【感想・ネタバレ】美味しい韓国 ほろ酔い紀行のレビュー

あらすじ

韓国ソウル下町在住の紀行作家、鄭銀淑(チョン・ウンスク)による人気の韓国紀行エッセイガイド、文庫シリーズ待望の最新刊。ソウル、釜山、慶州、大邱、束草、江景、堤川ほか、韓国各地の街の食文化や人の魅力にふれながら、旅とグルメの魅力を旅情たっぷりに紹介。飲食店ガイド&巻末付録『私が選んだ韓国の大衆文化遺産100』も収録。

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Posted by ブクログ

年末年始のソウル旅のレポートです。本の紹介は巻末にあります。また、長くなるのでリーフの説明も更にその巻末に入れました。

2023年12月30日(土曜)雪 4日目

部屋にはいくつか不便(風呂の水が部屋に流れる、等々)はあったけど、それは想定内。9時すぎに部屋を出る。雪だった。それも積もりかけている。今日は「曇時々雨」じゃなかったのか!

宿のおばちゃんは今朝もいろいろ心配して一言言う。それが意味わからなくて、今回はハングルで書いてもらった。翻訳すると「宿に帰っていなくても、自分で鍵を開けてください」ということだった。とても心配性。でも、傘を貸してくれた。まるで下宿の大家みたい。

雪だ。確かに毎朝氷点下なのだから、雨が降れば雪になる可能性はあったろう。もしかしたら、世界で1番明日の天気を気にするのは日本人なのだろうか?韓国の人たちは、全く気にしない様に思える。テレビの報道番組は全く気にしない感じだった。日本ならば首都の雪ならばメインニュースになるのに。

昨日一晩かけてつくった予定は、変更しよう。今日はできるだけ歩き回らないようにしよう。何しろ、靴の底がつるつるなのだ。

弘済駅前から映画ロケ地でバスで小さな山まで行く予定は取りやめる。ここでは、ともかく「ユジン商街」というアパートを見たかった。鄭氏の「ほろ酔い紀行」で記されている。長さが220mある70年建築時では、画期的な高層マンションだったらしい。と言っても5階までしかない。何が特徴かというとその長さだ。北朝鮮の南侵にリアリティがあった時代の産物で、これをいざというときの防御拠点にするらしい。ここは朝鮮時代、中国とソウルを結んだ義州大路という街道があった。昔から城壁の西側の出発点だったらしい。この長い建物の1階には壁がない。現在は、道側にすらっと「そんなにみんな食べるの?」と思うくらい果物屋か並んでいるが、この空間に戦車配備を想定していたらしい。いかにも、という感じがする。その目の前には川がある。なかなかよく考えられた防御拠点だと思う。

チェーンの喫茶店でゆったりする。アメリカーノというコーヒーではミルクも出してくれないので、コーヒーラテにする。韓国ではチェーン店以外では、コーヒーは高い。でも、全てL級の量があるのが特徴だ。日記を書きながら、近くに市場以外にオススメの店があるのに気がついた。そういえば、朝食をまだ取っていなかった。それにしても流石、弘済、喫茶店にいるのはお年寄りのおばさんばかりだった。

11時開店と書いていたので行ったならば、紙に11時30分開店と書いて貼っていた。鄭氏が間違ったのではなく、店主の気が変わったのだろう。間に市場とスーパーを見て回る。野菜は決して安くない。むしろ高い。スーパーの値段も決して安くない。むしろ高い。

11時30分前、既にお客が7人座ってスタンバイしている。鄭氏の2019年の本では1杯3500wだったカルククスが今や4500wに変わっていた。それでも食べて見てわかったのであるが、2日前に崇実大学前で食べた7000wのカルククスよりはるかに美味い。店前で準備の時に手打ちしていたうどんの麺は、十分コシがあったし、いりこ出汁のスープは、濃くがあった。キムチは「各自でおとり下さい」とあって、その下の「◯◯、禁止(2000w)」の意味がわからなかった。とりすぎはダメということだろうか。自分でメモして翻訳してみる。「남기시면 残したら」ということでした(^^;)。美味しくいただきました(^^)。ここも、おばさん人口が9割くらいだった。

新村まで行こうとすると、地下鉄では大回りになる。バス停留所にいったん行ったのであるが、停留所で行き先を調べるのはやはり無理だった。やはりみんな◯番バスと決めて待っているのだろう。

地下鉄に乗っている時に念のため調べると、土日は大学博物館はお休みと分かった。正月1日も休みなので、行くとしたら2日しかない。公立博物館で、外してはいけないところ、国立中央博物館に行くことにした。新村に5時前に行く予定なので、あまり時間はない。

「雪は昼過ぎにみぞれに変わるだろう」と予想して二村駅から出ると雪国だった。午後から更に積もり出した。中央博物館前の庭が綺麗に雪化粧している。気が重くなる。私の旅の取り柄は「歩き回る」ことなんだけど、ちょっと歩いただけで、じんわり靴に雪が染みてくる。

常設展示だけではもったいないので特別展示の(内容も確認せずに)チケットを買う。結果的に時間が押してみることかなわなかった。前回は図録だけを買ったので、常設展示を見るのはこれで2回目。今回は思いっきり写真を撮った。300枚近く。しかも全体の1/6に当たる古代展示のみ。何故ならば、遺物の写真と同時に名前と出土地を書いているプレートを写さないといけないし、途中の大きなハングル説明は、後で翻訳して確認しなければいけない(未だ出来てない)。でもさ、途中で物凄く疲れた。2度椅子に座ってうたた寝をしてしまった。思えばそれが悪かった。今回は、初めて常設展示の全貌を見た。流してみるだけなのに、それで3時間かかった。つまりそれだけ規模と遺物の質が遥かに良いということである。ミュージアムショップで、本を買おうかといろいろ迷ったけど、結局買わず。日本語解説リーフのみ持って帰る(※)。

