あらすじ
2030年頃にAIは、人間と同等になったり人間を超えたりはしないものの、人間の知的振る舞いをぎこちなく真似る程度には進歩している可能性があります。人間の知性に近いそのようなAIを手にしたものが、次世代の経済的覇権や政治的覇権を手にするでしょう。
それゆえ、AIの進歩の遅れている日本のような国は没落し、進んでいる中国のような国は飛躍的に経済力や軍事力を伸ばして、覇権国家となるでしょう。AI時代に世界は大きく分岐するのです。
本書は、AIが持つ暴力的なまでの巨大な力の正体と、それが一体どんな便益や害悪をもたらすのかを明らかにします。
AIは爆発的な経済成長をもたらすとともに、多くの雇用を破壊し格差を拡大させるかもしれません。
私達の生活を便利にし豊かにするとともに、私達を怠惰にして堕落させるかもしれません。
犯罪のない安全な社会とともに、人の悪口や不道徳な行い、政府批判を一切許さないような偏狭な監視社会をもたらすかもしれません。
第1章は導入で、第2章以降を読み進めるのに必要な基本的な知識を提供する役割を担っています。
第2章では、AIがどのような技術でどこまで人間の知的振る舞いを真似ることができるのかについて検討します。
第3章では、AIがどのように人々の雇用を奪ったり、格差を拡大させるのかを論じます。
第4章では、さらにそれを経済理論に基づいて議論します。AIによる爆発的な経済成長の始まりを、本書では「テイクオフ」(離陸)と言います。テイクオフの時期には、国によるばらつきが生じます。早めにテイクオフする国々と遅めにテイクオフする国々との間の経済成長に関する開きを「AI時代の大分岐」と呼びます。
第5章と第6章で説明するように、過去に「新石器時代の大分岐」と「工業化時代の大分岐」という二つの同様の開きが生じました。これらの章では歴史的にどのような国や地域が繁栄したかということについても議論します。そのうえで第7章で、「AI時代の大分岐」について論じます。
最後に第8章で、AI時代に人々が豊かになるには、国家が何をなさなければならないのかを検討します。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
AIの登場により、人類は失業するらしい。
労働者は1811年のラッダイト運動の時代から仕事が奪われるとみな心配していましたが、仕事は現在においても無くなってません。しかし、今度はAIにより仕事がなくなる。経営者とエリート労働者(AIに詳しい)のグループとそれ以外の代替え可能な人々に2極分化する。そして貧富の差が拡大して失業の時代が始まる。99%が貧しいグループになるため、モノは売れなくなる。不況は続く。そこでBI(ベーシック・インカム)が必要になる。と言うことらしい。
昔は、イギリスでも児童労働で、一般工場法(1833年)でやっと、9歳未満労働禁止13歳未満上限48h/week、18歳未満の夜業禁止になった。さらに、若年労働者と女性労働者について10時間労働(1847年)成立、フランスでは1848年に1日12時間労働を勝ち取った。国際労働機関(ILO)により1919年に『1日8時間、週48時間」が労働基準として確立された。
それから100年以上たっても8時間より少なくなっていない。私が思うには生産性が上がっているのだから、「6時間労働、週24時間」ぐらいになってもいいと思います。このままだすると、BI(ベーシック・インカム)とヘリコプターマネーが必要になると井上智洋氏は言うわけです。
クエートでは、国民の90%が公務員で労働の2/3が外人労働者によって賄われると言われていますが、日本は石油が取れないので外人労働者なしで、BI(ベーシック・インカム)で暮らすようになるのかもと思いました。
Posted by ブクログ
井上智洋のこれまでの集大成ともいえる一冊。
なのでAIのシンギュラリティやベーシックインカム論について余すところなく語っている。
後半は哲学の話になりやや難しかったが、勉強になった。