あらすじ
死火山の麓の湾に裸身をさらす人魚たち、冬の眠りを控えた屋敷に現れる首を捧げ持つ白い娘……、「歪み真珠」すなわちバロックの名に似つかわしい絢爛で緻密、洗練を極めた美しき掌編15作を収めた物語の宝石箱。泉鏡花文学賞に輝く作家が放つ作品は、どれも違う鮮烈なヴィジョンを生み出す。ようこそ! 読み始めたら虜になってしまう、この圧倒的な世界へ。
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Posted by ブクログ
作者の世界観を味わえる15編の掌編集。どの話も御伽噺や神話のようであり、初めて読む話でありながら、小さいころにどこか聞いたことがあるような懐かしさを感じた。「ドロテアの首と銀の皿」以外の話は数ページしかないものが多く、ちょっと空いた時間にさらっと読めるのもありがたかった。
世界観や描写が美しく、特に「アンヌンツィアツィオーネ」の天使の羽毛が髪についていて「櫛を握って梳かすとき、髪に混じった羽毛はさやさやと指に触れることもあったが、床に舞い散ったそれは彼女が拾い上げようとする暇を与えず、闇に沈んで跡かたもなく消え失せるのだった。」という文章が天使という捉えがたい存在の儚さや神秘性を言い得ていて好きだった。
個人的には「美神の通過」「水源地まで」「ドロテアの首と銀の皿」が好きだった。
「美神の通過」は、ある荒地を美神が通過するという噂が広まり、それに対する街の女性たちの反応が描かれた物語。反応が十人十色様々で、精一杯のおめかしをする人や疑心暗鬼になる人もいるが、いざ通過した際には大慌てでほとんどの人がしっかり見れていなかったりと、ドタバタ感が好きだった。
「水源地まで」は、橋姫や魔女がいる世界で魔女と付き合う人間の主人公の物語。世界観などは正直全部理解できなかったものの、非日常の世界の穏やかな日常の1ページという感じがあり、雰囲気が好きだった。続きがもっと読みたくなる物語だった。
「ドロテアの首と銀の皿」は、夫を亡くしたばかりの未亡人が今住んでいるフウの木屋敷の相続のために必要な婚姻証明書が見当たらず家中を探しながら、ドロテアの首を銀の皿に載せた白いむすめなど不思議な現象に遭遇していく物語。夫の親戚が家に住み着いていたり、生意気な夫の姪であったり、会いたくない従兄弟が来ることになったりと、ままならない状況の中、白いむすめと主人公の関係などが明かされ婚姻証明書も見つかり問題が解決に向かっていく。読み応えがあり、心地良い読後感があった。
Posted by ブクログ
山尾悠子さんの世界観が大好きです。
理解出来てない部分が多いとは思うのですが、でもどのお話も定期的に読み返したくなる。
この独特な世界観と文章。
一度ハマると抜け出せない。
Posted by ブクログ
「歪み真珠」とは「バロック」の語源。
ファンタジーとはちょっと違うけど、幻想的な短編集。
んー、あまり好みではないかな。
# ゴルゴンゾーラ大王と草の冠
蛙の王と蛇の女王が出てくるファンタジー的な設定だが、蛙たちがカエルツボカビ症でばたばたと倒れていくというなんとも現代的で現実的なオチ。
# 女神の通過
エドワード・バーン=ジョーンズの「The Passing of Venus」という絵画に着想を得た作品で、宗教絵画にありがちな、これいったい背景はどうなってんのという非現実的な構図をそのまま真正直に受け取って、物語にしたもの。ジョークとしか思えない。
# 娼婦たち、人魚でいっぱいの海
まさにタイトル通りの光景なんだけど、何のことだかよく分からない。
# 歪み真珠
## 美しい背中のアタランテ
神話の知識が必要。アルゴナウタイは金羊毛を求める船旅で、アタランテは実際には参加したことになっているが、参加できなかった場合の並行世界的な話。だがよく分からん。
## マスクとベルガマスク
よく分からん。
## 聖アントワーヌの憂鬱
ループから抜け出せなくなってしまった感じかな。
## 水源地まで
現代風で現実的な設定になっているのが珍しい。それでも「水源を管理する魔女」や「橋姫」などの不思議な登場人物がいるし、複雑な山道を通って来たはずなのに山奥から海までが一直線に見通せるという違和感など、すこしずれた世界という感じがする。
## 向日性について
人が日向では活動し、日陰では横になって眠る世界。なんだろう。不思議。
## ドロテアの首と銀の皿
木に囲まれた洋館で冬眠をする人々という設定をラピスラズリと共有している。
つい意味や答えを求めながら読む癖がついてしまっているけれど、文章から立ち上がってくる風景や雰囲気に身を任せていればいいのだな。これはなかなかよかった。
皿に乗っていた首の持ち主、自殺した街娘は誰だったんだろう。何があったんだろう。
## 影盗みの話
影盗みが何なのか分からないままだが、たぶん生まれつきそういう属性をもった人がいる世界の話。考えてみればラピスラズリの冬籠りもこの世界には存在しない属性をもった人がいる世界の話で、要は現実とは少しだけずれた平行世界のようなものにおける物語が多いことに気づいた。
## 火の発見
ボルヘス的。
## アンヌンツィアツィオーネ
って受胎告知って意味だったとは。
ラストの「ふたなり」「世界を滅ぼす」にはどきっとした。大丈夫なのかな?
## 夜の宮殿の観光、女王との謁見つき
意味や答えを考えずに読むとすれば、特にどうという感想もない。大理石の糞だから何なんだ。
## 夜の宮殿と輝くまひるの塔
女王の庶子の物語は誰かの想像なのだろうか。なかなか心を打つ話。この物語を聞いて、女王の表情が憤怒に見えたということだろうか。
## 紫禁城の後宮でひとりの女が
西太后と幼い溥儀が登場しているようだ。龍族という通り、西太后が龍だったと思わせる描写がある。纏足は龍の足を隠すためのものだった。