これで気がつくと、新村5時までにあと40分。急げば間に合う、と思ったが、ソウル駅の乗り換えで痛恨の逆方向に行くというミス!そしてそこからの乗り換えで迷ってしまうというミス!!泣く泣く諦めた。行こうとしたのは「カケハシ」という日韓交流喫茶の集いである。いろいろ聞きたいことはあったのだけど、もう諦める。雪といい、物凄く気落ちした。

鍾路三街に戻り、喫茶店で夜の戦術練り直し。それにしても韓国のコーヒーはどうしてこうも量が多いのか!お腹タプタプだよ。

結局喫茶店のそばの全州食堂に。焼き魚メインらしい。当たりだった。焼き魚で12000wは少し高いかと思ったけど、それだけの内容だ。6皿も出るキムチは全部美味しいし、それに味噌チゲと釜だきおこげご飯が付いて、メインの鯖はかなり大きく脂がノリノリで二つに開いて出てきた。美味しい料理にありつけて、気分がかなり回復した。今夜は酒は飲まずに帰る。

夜9時のニュースはソウルの雪がメインだった。実際に降ってからニュースにするのかよ。8割方は、久しぶりに雪が降って嬉しいというような内容。天気予想は、それでも初日の出をいつも気にしている。実際どうなりそうなのかは、見てもよく分からなかった。明日はソウルは雨予想。ホントか?

テレビを見て他に気になったのは、タバコの映像は過去の映画でも全部「ぼかし」が入る。そういえば宿のおばさんもタバコは厳禁と言っていた(もともと吸わないけどね)。まるでタバコは麻薬扱いだ(韓国では麻薬をマヤクと発音する。覚醒剤とは言わない)。麻薬といえば、私が韓国に来た当日に自殺したイ・ソンギュン。麻薬を使ったと女からタレコミがあって、結果命を絶った。テレビは事件として扱い、追悼の雰囲気はない。私がロケ地巡りで行きたいと願っている「マイディアミスター」や昨年ベスト10の中にも入れた「キングメーカー大統領を作った男」に出演している。私は高く評価する俳優だ。疑惑の真実がどうであれ、韓国では疑惑に入った段階で自殺する人があまりにも多い。それしか自分の名誉を守る方法がないという国の空気があるのだとしたらあまりにも悲しい。

真夜中にテレビで邦題「世宗大王 星を追う者たち(2019)」(ハン・ソッキュ、チェ・ミンシク)を観たが、韓国の題名は「천문 하늘에묻는다 天文 天に問う」だった。15世紀にいち早く天文観測機を作ったチャ・ヨンシルの物語である。邦題によって、テーマが歪められた良い例だと思われる。また、君主の韓服は一様に龍の文様がつけられていて、朝鮮では日本では捨てられた天=龍神思想が未だ生きていることに気がついた。

歩数 約16000歩
地下鉄チャージ20000 喫茶店2700 昼食4500 博物館12000 喫茶店4500 夕食12000
計 55700


「美味しい韓国 ほろ酔い紀行」鄭銀淑 双葉文庫

既に電子書籍版で、内容は詳しく紹介している。それを読んで、旅用にこれは買って持って行った。流石に1番これを参照しながら旅歩きをした。かえすがえすも雪の弘済でのケミマウル断念は残念だった。

(※)国立中央博物館リーフ(日本版)
国立中央博物館 発行

後で気がついたが、この日本語版リーフを事前にじっくりと検討していたら、いろんなところを見落とさずに済んだのに‥‥と思った。また、パンフのQRコードでアクセスした「国立博物館」アプリは、物凄い優れものだった。日本語の解説が、5400円もする公式の図録より遺物解説の数が遥かに多い。おそらく、韓国語の解説をそのままAIで翻訳させた成果だと思われるが、迷った末にあのバカデカくて高い図録を買わないで良かった。しかも、中央博物館だけではなくて韓国全土の国立博物館の解説もアプリを使ってできるようになっていて、すこぶる便利!

アプリ解説はコピーできなかったが、アプリからホームページに入ることもできて、そこにある主要遺物解説は、展示よりもアプリよりも更に詳しく解説がされていた。これもAI発達のおかげで、最新研究がすぐにwebに反映されるようになった証と思える。

例えば、
農耕文青銅器
年代初期鉄器
材料金屬 - 銅合金製
寸法幅12.8cm
指定文化財1823
番号新收 1794
青銅器時代(紀元前10世紀~紀元前4世紀)には、はじめて金属の道具が使われた。青銅器は鉱石を溶かし、銅、錫、亜鉛、鉛などを採集して混ぜ、鋳型に入れて作られた。製作過程が複雑であるため、権威の象徴、または祭器として、一部の人だけが所有できた。
この遺物は大田で出土したといわれている。最上部には四角い穴が六つ並んでいるが、すべての穴に磨り減った跡があることから、紐を通して使ったと思われる。一面の右には、裸で頭に長い羽のようなものを挿した状態で畑を耕す男と鍬を振り上げている人が、左には甕に何かを入れている人が刻まれている。もう一方の面の右と左には、それぞれ二又に分かれた木の枝先に鳥が一羽ずつ止まっている姿が刻まれている。裸で畑を耕す男の姿にはその年の豊年を祈る意味があり、木の枝の鳥も集落の安寧、平和、豊年を祈願するソッテ(神竿)信仰を連想させる。したがって、「農耕文青銅器」は農耕と関係のある祭祀の時、木に結んで使われた祭器だと推測される。

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2024年01月07日

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