あらすじ
若き日の小泉八雲が大英帝国で出会う怪異と謎。
父母を亡くし辺境の寄宿学校に編入したオーランドは、この世の怪を蒐集する少年ラフカディオ・ハーン――小泉八雲と出会う。彼の故郷アイルランドで休暇を送る二人は、死を呼ぶ≪女の妖精(バン・シー)≫があらわれる館を訪ねる。旧家に隠された一族の秘密とは。
のちに日本に帰化し、『怪談』を著す八雲若き日の青春奇譚!
仄暗い生と死の境界領域を、彷徨わざるをえない宿命を負った二人の若者。かれらが遭遇するミステリアスな事件と、その意外な真相とは?──東雅夫(解説より)
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Posted by ブクログ
「小泉八雲」シリーズ3作目。
今回もオーランドとパトリック(ハーン)のバディは健在。パトリックの故郷、ダブリンを訪れての冒険は2人の絆をさらに深めたようだ。
アイルランドの伝承「バンシー」を巡る謎解きなのだが…そこになんと、「オスカーワイルド」登場!
オスカーもアイルランドのダブリン出身、そして父が医師(眼科医)、母が社交界でも目を引く存在という実話も盛り込まれている。
また、パトリックの叔母である「ジェーン」を巡る話しは、実際にハーン(小泉八雲)自身の回顧録でも記されているという実話。
作者である久賀理世さんが、とても詳しく時代検証をされ、ハーン自身についても掘り下げて描かれていることが理解できる。
当時の生活様式や歴史についても詳しく、謎解きとしても秀逸だ。
そして何より、性格は正反対であるが生い立ちに深い傷や悲しみがある2人にしか理解できないであろう、人生の機微、心の襞を繊細に描き、そっと触れ合う2人が本当の意味で理解し合いながら絆を深め、自身の傷を回復してゆく姿が、温かい。
朝ドラ「ばけばけ」で話題の小泉八雲だが、彼の背景を知ると、より楽しめるのではないかな、とも思う。
Posted by ブクログ
寄宿学校時代の小泉八雲を描いたミステリ作品。
前作は読んでいないけれども、本作だけでも読めるようにはなっている。ヘルン先生の生い立ちを知っているととても楽しめる。
この後のヘルン先生を思うと胸が痛いが、こうした友情を育んでいた時期があれば良いなと思う。
Posted by ブクログ
読み応えのある1冊でした。
日本人なら誰もが知っている小泉八雲
ラフカディオハーンだ。
この物語は日本にやってくる前のラフカディオが、どんな来し方をしてきたか?が物語になっている。
あちら側の世界が見える能力を持っているラフカディオと、寄宿学校で知り合ったのは、オーランド。
親を早くに失った二人は、遺産を親族に管理されている状態。
友人をすすんで作るタイプではない二人だが、他の人には見えないはずの存在を認識できることで、助け合ううちに友情が育まれる。
同じ才能を持った家庭教師キャサリンがあるお屋敷に雇われたおり、教えていた少年が気がかりでパトリック(ラフカディオハーン)に連絡をした。
不思議な事件が起こっているということを聞き、二人で謎解きをすることに。
丹念な取材と時代考証で、構築されたプロットが素晴らしく、重厚な景色までが見えるようだ。
不思議な事件は、人間の起こしたことだと謎解きされてゆくのだが。。。
Posted by ブクログ
寄宿学校で学ぶオーランドとパトリック。
二人は休暇をパトリックの故郷アイルランドで過ごす。旧家にあらわれるパン・シーの謎を解くことができるか
嫌うのでなく、必要以上になつくのでもなく、
妖に慣れてきた?二人の取り組み方に納得。
Posted by ブクログ
講談社文庫に移行してから初の書き下ろし長編。
故郷のアイルランドへ休暇のため帰り、ひょんな事からバン・シーが現れる旧家の謎を解く事になる。
八雲の生い立ちに影響を与えたエピソードが随所に語られている。
Posted by ブクログ
1・2巻は短編連作だったが今回は長編。
ミステリー要素強めだけれどこのシリーズらしいオカルト要素もちゃんとある。
パトリックのアイルランド帰省に同行したオーランド。
パトリックの乳母つながりでバンシーの出る家の話を聞く。
森に囲まれた古い館、歴史のある一族に訳アリそうな人々。
不思議なものを見る、パトリックと同じ名の小さな少年。
真相はかなり重いがパトリックとオーランドのコンビ芸だけでなく、ゴシックホラーの要素も楽しめた。
最後にオーランドの家庭教師が母の恋人だった話に同意した、小さなパディの家庭教師・リーガン。
恋人は最初は憎んでいたはずのエイダン?と思ったが、彼女だったのかな。