あらすじ
「若い世代に、先に逝った故人に、今、世界がどうなっているのか、伝えてみよう」
高知から札幌、そして世界へ。
精神科医にして、ノンフィクション作家の野田正彰が振り返る戦後史。
「私と同じように老いて生き残っている方には、近況を伝える語りである。若い世代には、戦後の焼野原に育ち、四国山脈の山行で思索することを憶えた少年が、札幌での学生生活をへて専門家となり、やがて専門家を否定して唯の人になっていくとはどういうことか、ひとつの生の物語を伝えることになろう」(あとがきより)
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Posted by ブクログ
比較文化精神医学を始めとして、気骨のある文章を紡ぎ出している著者の、これまでの生き様を振り返る書。著者が主に文化人類学的手法にて様々な調査を行ってきたこと、ヤスパースの現象学的精神病理学を基本とした社会精神医学的手法で臨床を行ってきたこと、その実践が若き日の長浜日赤での臨床経験に裏打ちされていることが述べられている。当時は革新的であった精神科医療の開放化は、学生時代の学生新聞編集、学生運動、青医連運動から培われていることが赤裸々に述べられている。若い精神科医が読んでも一昔までピンとこないことも多いだろうが、かつての荒くれた時代の当事者の方々がこのような形で文章を残してくれるのは後進のものとしては参考になる。ただ綺麗事だけではない部分もあったのだろうとは思われるが。それ以上にこの文章が連載されている高知新聞の気概にも感嘆を受けた。この連載を読んでいる高知の人の感想を聞いてみたみたい。