あらすじ
米大統領選の混乱は、アメリカの衰退の象徴である。世界は明らかに混沌に向かっており、この流れは不可逆的と言わざるを得ない。「世界の力の均衡点はアジアに移行しつつある」「アメリカ・ファーストは不変である」「中国の国際機関支配は止まらない」「北朝鮮の核開発は着実に進む」「米・イランの神経戦は続く」――。国際情勢分析の第一人者が、20の観点(アングル)から2021年以後の世界を読み解く。
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Posted by ブクログ
2021年は米国政権がトランプからバイデンへと移行することにより、米中関係、エネルギー、コロナや経済対策といった分野でこれまでとは違った流れができる可能性がありますが、本書では個別テーマについて明快に整理されています。
米国が「ハブアンドスポーク」という2国間関係重視から地域ネットワーク重視の政策への転換を図っていることの背景には、増大する経済と軍事力を背景に、アジア地域の盟主を目指す中国に地域周辺国の連携と強調することにより対応しようとしていることや、同盟国である日本の推進する「自由で開かれたインド太平洋構想」の位置づけが、その政策上重要性を持っている事情。一方、中国が経済協力、援助を背景にアジアのみならず、アフリカや南米でも影響を拡大している事実に、今後の世界規模での米中関係の緊張化が強調されています。大国同士がいずれ対立する運命にあることを予言したいわゆる「トウキディデスの罠」が現実化する勢いです。米国は中国との緊密な経済関係もある一方で、Partial Disengagementによりその優位性を牽制し、米国の軍事、経済上の優位性を確保しようとしていると筆者は言います。
他にもロシアのウクライナ侵攻が、「ハイブリッド戦争」と言われていることや、インドの非同盟路線、中国全人代による香港国家安全維持法の制定、全米有権者の22%を占める米国の福音主義者(エヴァンジェリカル、主として共和党を支持する)の重要性とイスラエルのエルサレム問題の関係、そして対イランで合致するイスラエルとアラブ諸国の利害、など、2021年初めにおける国際情勢を俯瞰するテーマが簡潔にまとめられ興味深く読みました。