【感想・ネタバレ】統合失調症のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月02日

若くして京大教授になられた著者はバランス感覚の優れた人で、しかも精神医学の医学として、科学として押さえるべきところは押さえる姿勢には常々好感を持っている。本書は一般向きの本であるが、専門官が読むと、一般の人に出来るだけ誤解を内容に説明するには、このように説明すればという発見があるし、一般の人にも読み...続きを読むやすいのではないだろうか。メンタルヘルスではなぜか最も多い疾患でありながら一般書がないなかで、一般への啓もうとしても良書と感じた。

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Posted by ブクログ 2023年08月26日

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村井 俊哉(むらい としや、1966年 - )
日本の精神医学者。京都大学医学部教授。大阪府生まれ。1991年京都大学医学部卒、98年同大学院医学研究科修了、「局在脳損傷にともなう重複記憶錯誤について」で医学博士。マックスプランク認知神経科学研究所、2001年京都大学医学部附属病院助手、2...続きを読む002年京都大学医学研究科精神医学教室講師、05年助教授、07年准教授、09年教授。


これはかなり良い本だった。統合失調症って鬱とか双極性障害よりどういうものかイメージしづらかったけどこれ読んでイメージしやすくなった。客観的で分かりやすく書かれてる。



なお、妄想には、自分は高貴な家系の子孫であるといった血統妄想や、自分は画期的な発明をしたといった誇大妄想がみられることもあります。第3章で述べる「経過」との関係でいうと、急性期には、注察妄想、関係妄想、被害妄想などが中心で、急性期を過ぎた慢性期でも妄想が続く場合には、その内容が被害妄想の ままだったり誇大妄想に移行したり、個人によって様々です。

A子さんの場合、「振り返ると、去年の12月ごろから、クラス の同級生の話し声が自分のことを言っているのではないかとなんとなく気になりだした」と話していました。こうしたことは、 多くの人が時に感じることがあることで(少なくとも私自身は、 うした経験をしたことがあります)、このようなことがあったというだけで統合失調症と診断することはありません。A子さんの 両親は、この時点ではA子さんの異変には気づきませんでした。 この時点で、受診される方もおられますが、後から振り返ってみてそうだったかなと気づかれることの多い、そういう状態です。

しかし、その同じ理由によって実践上頻繁に問題となるのは、 詐病とは逆の場合です。それは、統合失調症を持つ患者さんが、 自分の症状を隠す場合です。第2章で述べたように、統合失調症 の代表的症状である幻覚や妄想には、自分自身でそれが幻覚や妄 想であるとは気づかないという、他の病気の症状では見られることが少ない独特の特徴があります。そのために、実際には「自分の悪口を言う声が一日中聴こえている」ということがあっても、 0患者さんが、医師の前ではそれを口に出さない、ということがあるのです。自分では病気ではないと思っていることがらを病気で あると決めつけられて、薬を飲むことを促され、さらには入院を勧められるのは、とても不愉快なことですから。

それに対して、たとえば統合失調症のリスク因子としての都市居住については、統合失調症の素因を持った人が都市部に移り住 む傾向があるのか、都市部に住むことによって統合失調症になりやすくなるのか、という因果関係の方向についても確実なところはわかっていません。つまり、統合失調症の環境因としてわかっているもののうち、われわれの行動を変える程度のものはただの一つもないということです。

この本では、統合失調症という病気が「普通の病気」であるということを一貫して 強調してきました。特に、慢性の疾患という意味で、気管支喘息や糖尿病のイメージ で説明を行ってきました。それはそうなのですが、その一方で、統合失調症には、 の医学疾患とは異なる特徴もあります。統合失調症の全体像をとらえるには、無理やりに「普通の病気」に落としこむだけでなく、そうした面も知っておくことは必要で しょう。統合失調症の特徴の一つ日が「病識の欠如」です。

高血圧の定義は難しくないのに、どうして妄想の定義は難しいのでしょうか。これ は、症状の性質の違いによるのです。血圧の場合は、物理的な計測が可能です。とこ ろが、妄想の場合は、本人の頭の中の考えを聞きとった言葉から探ったものを妄想と いう抽象概念としてひとくくりにして定義しているのです。抽象概念というのは、 般論として、正確な定義が難しいのです。例えば、「自由」とは何ですか、と言われ て、それを厳密に定義せよと言われても難しいのです。「愛」って何ですかと訳かれ ても難しいですよね。それと同じように、妄想というのも一つの抽象概念なので、だ いたいこのあたりのことかなとは言えるけれども、厳密にどこからどこまでが妄想 で、どこからどこまでが妄想ではないということを定義するのは原理的に困難なので す

