あらすじ
遺された「獄中手記」5000枚が明かす驚愕の真実――。想像を絶する犯罪を繰り広げ、多くの犠牲者を生んだオウム真理教。若者たちは、いかにこの教団に魅入られ、なぜ事件に走ってしまったのか。教団で見たものとは。そして獄中の絶望と反省の日々の中で辿り着いた境地とは――。本書は、「修行の天才」「神通並びなき者」と呼ばれ、教団の“諜報省長官”を務めた井上嘉浩の48年の生涯を通して、オウム事件の核心に迫った「究極の人間ドラマ」である。なぜ、井上嘉浩なのか――。井上への取材は、オウム事件当時(1995年)にさかのぼる。『週刊新潮』のデスクだった著者に刑事が語った、「いざというときに、井上は殺人から“逃げている”」という言葉から始まったのだ。高校生の頃から瞑想や信仰に熱心だった井上嘉浩は、ふとしたきっかけでオウムに出会い、巧みに洗脳され、はまり込んでいく。だがやがて、教祖・麻原から死に直面するほどの様々な苛烈な扱いを受け、苦悩と葛藤の果てに、遂に犯罪に手を染める……。逮捕後、両親との交流をきっかけに良心を取り戻した井上は、オウム幹部のなかでは最初期に教団から脱会し、裁判では、教祖や教団と対決する。だがその結果、四面楚歌の境涯に置かれることにもなった。井上嘉浩が遺した手記と、膨大な取材から浮かび上がってくるのは、誰もが闇に落ちかねない恐ろしさである。だからこそ、「極限の状況下で、人間としていかに生きるべきか」という問いが眼前に浮かび上がり、心が揺さぶられる。カルトの悲惨な事件を二度と引き起こさないためにもぜひ手に取りたい、人間の心の深奥に迫る傑作ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
プロジェクトXでオウム真理教と対決した監察官の話を興味深く観ていました。その流れでこの一冊を手に取った。
今更ながら驚くことが多かった。オウム死刑囚と一括りに思い込んでいましたがこんな純粋で心の綺麗な人がいたとは!
この人の詩とか手記には心を揺さぶられるものがあります。
又再審への流れがあったにもかかわらず唐突な死刑執行を指示した上川法務大臣。前夜は懇親会に参加していたそうですが本当に考え抜いて死刑執行書にサインしたのでしょうか?又サリンを撒いた林郁夫は無期懲役なのに井上嘉浩はなぜ死刑なのか?1審は無期懲役なのに2審は死刑で最高裁は控訴棄却は何故なのか?
日本の司法にも疑問を感じた。
Posted by ブクログ
嘉浩さんの幼少期や愛犬の太郎との写真を見る度に悲しい気持ちになりました。読みながら何回も写真のページを開いてしまいました。もし麻原と出会わなければと思うと残念でたまりません。
Posted by ブクログ
オウムが起こした数々の事件は、どんな理由があろうと決して許されるものではない。オウムの幹部であった井上嘉浩の人生が描かれている。真面目で優秀、井上の人柄に惹かれ入信した信者も多数いたらしい。逮捕後は犠牲者たちの無念にせめて報いようと「償い」と「真実の究明」のために捧げたという半生を読むと、「仮に出会う人間が違っていたなら、どれだけ社会に貢献できる大人になっていたか」「どんな人に出遇ったか、人はその出遇いによって一生が決まるといっていいかと思います」という作中の言葉が心に重く残ってやるせない気持ちになった。
Posted by ブクログ
ジャーナリストさんの著書をはじめて読んだ。オウム関連の事件は、私の中でなぜか心から離れない事件。当然 許されるものではないにせよ、井上さんの生き様は 興味深く 誰もが陥る可能性のあるものであったと切に感じた。
Posted by ブクログ
幹部受刑者の手記等を元にした著作物です。一般に報道されていたイメージとは随分異なる人物像で少し驚きました。(真実は現時点では分かりませんが)また事実が明らかになっていない事が多々あることが指摘され、司法当局の在り方にも戸惑いを覚えます。犯罪は許されることではありませんが、文言を正面から見た悔悟の記録として共有されて、繰り返されないための教訓として残っていけば良いと感じました。
Posted by ブクログ
今年いちばん面白かった。
筆者が割と井上嘉浩寄りなところはあるが、それをあらかじめ理解した上で読むと良い。それ以上に、松本智津夫の生い立ちからオウム真理教がどう成り立ち、事件を起こしていったのか詳しく書いてあった。井上嘉浩は16歳でオウムに浸かり、青春を知ることなく26歳で死刑囚となり48歳で死んでいった。もし、あの時オウムに出会わなければもっと社会のため人の為に生きていたはず。
Posted by ブクログ
