【感想・ネタバレ】男らしさの終焉のレビュー

あらすじ

ターナー賞アーティストであり異性装者(トランスヴェスタイト)としても知られるグレイソン・ペリーが、新しい時代のジェンダーとしなやかな男性のあり方を模索する─!


本書を読みながら、「男らしさ」ってなんなのかと考え、自分の頭の中に浮かんだ言葉でもっともしっくりときたのは「麻痺」だった。そういうことにしておくとか、気付かないふりをするとか、さすがにこれくらいイイだろとか、真剣に考えないように頭を麻痺させることで「力」を顕示する。(『ハーバーズ バザー』2020年3月号より)
――武田砂鉄(ライター)


痛快、辛辣、そして真摯。「旧来型の男らしさを尊ぶ男たちは、架空の組織である男性省のトップから舌打ちされるのを恐れている」「男性性とは主に、ペニスをもつ人々にしつけられた感情の構成」という考え方に、なるほどねと膝を打ちました。
――ジェーン・スー(コラムニスト)


グレイソン・ペリーは、12歳の時に自分の男性性に疑問を抱き、やがて女性の服を着ることに魅力を感じるようになりました。暴力的な継父など周囲の男性たちやジェンダーの縛りのせいで苦しんだ経験をもつ彼は、男性の最大の敵は、男性自身だと言います。男性性の被害者は女性だけではありません。男性自身もまたジェンダーを演じることに駆り立てられている犠牲者といえます。

大抵の男性はいい人で道理をわきまえています。しかし、乱暴な人間、レイピスト、犯罪者、殺人者、脱税者、汚職政治家、セックス中毒、ディナーで退屈な話をするのは、なぜ男性ばかりなのでしょうか。

世界は絶えず変化しています。男性にも変化が必要なのです。マッチョで時代遅れの男らしさと距離を置き、それとは別の男らしさを受け入れることで、世界にポジティブな変化をもたらすことができるのです。

本書でペリーは人種、階級、性別、セクシュアリティ、経済学、人類学、社会学、および心理学など、さまざまな分野を横断しながら、冷静な(時には風刺を交えて)分析をしています。そして、本書の最後に、男性向けの未来のマニフェストを提示します。

《男性の権利》
傷ついていい権利
弱くなる権利
間違える権利
直感で動く権利
わからないと言える権利
気まぐれでいい権利
柔軟でいる権利
これらを恥ずかしがらない権利

本書が、社会で当たり前とされている男性像、男らしさの固定観念から自由になり、新しい世界に踏み出す一歩となることを静かに願います。

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Posted by ブクログ

メモを取りラインを引き、3.4回読み返した。女性の書いた、フェミニズムに関する書籍はまあまあ読んできたのだが、男性がジェンダーについて書いたものを本として読むのはこれが初めてだった。とても新しくて、柔軟で、正直な内容で、すごく新鮮な気持ちになれた。
副題をつけるなら、「男性と女性。この支配的二元システムからの解放と新しい権利」とか。

自分は女で、フェミニストを自認している。小さな頃から、ジェンダーバイアスを意識してきた。
この、「意識する」という感覚自体が、男性にはあまり無かったのだという意見にハッとする。
なぜなら、今のこの状況が、昔からの「普通」で、「当たり前」だったから。
「どうして大体の家はお母さんがご飯をつくるのに有名なシェフは男が多いのか」
「なぜ司会者の男性がいてアシスタントは女性なのか」
「なぜ男性が主に働いて女性は子を育てるのか、なぜ離婚したらほとんどお母さんと子が一緒になるのか」などなど、小さい頃お母さんを質問責めにした覚えがある。自分の家庭が一般的なものではなかったせいもあると思う。父は家事全て出来て、車の免許が無く、母はとても強くて、言葉使いも乱暴で、怖いもの無し。外食が好きで遊ぶのも好きだった。(それ以前に父は失踪癖があり、酒乱、バイセクシャルだった)
テレビや周りの家庭からのジェンダーに関する「スタンダード」とされる刷り込み。
男女では感情が違う。男の子だから、女の子だから、という、親の言い訳。(これは母になってからさらによく耳にする)
著者は言う、「ジェンダーはパフォーマティブである。」この言い分も新鮮だった。当たり前とされていることに内包されているジェンダーバイアスに、ではなぜ女性の方が意識的になるのか。
それは長い歴史のなかで、対等であるべきと戦ってきたからだと思う。
例えば、政治参加。(日本で女性に参政権が成立して74年) 例えば、雇用機会。(男女雇用機会均等法が成立して34年)
これらを男性は生まれながらにして持っていた、だからそれを差別だとは思わなかった。対等になろうとする健全な考えを拒否するのは、ノスタルジーと共にある刷り込まれた「男性性」であると言う。
Metoo運動、Kutoo運動に激しく反応し攻撃する男性(なかには女性)を思い出す。
男らしく、女らしく、という幻想は、未来に必要だと私は思わない。全ては個であるべきだと思う。