この本を書き始めるに際して、一番難しかったのは、読者層としてどういう人を想定するかでした。新書としての出版なので、専門家向けではなく一般読者向けということはもちろん意識しました。しかし、そうは言っても、一般読者の統合失調症についての知識も、様々です。統合失調症についてこれまで考えてきたこともなかった学生が、たとえばインド哲学や流体力学を純粋な好奇心で学び始めるのと同様に、この病気について知りたいということもあるでしょう。一方で、ご自身やご家族がこの病気を持っていて、専門書ではわかりづらい知識をわかりやすく身に着けたいということもあるでしょう。また、統合失調症は、青年期に生じる病気ですから、子育て中の父親、母親の方が、どういう子育てがこの病気の予防によいのか、という関心を持つかもしれません。青年期で引きこもりのお子さんを持つ親御さんは、さらに差し迫った関心からこの本を手に取るかもしれません。精神科医や公認心理師などの対人援助職を目指す方が、専門書の前に手始めに手に取るということもあるでしょう。それだけではありません。統合失調症という病気は、芸術や文化に関心のある人たちからも注日されてきた病気ですので、読者の一部はそういう人たちかもしれません。あるい は、精神科医以外の医療者で、この病気について触りの部分だけでも知っておきたい という方もいるかもしれません。また、この病気は、人権との関係で問題とされてき た病気です。患者の人権擁護、偏見克服などの観点から、この病気について高い関心 を持っている人もいるかもしれません。その中には、現状の医療制度や社会制度、あ るいは精神科医という存在自体に問題点を感じている人もいるでしょう。最後に、こ の病気は、今日大幅な進歩を遂げている脳科学にとって、最後に残された課題の一つ とみなされています。そのため、脳科学に関心のある人がこの本を手に取るかもしれ ません。

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Posted by ブクログ 2020年11月12日

ドーパミン仮説は知っていたが異常セイリエンス仮説は知らなかったので勉強になった。
ヤスパースが精神医学を納めていたことも初めて知った。説明と了解についての解説も分かりやすい。
各事象を平明に説明してくれているし、薬や治療の歴史も辿れるので俯瞰するのに丁度良い。
妄想については深く考えた事は無かったけ...続きを読むど筆者の意見で改めて考えさせられた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月12日

統合失調症について、精神科医の視点から述べている。定義、症状、統合失調症患者のケーススタディ、患者のケア、社会との関わりなど。私の興味は統合失調症の生理学的モデルで、文中で説明のあったドーパミン仮説から発展させた異常サリエンス仮説は、生理学的な考えに心理的なサポートも加えていて、患者の主観をより説明...続きを読むできていて納得した。

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Posted by ブクログ 2022年07月18日

統合失調症に対してのイメージが変わった。
中途半端な知識でイメージを勝手に作り上げないようにまずは知りたい。

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Posted by ブクログ 2021年09月28日

統合失調症について正しい知識を得ることを目的とした本。
ロマンや凶暴性などは無く、一般的な病気であり、偏見を捨てることが大事であると分かった。

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Posted by ブクログ 2021年05月17日

統合失調症を偏見を抜いたフラットな視点でデータを基に優しく教えてくれる本。
著者は統合失調症は風邪やうつ病と同じく、突然に人がかかる病気と大差ないものだと主張する。
身近に統合失調症者のいる人はぜひ。

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Posted by ブクログ 2020年07月23日

わかりやすく、読みやすい良心的な本だった。
病気の症状や治療方針だけでなく、それまでの歴史や社会的背景、『心の病』ゆえの特色や扱いの難しさを赤裸々に語っている。

精神科自体が、統合失調症のために発達した領域だという視点が発見だった。病院があるから治療ができる病だと思ってしまうが、そもそも先に病院が...続きを読むあるのではなくてまず病があってそれに医療というものが『発達』するという順序なのだよなぁと思う。

社会や家庭環境が発病の原因とは認められないけれど、発病後の状態や社会生活には密接に関わる、というのもなるほどと思う。

知人が10年近くこの病と付き合い続けているが、付き合い方の距離感がとてもうまく落ち着いているように見える。ただ、いつまで薬をのみ続けるのだろう、完治とはどこで判断されるのだろう、ということと、社会復帰の程度とストレスの兼ね合いのさじ加減が難しいよなあと感じる。

『妄想』の定義の話は面白かった。そもそも、社会や国、お金というものも概念的な存在に過ぎず、みんながうまく信じ込んでいることで効力があるものだし。でも明らかにそういう妄想とは違う、と言えるけど、でも紙一重なところはある。妄信的な社会に溶け込めず頭がオカシイとされて口を封じられる人だっているのだろう。

そしてそんな風に、ただの医学的な視点からもう一飛びして、文学や哲学の思想からの話も盛り込まれているところがとても好印象で好きだった。いろんな示唆をもらえた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年12月16日

p.109
医師がすべてを決めるのではなく、患者さんにすべてを任せるのでもない

まずまず分かりやすかったです。

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Posted by ブクログ 2020年02月08日

やさしい入門書から1歩踏み込んだ、でも新書なので専門書まではいかないレベルの本。ストレス脆弱性モデル主流の頃に資格を取った身としては異常セイリエンス仮説が興味深かった。
ところどころ出てくる精神医療用語(措置入院や医療保護入院とか)の説明はないので、その辺初学者や患者本人、ご家族にはわかりにくいかも...続きを読む

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