あらすじ
徳川政権末期の「徳川近代」という時代の存在は、明治新政権が政治的に江戸時代を全否定することによって抹消されてしまった。本書は、幕末・明治を揺るがした事件を年代順にたどり、勝者である官軍によって歪められた嘘を一つ一つ丁寧に検証していく。
幕臣たちはあの時、何をしていたのか。明治近代という非日本的な時代を清算することにより、江戸以前より脈々と続く、日本の歴史の真実を解き明かす。
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Posted by ブクログ
幕末明治維新の印象がひっくり返った本。
明治新政府が清廉潔白でないことは承知の上だったが、まさかここまでとは。
岩倉具視、勝海舟、大久保利通の印象はそのままだったけど、西郷隆盛の印象は180度変わってしまった。
まさに明治維新というのは、倫理観も品格も持ち合わせていない最下層貧民があらゆる卑劣な手段で政権を奪取したクーデターであった。
篤姫の筋の通し方はあっぱれ。
大義は徳川側にあったと断言できる。
しかし、戦に負けてしまったから今日の歴史観が築かれている。
過激派長州人が中心になって明治政府を築いたから、あのような無謀な戦争に突っ込んでいってしまった。
そして、戦後の現在もその体制は続いてる。
政治の中心にいるのは、常に長州薩摩出身の人ばかりである。
教育で明治以降の歴史をやらないのは、現代日本の権力者にとって都合が悪過ぎるということがよく分かった。
なぜ徳川は滅びてしまったのか本当に惜しい。
慶喜を精神分裂病と考察している箇所は、色んな意味で納得。
Posted by ブクログ
書かれている内容が正しいとかではなく、
昔から幕末の本や番組を目にするたびに「は?えっと?なんで?」と
不思議に感じてた事柄についての考察や裏事情が盛り沢山。
疑問に思ってた事で、例えば、、、
・「天誅」って、ただの殺人、暗殺じゃないの?とか
・「王政復古の大号令」って、ただのクーデターじゃね?とか
・尊皇攘夷のはずが、いつの間にかなんで討幕?とか
・その討幕後の西欧化w いやいや「復古」「攘夷」は何処に?とか
・新政府発足後の大事な時期に主要メンバーの長期外遊ってバカなの?とか
挙げたらきりがない疑問符に対して、わかりやすい答えの一つとして
勝ち組にエリート層ではない「血気盛んなだけが取り柄の20代の若者」が多く、
実は「尊皇攘夷」なんて、ただの口実に過ぎないと考えると合点がいく。
政治も素人が多いので、討幕後の展望とか何も考えてなかったとしたら
そりゃ汚職まみれの腐敗政治も納得だよ。
負けた事実として徳川体制も限界やったのかも知れんけど、
問題は、それが普通に現代でも続いてるってのがなぁ。
Posted by ブクログ
面白かった。明治維新はただの薩長vs幕府の政治闘争であり、革命でもなんでもないと。
さらには洗練されたガバナンスを保っていた江戸から、政治素人が運営する明治政府になり、ボロボロになる。
汚職がはびこり、運営場当たり的。
なんで西南戦争が起きたんだろうとか思っていたが、なるほどつながった。内部がボロボロだったから。
確かに大きな国の単位をマネジメントしたことのない素人が政治に関わることで、国勢が混乱した側面はあるが、一方ドラスティックにプレイヤーを入れ替えたことによるメリットはあったはず。
いつの時代もガラガラポンは重要。
徳川幕府も外交の能力においては薩長を大きく上回ってたと思うが、ガバナンスの観点で言うと、薩長に政治闘争(明治維新)を起こされてる時点でもう賞味期限切れだったんだと思う。
あとは純粋にこれだけ内部がガタガタであったにも関わらず、明治維新が素晴らしかったと印象に残らせた、薩長のPRの俊逸さには素直に感服する。
英雄談を創り出したり、「尊王攘夷」と言うキーワードで大衆を煽動するなど、結構ポイントを押さえたPR戦略をとっている。
「戦争広告代理店」で、日本人はPRがヘタだし戦略がないと言われているが、この時の薩長の立ち回りはPR観点で行くと俊逸以外の何者でもない。