女性が未来を向いているのに対して、進歩的では無い男性は、ポジティブディスクリミネーション(積極的差別是正措置)は男性差別だと訴える。
日本の育休取得率は6%、衆議院議員女性率は10.2%(世界的には24.3%)。映画監督の94%は男性、医師の80%は男性。
この本はイギリスについて書いてある。イギリスでも悩める進歩的男性はたくさんいる、日本はどうだろうか。
男らしさに苦しめられている人は、きっとたくさんいるはず。最近大好きな氷川きよしさんとか、自殺まで考えたらしい。今の生き生きとした姿は、男女問わずジェンダーパフォーマンスに苦しむ人に勇気を与えていると思う。男性の権利を奪っている本当の正体は何だろうかと、考える必要がある。
受刑者の男女比なんかにも言及があったが、ここにその感想を書くと独りよがりになりそうだ。社会全体の問題として、ずっと「意識」すること。
新しいしなやかな男性性の在り方を皆が受け入れたら、ものすごい変革が訪れるのではないのかな。
辛くなる事件(医大の女性減点、センター試験日の痴漢など)がたくさんある。フェミニズム同様、新しい男性性の未来を女性もまた考えることが大切。
非常に刺激になりました!

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2020年02月06日

Posted by ブクログ

男性性、男性学というようなものの存在を教えてくれた本
自分の考え方は『自然に』そうなった、『元々』あるものと思い込んでいたけれど、色々な見聞き体験を通して作られてきたもの
そうであれば『絶対』や『正解』はなくて変わることもあるのかも…と可能性を感じさせられました

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

面白かった。
「真実はあなたを自由にする。でも最初はムカつく。」という冒頭の言葉に笑いつつ頷いてしまった。
現代版の男性ロールモデルがあらゆるレベルで足りていない状況は割と致命的なのかなと思ったので、ここが早く解決したらいいのになと思った。

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「男性性の未来は、男性性の豊かさである」
伝統的な男性性の根深さ、変えていく難しさを痛感した。男性を称する者として、男性性に相対する苦悩にも大いに共感した。ワーキングクラスの青年たちの描写は、問題を表面的な理解に留めるようで気になった。ただこの感想は、自分と異なる境遇への無知、情緒をもって議論することへの男性性的な抵抗が呼び起こしているのかもしれない。

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2022年04月27日

Posted by ブクログ

従来の権力・腕力・暴力的な「男らしさ」を疑い、男性も女性と同じくらい感情豊かで繊細であるし、その豊かな感情や弱さを表現し、他人へ共感することができれば、男性はもっと生きやすくなるのではという提案

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2021年05月03日

Posted by ブクログ

ジェンダーイシューは女性の観点から語られる本が多いけど、そもそもジェンダーの問題は女性だけに留まらず男性側も意識を変えていく必要があって、この本は男性側から男性特有のプライド問題や越権的な社会構造ちゃんと見直して、そろそろ男だからっていう鎧は脱ぎ捨ててみてもいいんじゃないの俺たち、どうよ?社会構造見直さない?的な本です。ジェンダーイシューを男性側から紐解いて読んでみたいと思っていた私にはちょうど求めていた本でした。

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2020年12月23日

Posted by ブクログ

めっちゃくちゃ面白かった!
初めて読んだ男性性の本だけど、作者がコミカルにイラスト付きで書くものだから、ものすごくサクサク読めて、かつ勉強になることも詰め込んでいて勉強になった。

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2020年09月21日

Posted by ブクログ

「男性は様々な特権に恵まれているにも関わらず、そのことに気づいていない」という指摘は鋭く、耳が痛い。
そんな特権構造への告発から始まる本書は、男性優位を批判することに終始するものではない。インプリントされた「男性性」という枷がどういうものであるかを詳らかにし、新たなパラダイムへの転換を促す書だ。

例えば衣服への嗜好。いつの間にか、男性は黒や青、女性はピンク…といった枝分かれがなされる。しかしこれは社会的な価値観が影響しているのであって遺伝子的要因ではない、と喝破する。

マチズモとは相容れない私としては、この本に書かれていることには大変共感できる。
そして自分の中に内在するマチズモを客観的に捉える機会にもなった。

しかし、意識的にマチズモを獲得しマチズモを良しとする人々に、どのようにこの価値観を届けてゆくのがよいのか。(そういった問題意識も、本書を読むことで得られた視座だ)
男性目線で書かれるジェンダー論、一読の価値あり。

