あらすじ
私の子どもは高機能自閉症だった―…。
母乳を飲まない、泣かない、喋らない…そして、娘のほうから私に抱きついてきたこともない。
母親を求めない子どもなんているの…?自分の娘とどう接したらいいのか分からずに苦悩する母親。
片や、自閉症の娘の目から見る世界はどのように映っているのか。
何を考え何を感じているのか、高機能自閉症の彼女自らの言葉で綴った手記を、曽根富美子がコミック化。
困難な人間関係の構築、度重なるパニック症状、学校でのいじめなどの苦難を乗り越え、前を向いて強く生きて行くまでの感動巨編。
感情タグBEST3
前半はドラマチック、後半が残念
今まで自閉症を抱えた本人、それも幼児期の心理が描写された漫画は読んだ事が無かったので、興味深く読めました。ヒロインにとっての「ワタシの世界」は、詩のような絵本のような、独特のリズム感で表現されており、没入感が味わえる点も良かったです。
ただ、後半は駆け足で未消化の印象です。
「自閉症について知りたい」というのではなく、漫画として純粋に物語を楽しみたい人にとってはストレスも溜まるし、盛り上がりに欠けるかもしれません。
あくまで私の感じ方ですが。
まず、ヒロインは長い間イジメに苦しみますが、完全なフィクションであれば、理解者が現れるなど『報われる』エピソードが一つは入ると思います。しかしここではそれが無く、モデルが居るとしたら、そこは実際に基づいているのかなと思います。今よりももっと、自閉症に対する理解が得られない時代だったのでしょう。
そして、序盤でイキイキと描かれていたお母さんや、いい味を出していたお父さんは、その後、何処へ行ってしまったのか???
ラストでは成人し、社会と関わりを持つようになったヒロイン。『親や周囲との関係性がどう変化したか』という点を楽しみにしていたからこそ、イジメエピソードも耐えて読み進められたのに。
そこは描かれないまま、突然終わってしまいます。驚愕。他の方も書かれていたように、打ち切りを疑ってしまいました。
序盤でヒロインや周囲の人々が、コミカルな表現ありでドラマチックに描かれていただけに、後半はつまらなく残念な印象でしたが「読んで損した」とまでは思いません。ヒロインを取り巻く状況が好転して、漫画に敢えて起こす程ではない、穏やかな日常が続いたと信じたいです。