【感想・ネタバレ】2040年のエネルギー覇権 ガラパゴス化する日本のレビュー

あらすじ

再生可能エネルギーへの大転換は世界の産業、経済、そしてライフスタイルにまで影響を及ぼします。そこでは、新たな市場とステイクホルダー、そして国際的な規範が作られ、従来型の市場とステイクホルダーは衰退し敗者となりかねません。
既に世界ではエネルギー転換に対応するため、従来の原子力・化石燃料を中心とした大規模集中型のエネルギー需給構造から脱却し、分散・高効率型のエネルギー需給構造を構築する動きが加速化しています。一方、日本は未だ従来型の需給構造から抜け出せず世界の動きから大きく外れ、エネルギー小国ならぬエネルギーガラパゴス国に成り果てる危機を迎えています。
本書は、エネルギー転換と呼ばれるかつてない動きと誰が勝者になろうとしているのかを明らかにします。日本がガラパゴス化せず生き残るためには何が必要なのかも提示します。
ロングセラーとなっている、『日本は世界1位の金属資源大国』の著者である平沼氏は、エネルギービジネスのカギを握る自動車産業を熟知しているエネルギー研究者。EVの爆発的普及がもたらすレアアースの圧倒的な不足などこれから20年のエネルギー転換がもたらすあらゆる衝撃を明らかにします。

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Posted by ブクログ

今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。

記録によれば今から2年半ほど前(2021.10)に読み終えた本です、本の内容はレビューを書きながら復習しようと思いますが、表紙に書いてある文言から思うに、携帯電話やワープロでガラパゴス化した歴史を知っている私は、車の世界でも現在上手く行っているハイブリット車がガラパゴス化しないことを祈っています。

原子力を推進してきた日本ですが、東日本大震災等によりエネルギー政策を見直すことになった日本は今後どのように進むのでしょうか、タイトルにあるように2040年のエネルギーはどうなっているのか、注目していきたいです。

以下は気になったポイントです。

・2015年3月に筆者が駐日ドイツ大使館からの誘いで参加した、ドイツ政府主催の国際会議(ベルリンエネルギー転換対話)で聞いた話、将来、我々が使うエネルギーは限界費用ゼロで生み出され、その価格は今後数十年でタダに近いものになるだろう。限界費用とは、ある生産物の生産量を一つ増やしたときにかかる費用の増加分のこと。(p3)今までの産業革命では、石炭(蒸気機関)石油(ガソリンエンジン普及と電気化)であったが、21世紀の現代、気候変動という人類存亡がかかった問題に対処するため、再び資源エネルギーの転換を図ることが必要な時代に突入している(p5)

・EVは今後も普及が拡大する見通しにあり、各国ともその普及を促進していく方針を打ち立てている状況にある。2017年6月には、クリーンエネルギー閣僚会合にて「EV30@30キャンペーン」というイニシアティブが打ち出されている。これは2030年までに全ての自動車(バストラック含む)の割合を参加国全体で30%以上を目指すもの、2017年6月現在、カナダ・中国・フィンランド・フランス・インド・日本・メキシコ・オランダ・ノルウェー・スウェーデンの10カ国が参加している(p28)

・車載蓄電池と燃料電池を併用するハイブリッド車の開発も進んでいる、車載電池に蓄電した電気でモータを駆動させて走るという通常のEVシステムに、小型の燃料電池を発電機として搭載するもの。通常の燃料電池車では燃料電池がEVの蓄電池の役割をするのに対して、このシステムは、EVの蓄電池をサポートする発電機として燃料電池が搭載される。車載電池の蓄電残量が少なくなると、発電機として搭載した燃料電池が発電を行い車載電池に充電を行うシステムで、わざわざ充電スタンドで充電しなくても良い(p31)

・気候変動問題への主な対処策は、1)再生可能エネルギーの普及拡大、2)二酸化炭素回収貯蓄留(CCS)を含めた省エネ・高効率化の促進、3)原発の利用(原発の構成比は現状維持)(p41)

・京都議定書当時は、天候によって発電が左右される再生可能エネルギーはコントロールが難しく、電力系統に統合するのは困難であるとされてきたが、近年の技術開発(アナログメータに代わり、導入が進むスマートメータ)は、そのコントロールを可能にしつつある。電力供給がわである電力会社と電力需要側を双方向通信で結び、需要側の電力消費量の測定や電力供給量の制御を可能にした(p46)

・限界費用のかからない太陽光、風力などの再生可能エネルギー発電で可能な限り需要を満たし、それでも追いつかない場合に、原子力→石炭火力→天然ガス→石油火力という順番で供給を行う、これがメリットオーダー(限界費用の安い順)の考え方である(p49)

・米国を代表する資産家、ロックフェラー家が関連する基金、ロックフェラー・ファミリー・ファンドは、2016年3月23日、米石油メジャーのエクソンモービルの株式を売却すると発表した。まさにエネルギー・ゲームチェンジを物語っている(p65)

・これまで困難とされてきたことが、IoT、ビックデータ、AIを活用することによって実現可能になる第四次産業革命の動きが、エネルギー分野にも広がっている。それは、普及率50%以上という再生可能エネルギーの大幅普及を実現し、エネルギー需給構造を劇的に変える大木は可能性を生み出している(p76)