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2020年02月24日

Posted by ブクログ

あちこちに皮肉が効いていて本当に面白い。
私の性自認は女だけど、内なる男性性を自覚するいい機会にもなった。女で居ていいんだ、と思えた。
おすすめ。

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2022年12月19日

Posted by ブクログ

男性が「男らしさ」のスーツを脱げば、男性も女性も生きやすくなるのになあ。
有害な「男らしさ」が暴力にもつながってしまう。そして暴力を受けた子は親になった時に、同じことを自分の子どもにしてしまう。
どうすればみんなが生きやすくなるのか、そのヒントが書かれていました。

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2020年12月21日

Posted by ブクログ

・前提『壊れていないなら直すなよ』が男性性視点
・男らしさの4つの基準
『大物感』
『意気地無しではだめ』
『動じない強さ』
『ぶちのめせ』
・幼少期から期待される男性らしさに従う
(男性省、架空の男らしさ司令官)
・アイデンティティ=男らしさ
・男女平等はらしさに依存したアイデンティティの核を攻撃しているように当事者は感じる
・男女でソフト面に違いがあるように教育される構造

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2020年10月04日

Posted by ブクログ

メンズリブの有名な本。
翻訳本特有の日本語なのに意味が分かりにくい(英文の構造を受け継いでいるため)のと、イギリス人が共有している文化的背景について知らないと感覚的に分かりにくいことが多く初心者向けではないと思った。
メンズリブ初心者はフェミニズムの本や他の日本人が書いたメンズリブ本を先に読んだほうがいいと思う。
マチズモが社会の発展の足枷であることは日本のみならずどこの国も抱える問題であるということが認識できる。

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2020年09月26日

Posted by ブクログ

フェミニズムについての本を読んだ事でまったく認識していないうちにごくごく普通だと思っていた事が実は女性がガマンしている事。だと知りこれはヤバいと考え、知る為に読むうちに逆に男性性というものも頭にこびりついてた所にこの本をたまたま書店で発見し、買おうかどうしようか迷ってたらジェーン・スーさんのラジオでも話題にあがったので購入した
読んだ感想としては「男らしさ」という鎖が存在してる事をまず認識。そしてそれを外そうとしてみたらなかなか鍵が外れないし一個外しても何重にも鎖が絡まっていて全てから解放されるのには時間がかなりかかりそう。←という事はわかったのでのんびり焦らずに吟味しながら外せる物は外していこうと思う。

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2020年05月28日

Posted by ブクログ

データ的な裏付けがやや薄い部分もあるけれど、著者の主張にはうなずけるところが多かった。

「default man(デフォルト・マン)」という言葉で、社会の中で“当然の立場”として扱われてきた男性像を可視化する視点はとても鋭い。

一方で、その「default man」たちが意識を変えるためのインセンティブが、現状の社会構造にはあまり備わっていない点は大きな課題だと思った。結局、価値観を更新するための仕組みがまだ社会の側に整っていないのだ。

また、トランスヴェスタイトのアーティストである著者がこうした主張を行っても、当の「default man」たちには届きにくいという構造的な矛盾もある。恐らく「またポリコレのアホどもが何か面倒くさいこと言ってんな」程度にしか思われないだろう。

全体として、「バービー」や「アドレセンス」といった近年の映像作品にも通じるテーマを扱っていて、既存のジェンダー構造や無意識の特権を問い直す視点は刺激的。ただ、問題提起としては鋭いものの、現実をどう動かしていくかという点ではまだ模索段階にある印象だった。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

イギリス、そして男らしさ(ジェンダー)と言われると個人的に頭によぎる作品は「アドレセンス」と「ジェイミー」。この作品が生まれたイギリスの作家が書いた本と思うと、作品の土壌が少し見えてくるような気がする。(もちろん男性の男らしさというのはイギリスだけの話ではないのだけど)
「私が心配しているのは、苦しみと疎外感を抱えた若者たちがこういう書き込みを読んで(セックスが通貨であるような書き込み)、怒りを募らせ、暴力的な行動につなげやしないかということだ。」
アドレセンスはまさに著者のこの発言が現実になったような話だ。この本が書かれたのは2019年、そしてアドレセンスが作られたのがつい最近と思うと、この懸念はますます強まる一方というかすでに現実のものになっていると言わざるを得ないかもしれない。

