あらすじ
遠く離れて暮らす孫娘りんのため、大富豪がお目付け役に送り込んだ青年山吹みはる。「誰もウソをつけないのよ、きみを前にすると」彼が短いあいづちを打つだけで、人々が勝手に記憶の糸を辿り、隠された意外な真相へと導かれる。精緻なロジックで事件が分析、推理されていく究極のアームチェア探偵新登場。
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Posted by ブクログ
山吹みはる、彼を前にすると何故か脈絡もなく話をしたくなってしまう。そしてそれによって過去の事の真相に話した本人自身が気付いてしまうという、一風変わった探偵ミステリー。
勿論、彼自身は自分のそんな不思議な能力に気付いていないし、会話をしている人が自分の過去に思考を走らせているとは思っていないところが面白いです。
そしてそんな展開で果たしてストーリー展開は大丈夫なのかというと、みはるが派遣された原因でもある白鹿毛りんという大財閥の孫娘、彼女が鍵を握っていました。彼女もある“能力”を持っていてそれによってきちんと物語は進行していくのです。
少女視点の“鳩の死骸”の話と白鹿毛りんが高知にとどまっている理由を探っていく話と並行して話は進んでいきます。
登場人物の名前がまた個性的で読むのに難儀しました(苦笑)。
いろいろと普通とは違うなぁと思いながらも、読み終わった時なるほどと思えたのだからミステリーとしてそこそこ楽しめたということです。
Posted by ブクログ
西澤保彦のデビュー二作目の作品。サービス精神旺盛な西澤保彦らしく,いろいろな要素を盛り込んでいるが,やや過剰に盛り込み過ぎており,かえって「完全無欠の名探偵」である山吹みはるの個性が生きていないのが残念
山吹みはるが話を聞くことで,人々が勝手に記憶の糸を辿り,意外な真相に気付く話がいくつか並ぶ。そして,これと並行して,白鹿毛りんの少女時代の思い出の話が挿入される。
さらに,白鹿毛りんが,「愛」と引き換えに能力を手に入れるというSFめいた設定まで加わり,物語全体の構成がややこしくなるが,真相はこれに輪をかけて複雑
睡眠薬を使い,襲われたことを理由として自殺したと思われていた紫苑瑞枝は生きていた。本当に自殺していたのは、藤弥生という女性。朱鷺晃至は、藤弥生の復讐のために殺人をしていた。
しかし,真相として、紫苑瑞枝が黒幕となり、藤弥生をひどい目に遭わせようと陰謀を企てていたことが分かる。また、山吹みはるが飛行機で隣に座った男性の妻も,この陰謀に関わっていた。
意表を突く真相にしたかったという思いは分かるが,過剰なひねりで逆にインパクトが削がれている。デビュー2作目で,経験不足により、やりすぎてしまったように感じた。
白鹿毛りんの少女時代のハトの死体の謎も解明し、この点はすっきりしている。本筋の殺人事件の黒幕でひねり過ぎない方がよかった。
山吹みはるを始めとするキャラクターの魅力はさすが。トータルでは★3で。