容は戦国時代の武将の小説としては珍しくて、最近まで読んでいた歴史小説とは異なる趣旨で楽しめました。実際にルイスフロイスの記録に残るほど交易で信長と誼を結んで中央へ影響力があった様なので、その先見性と名君ぶりが小説を通じて伝わります。地図付きなのでありがたい。
Posted by ブクログ
安東舜季から檜山を引き継いだ愛季。松前の代官に据えていた蠣崎氏との主従関係も崩れかけ野代湊の交易も衰退していく。国内に目を向けると年貢に納める白米の為粟飯で凌ぐ領民に強い衝撃を受ける。国を豊かにする為に在野の名士奥村宗右衛門に三顧の礼を尽くす。先代と意見の相違があって隠棲していた清水治郎兵衛を説得し野代に大きな湊を造ることを誓う。弟の茂季が治める湊家、小鹿島を治める相川弾正の水軍それに砂越家と婚姻することによって北海の制海権を完全なものとした。浅利家の内訌を利用し弟勝頼に味方し比内地方を領国として加える。しかし奥羽の雄南部との新たな争いが起きることになる。現状を打破する為津軽の浪岡御所に娘松を嫁がせる。豊島休心の謀反により弟の湊家が危機に陥るが素早く対応し謀反を鎮める。上方で織田信長が台頭してきたら東北地方でいち早く鷹、馬など送り友好関係を築く。出羽の統一を目指していた矢先信じていた相川弾正に裏切られる。この時敵方となっていた愛季の隠し子に命を奪われる事になる。