また、先日読んだ「女と男 なぜわかりあえないのか」ではつくづく遺伝子レベルで男女は違うなと思ったが、この本ではそれに反して遺伝子に大きな原因があるという科学的根拠がほとんどないと紹介している。(脳の違いはあるかもしれないが、躾に比べればごく僅かだとしている)
実際はどうなのだろう?今の日本を見ていると「男だから」「女だから」というしつけをしている若い親はあまり見かけない。日本はイギリスのようにならないといいけれど。

女性が権利を訴えた時やたら攻撃してくる男性がいるのも、この本を読んで少し納得した。しかしイギリスより日本はずっといわゆるLGBTQに優しい(というか海外が過激思想に思える)と思ってしまった。

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

英国人、ストレート男性、異性装者、アーティストという肩書の著者による「社会規範としての男らしさは時代遅れだ!」という本

男性性のオルタナティブが求められてるが、近代資本主義こそが今のジェンダーの在り方を規定してきたんだから根深い問題や…

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2024年03月13日

Posted by ブクログ

『バービー』を観た時にも感じたいたたまれなさが再び。人へのマウンティング、マンスプレイニング、酒強いアピール、悪口のチキンレース、恥をかくことへの極度の恐れ、無意識に男らしさに縛られている。

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2023年12月01日

Posted by ブクログ

今まで女らしさを強要されることに腹が立つことがあったけど、男の人も普通に生きてだけで男らしさを押し付けられたりすることがおおいんだなあと思った

子ども時代に親やまわりの大人から「男の子/女の子だからこうしろああしろ」とか言われて、それに何の疑問も持たず生きてたらその子が大人になった時にそれを子どもに押しつけるかもしれないし、そう言われることに疑問を持つ子どもは悩んだり生き辛くなったりするなと感じたし
外見のオスメスは生まれた時から決まってしまうけど、中身・性格はまわりが決めつけるんじゃなくその人がその人らしく生きてほしい
男らしく生きたい人は生きればいいし、バービー人形で遊んでもスポーツが得意じゃなくてもいいやんね

服装に関する話がおもしろかった

絵が可愛い

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2022年04月17日

Posted by ブクログ

フェミニズムの話は読んだことがあったけれど、「男らしさ」についての話は読んだことがなかったので新鮮でした。
小さい頃から周りに吹き込まれたり、メディアの影響もあってか、男の子はこうあるべきとか女の子はこうあるべきとかなんとなくイメージするものはあるけれど、本当のところ、私は「男らしさ」とか「女らしさ」がよくわかっていません。
男だから、女だからというよりも人としてこうありたいな、こうあってほしいな、というのはありますが。
女性は色々変化しているし、せざるおえない状況だったんだろうと思うけど、男性が変わったというのは今ひとつ実感がわかないです。
男とか女とか関係なく人として相手を思いやり、助け合える世界であったらいいなと思います。
こういうテーマは変わるのにすごく時間がかかる気がします。

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2022年02月20日

Posted by ブクログ

ザ・翻訳という感じで少し読みにくかった。
男性が男らしさという呪縛から解放されれば、女性が女らしさを求められる機会も減るだろう。
わたしはフェミニストだけれど、男性に対し権利を主張するというより、みんな自分らしく生けれたらそれが最高だよね、という立場なので、こういう本をみんなもっと読んで!と願うばかり。

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2021年11月23日

Posted by ブクログ

フェミニズムについての本を読もうと思って、表紙が好みという単純な理由で選んだ。
独特の言い回しと皮肉満載で、私にはすっと入ってこなかったけど、男性目線でのフェミニズムについて書いてあって興味深かった。

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2021年05月05日

Posted by ブクログ

アイデンティティとは、現在進行中のパフォーマンスであり、静的なものでない
権力に多様性がない限り、より良い社会はうまれない。
長期的な変化を生む革命は、平時に時間をかけて起こるもの
私たちは無意識がつくった台本の役柄に、個性と奥行きを加えるものを探しながら生きているのだ。
ジェンダーはパフォーマンス
少年はメンターの感性を取り込むからこそ、成長していける
「男らしさ」は社会が作り出した抑圧

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2021年04月13日

Posted by ブクログ

「男性性の主な要素はノスタルジーだと私は考えている。男女問わず、人間が過去を振り返るとき、そこにあるのは性への意識だ。わたしたちはの性衝動は常に何かを追い求めている気がするが、結局過去を追い求めているのだと思う。」(178頁)

「男性の権利。傷ついていい権利。弱くなる権利。間違える権利。直感で動く権利。わからないと言える権利。気まぐれでいい権利。柔軟でいる権利。これらを恥ずかしがらない権利。」(196ー197頁)

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2020年06月02日

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