書店で見た時に仰々しいタイトルと厚みにたじろぐも直感で購入。オウム事件の調書ではなく一人の人間、一つの家族としてオウムにどう向き合って来たかのかが井上死刑囚の手記と家族の話、実際の証拠を基に紡がれていく。ひた向きな家族の想いと、ワンマン組織の極地であるオウムの狂気が描かれている
Posted by ブクログ
大作。読後感は一言では言い表せない。しかしマスコミの世論の煽りやそれに乗っかる法務大臣とか。自分が傍聴で感じた司法の怖さは間違いじゃなかった。
もっと多くの人に読まれていい本。他の死刑囚と同列に扱うネット記事は見たくない。
Posted by ブクログ
井上嘉浩はオウム幹部の中で飛び抜けて若く、有名大学出ではなかったのに、麻原に重用されていった。中学生の時に密教、修行や解脱というものに関心を持ち、阿含宗へ入信して修行をするようになったが、そこで自分の疑問に応えてくれる人や教えとの出会いが無かったことが悔やまれる。ここで良い出会いがあれば、彼はオウムへと進むことはなかっただろう。
また、唯一、無期懲役から死刑に、二審で判断がかわった人で、再審請求中に死刑執行という司法の不条理には驚いた。
門田さんのように取材を丹念にすると信頼できる人は本当に貴重だと思う。500頁超の作品もそれを感じさせなかった。
Posted by ブクログ
・仮屋さん拉致の時の警察がクズ。このこともっと追求したのだろうか?地下鉄サリン防げたんじゃないの?
・再審請求中の人を死刑って。法務大臣全く精査していない。法務大臣と取り巻きがクズ。
マスコミが作り上げた井上さんとこの本に出てくる井上さんは全くの別人。真摯に向かい合って助けてあげたいと思った人たちに感心する。この本もっと皆に知って欲しい。
Posted by ブクログ
オウム死刑囚井上嘉浩氏について。読めばわかるが彼は死刑ではなく無期懲役であるべきだった人。日本の裁判の理不尽さに驚愕する。と同時に、これだけ知的で真面目で純粋だった若者を心酔させ間違った道に導いた麻原彰晃の罪の大きさに今更ながら震撼する。
Posted by ブクログ
前書きにもある通り、門田作品初の加害者サイドのノンフィクション。これを超えるノンフィクションに今後あえないかもと思わせる、井上嘉浩&門田隆将の合作ともいえる魂の書。読めば読むほど落涙を禁じ得ない。井上の悟りの極致ともいえる「自分自身の内側に宿っている仏性こそが究極の真理」の件には魂を揺さぶられるほどの感動を覚えた。一人でも多くの方に読んでほしい作品です。
Posted by ブクログ
2018年に読んだ本で1番印象に残った作品になった。井上嘉浩という人間についてマスコミ報道と違った形で理解出来た。皮肉にもオウム脱会をして後にこの人は悟りを開いたのだとおもう。
そして逮捕後に死刑が確定した後に「支援する会」がオウムとは関係ない人々によって立ち上げられたことがその人間性を物語っている。
Posted by ブクログ
井上嘉浩は他の手記では積極的に犯行を手伝ったと記載されることが多く
これ以外、例えば江川紹子の裁判傍聴記あたりも読んだ方が彼本人がどういう振る舞いをしていたのかについてはニュートラルな視点を持てると思う。
とはいえ一番の弟子がどのようにしてオウムにのめり込み、またその洗脳から正気に戻って自分自身の信仰を取り戻したのかが丁寧に書かれてるのは非常に面白かったし、何より裁判の結果を覆す証拠が出ている再審請求中の死刑執行でこの国の司法制度に疑問を持つきっかけを与えてくれた。世間一般の視点からすると死刑やむなしなのかもしれないが、真相を明らかにしないまま闇に葬られてしまったものがあったことを教えてくれた一冊だった。
Posted by ブクログ
門田隆将さんの著作はいつも唸らされる。
文章がそんな上手いわけではないと言うか、好きなものではないが、朴訥で、取材対象にグリグリ食い込んでいる。物凄く情緒的な一方で、どこかで一歩引いた感じ。
オウム、井上義啓。
天才だな。
素直だな。
いいやつじゃないか。
だからこそ、道を踏み外した。
ぼくだって、昔ムーを愛読していた時期があり、路頭で宗教屋と議論したこともある。
人ごとではない。
驚いたのは、オウムはこんなに急速に変わったのかと。
洗脳の怖さ。心理学のキーワードでもかなり理解できる。
後半、むしろそっちに目を奪われてしまったのが、裁判の過程、検察の無恥と、控訴審以降の余りの酷さ。
死刑執行については、そりゃ確定してるんだから、法律がある以上当然だろうと思ってはいたが、再審手続きが進んでいたことが、あまりに大きく目の前に迫ってきた。
マスコミは、報道しない。追求しない。
いろんなことを考えた。