・再生可能エネルギーの普及拡大には、EVをはじめとする車載用蓄電池を搭載した車が、電力系統に統合されることが重要である。再生可能エネルギーは、最終処分ができない使用済み核燃料を排出しながら作った電気で走行しても意味がない、EVにとって、エミッションフリーでクリーンな電力が必要である(p99)

・自動運転が進展した社会では、自動車を個人が所有するだけでなく、リースやシェアリングという形での利用が一般的になる。自動運転が基本となるため、リースやシェアリングの車の多くがEVとなる。一つのビジネスモデルとして、自動車の販売会社は、自動車を売るビジネスをやめて、携帯電話のように自動車利用プランの契約販売と、自社のEVを自動運転により顧客に配車する自動車プラン契約、配車店になるだろう(p109)

・海洋温度差発電は、海面の暖かい表層水と深海の冷たい海洋深層水の温度差を利用して、沸点の低いアンモニアなどを介して発電を行うもの(p124)この発電方法であれば、太陽光発電のように昼は発電できるが夜はできないという昼夜の変動がなく、また風の状況にも左右されない。季節変動が予測可能で安定しているので、従来の火力発電のようなベース電源として使える、CO2の排出はゼロであり、利用する海水は無尽蔵でタダ(p125)

・再生可能エネルギーの導入が広がれば広がるほど、余剰電力を蓄電・放電するための蓄電池の役割が重要になってくる、この方法として、電力を水素に転換する、P2G(パワー・トゥ・ガス)がある、蓄電池にためた電気は時間と共に消耗するが、水素に転換しておけば、目減りすることはない。水素であれば、水素ガスや液体水素といった形で運ぶことが可能(p130)

・アメリカ州政府の権限は、1971年に成立した合衆国憲法修正10条により、「この憲法が合衆国に委任していない権限、または州に対して禁止していない権限は、各々の州、または国民に留保される」とされ、憲法上に列挙された連邦政府の権限以外は、全て州政府が権限を有する。(p174)2017年6月にトランプ大統領がパリ協定離脱したが、その直後に、パリ協定を域内で遵守することをコミットした州のグループ(米国機構同盟)が結成されている、2018年9月現在、その参加州は、17周あり米国の人口40%以上、GDPでは9兆ドル以上を占める(p176)

・第四次産業革命の三種の神器と言える、ItoT、ビックデータ、AIは、産業経済の構造を革新する要素として世界中で注目されているが、なぜか日本の意識は諸外国と比べて低い。インターネット・オブ・エナジー(IoE)は、天候や気象条件により発電が左右される再生可能エネルギーを、各発電所と各需要者・電気機器をインターネットで接続(IoT)し、その需給データを蓄積することでビックデータ化し、気象データと共に人工知能(AI)に解析させて、再びインターネットを通じて最適な需給指令を再生可能エネルギー以外の大規模集中型発電を含めた、各発電所と各需要者・電気機器に送りコントロールする、革新的なエネギーマネジメント技術である(p191)

2021年10月9日読破
2024年6月24日作成

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2024年06月24日

Posted by ブクログ

・現在のエネルギー事情がよくわかる。
・世界と比較して何故日本が遅れていのか?どこが遅れているのかという点についてわかりやすく説明されている

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2020年03月08日

Posted by ブクログ

現在の再生可能エネルギーの状況を踏まえて、日本が進むべき道を指し示す内容。
特に311以降、大きく変わった原子力の位置づけ、資源の少ない日本であるが、
まだまだできる余地の多いことを実感。
この分野に関して、知らないことも多く大変興味深く読むことができた。
今後のエネルギーについていろいろ考えさせられる1冊。

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2019年12月05日

Posted by ブクログ

やはり日本は遅れているんだなあ、環境負荷の面でまずいのはもちろん、ビジネス的にもまずいんだなあ、という気持ち。

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2019年10月09日

Posted by ブクログ

事実やデータに基づき何故特に欧州で再エネが普及して国内では普及しないのかということが様々な視点から述べられていて勉強になった。地産地消事業に携わっている人が読むとより一層ためになると感じた。
日本では系統の効率的な運用やFIT制度による太陽光への偏重など制度上の問題などで再エネの普及が進んでいないことは改めて理解した。
海外事例で特に参考になったのは、地産地消事業を推進するためには地域の理解と地域の主体的な参加が不可欠という点。地域で生み出されたエネルギーによるメリットは基本的には地域に還元され、地域の雇用創出や活性化へと繋がっている事例が非常に多いことに驚き、日本でも同様の事業を推進していきたいと思った。日本では利益目当ての事業者主体による事業が中心に進められていて地域が置き去りにされていないか危惧している。

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2019年02月26日

Posted by ブクログ

日本が覇権をとるのは難しそうだ。
スペインやドイツの取り組みは興味深いが、この本だけからなぜうまくいっているのかを理解することは難しい。

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2024年02月27日

Posted by ブクログ

・洋上風力は陸よりも風量が安定している

・浮体式洋上風力の技術が高まれば立地問題が解決する

・モビリティとしてのEV自動車は、ワイヤレス給電技術がが発達すれば充電を伴わず動き続けられる可能性がある

・水素は電気を物質化する触媒として運搬に優れる 電線がいらない

・海上バイナリ発電もある。深海と表層の温度差を利用し、アンモニアを気化させてタービンを回す

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2021年09月06日

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