【感想・ネタバレ】資本主義の再構築 公正で持続可能な世界をどう実現するかのレビュー

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Posted by ブクログ

これまで日本企業は欧米発の経営思想や主義を盲目的に輸入して消化・導入しようとしてきました。その最たる例が、株主価値最大化を目的にした経営であり、日本の経営学者やコンサルタントは、ステークホルダー経営ではなくROE(株主資本)最大化をいかにして実践するかについてここ20年間ほど喧伝してきたわけです。その背後には、欧米発の思想を無批判に優れていると考える「知識層」の風潮があったのかもしれません。

翻って米国では、2019年にビジネス界の重要団体であるビジネス・ラウンドテーブルが、企業は「株主価値最大化」ではなく「ステークホルダー重視経営」に舵を切るべきだと述べて大きなニュースになりました。本書の著者であるヘンダーソン氏も同様の主張をずいぶん前から展開してきた方で、最初はあまり見向きもされていなかったのかもしれませんが、ようやく彼女の主張が大きく世界で取り上げられるようになったのだと思います。著者は資本主義自体を終わらせようとは考えていません。本書を読むとわかるように、きわめてバランスの取れた主張が多く、悪く言えば中途半端という印象もありますが、黄金律(アリストテレス)としての中庸を重視されていると感じました。そして本書のなかには日本企業の事例もいくつか登場するように、彼女は「資本主義の再構築」にあたって日本的な価値観を重視しています。従業員を価値創造の重要なプレイヤーとしてみなすこと、社会にとって良いことをしなければ両親、祖父母に顔向けできない、あるいは次世代の人類(子孫)によりよい社会を提供する義務がある、というような感覚です。本書の最後に、著者は仏教徒であることが書かれていましたが、このあたりも著者の主張内容に影響を及ぼしているのかもしれません。

人口が70億人を超えて、地球の資源制約に直面している人類にとっては、GDP(あるいは財務指標のルールで計算される利益)を最大化することが社会の目標であってはなりません。そしてもう1つ重要なのは、資本主義自体が問題なのではなく、資本主義が向かっている方向を変えよということなのです。もう少し言えば、異なる経済社会指標(そこには社会価値や地球環境などへの影響も考慮されている)が近いうちに導入されるであろうこと、それに準拠できない企業は淘汰されるわけですが、実は日本企業にとってはチャンスでもあり、世界に範を示すチャンスではないかとも本書を読んで感じました。

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2023年05月06日

Posted by ブクログ

気候変動による社会生活の影響が顕在化し、持続可能な社会への変革が迫られている今、必読なんじゃないですかね。いち早く変革を行った企業には、プラスのレピュテーションのみならず、実利的な利益も伴っているというのは興味深い。100年前だったら、こうはいかなかったかもしれないけど、今なら可能。っていうか、やらないと、世界が持続しないという事なんだと思うけどね。

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2021年12月15日

Posted by ブクログ

■資本主義は効率的な経済を創造し、人類に豊かさをもたらした。
■今、その資本主義の行き過ぎが指摘されている。気候変動も、患者の足元を見て薬の価格をべらぼうに値上げをする輩の存在も、その帰結だ。
■その主因は、ミルトン・フリードマンの「企業の唯一の社会的責任は、その資源を活用して、利益を増やす活動に従事することである」という考え方である。
■本の題名は、資本主義の行き過ぎをどう修正、再構築するか、という意味である。
■内容としては理想的だ。でも、共有価値の創造、目的・存在意義(パーパス)主導型の組織など、今流行のキーワードが出てくる。しかも、その事例も記載している。これに興味のある人は一読の価値があるだろう。
■全般に読みにくいと感じた。最後の最後で、とても読みやすいところがあって星4つ。

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2021年12月23日

Posted by ブクログ

環境保護と経済の(質の)成長による公平な社会の確立、を両立させる思考と方法、課題がさまざまな事例とともに著者の思いも併せて紹介されている。

経済学やスキームが主題のようにも思えるが、一人一人が思考→思想→信念→行動へと移していくと、やがて人々の総意は全体へ伝播していくことを伝えたかったのではないかと、巻末の家族への想いから感じた。

事例と専門用語(ググれば分かる)が多いので、途中少し心が折れそうになりますが、ベットサイドに置いて自分が1日した事などを振り返りながらチマチマ読むスタイルがマッチした本でした。

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2021年11月29日

Posted by ブクログ

株式会社に属する中で、株主利益の最大化を命題とする働き方に違和感を覚え、担当レベルの一社員として何ができるのか勉強したいと手にとった本。日本の大企業はすでに重要性はわかっていつつも実践に落とせてないことが書かれているなあという印象。主張には同意。

目的主導型事業が利益を生み生産性をあげる、企業だけの頑張りでは不足だが民間セクタへの期待値は大きい等の主張がふんだんな事例をもって約300ページ説明されている。
急いで要点だけ把握したい私にとっては、途中で何の話がしたいのかわからないほど事例紹介が多かったので星4だが、経営者にとっては事例から学ぶものが多いと思う。

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2021年11月27日

Posted by ブクログ

地球環境が劇的に変化する現代において資本主義はどうなっていくべきかを論じた本。会社などの組織のみならず一人一人が考えて行動を起こすことが極めて重要であり、単純であり当たり前のことでもあり頭では解っているつもりのことであるが、結局はそこに行き着くのだと感じた。

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2023年06月03日

Posted by ブクログ

翻訳が原因な気がするが、自分には読みにくかったなあ。でも色んな示唆があった。特に、企業の利益にはその企業が与えている環境への負荷/ダメージが含まれていない、といった考えは納得感あった。良い意味でも悪い意味でも、環境への影響を数字にする枠組み作りが今後求められることなんだろうなと思った。

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2022年02月27日

Posted by ブクログ

2021.02.21 この本を読んでいると少しずつ再構築が進んでいるように感じる。確かに紹介されているような注目に値する事例は多数あるのだとは思う。しかしながら、それ以上にひどい実態が生まれており、格差や環境悪化などますます進んでいると感じてしまう。再構築は本当に難しい問題だとつくづく思う。

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2021年02月21日

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