【感想・ネタバレ】歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイドのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

488作品中、私が読んだことがあるのは50数作品でしたが、それで判断するに、彼女が面白いと思った本は私も面白いと思ったものがほとんどなので、多分このガイドは私的にははずれが少ないと思われます。
なので、前のめりにリストに追加。

特に、最近どっぷりハマっている幕末・明治についての作品を紹介した第三部は、私にとっては宝の山。
章のタイトルで紹介すると
『着いてるね、乗ってるね~飛脚と日本鉄道事始め』
『萌え予見~女子がときめく新撰組小説』(なんて秀逸な章タイトル!)
『奥州連合離脱~東北諸藩の戊辰戦争』(とっさに気づかなかったけど、これはイギリスの欧州連合(EU)離脱に引っ掛けていたんですね)
『新徴組!~庄内藩の戊辰戦争』
あたりに読みたい本がどっさりと。

そのほかにも
『それにつけてもおやじはヒール~真田昌幸の「最期」読みくらべ』
「そして輝くウルトラ僧!~直虎だけじゃない尼城主』
『三国な戦士のテーゼ~「三国志」冒頭読み比べ』
『負けるは西だが後で勝つ~関ヶ原で動かなかった者たち』
『世界の尾張とハードボイルド・ワンダーランド~藩邸のテーマパーク』
『四百年と十年前から愛してる~築城に賭けた思い」
『時をかける症状(後編)~SFで歴史を読むということ』
などなど、章タイトルを読んでいるだけでもわくわくしますでしょう?

学校で習う歴史は、一つ一つのできごとの名前と年号。
でも、本当の歴史って、デジタルな点のつながりではなく、アナログな流れなのだと思う。
”歴史は断章ではない。連綿と続いている。だから面白いのだ。”
全く同感。

白虎隊についてすらほとんど知らなかった私。
庄内藩の戊辰戦争なんて、全然知らなかった。
会津と違って全戦全勝だった庄内藩。負けはしなかったけれど、同盟藩がことごとく負けてしまったのだから、これ以上戦っても無意味と戦いから降りたのだ。
それに対して薩摩藩の戦後処理は、領地は安堵、藩主は隠居させられたが弟が家督を継いで家名存続。ほとんど罰せられなかった。
これって、関ヶ原の時の、薩摩藩と同じだ。
西軍で唯一領地を安堵された薩摩藩だからこそ、庄内藩にこのような対応ができたのではないか。
対して、会津に対する長州の手厳しさは、関ヶ原の戦後処理で、吉川広家をだまし討ちにした形で中国地方のほとんどを取り上げたられた恨みは250年たっても消えなかった。
まさに歴史は断章ではない。連綿と続いている。

大いに満足して本を閉じたのだけど、ちょっとだけ。
ちょっとだけ、いい?

せっかく築城で一章設けたのだから、白井喬二『富士に立つ影』は入れて欲しかったなあ。
築城家が主役の話って、なかなかないのだから。
築城にも流派があって、現代のプレゼンよろしく城主の前で討論をして優劣を決めるのが、面白かったなあ。
もちろんそれ以外にも人物設定や、物語の構成なども面白かったけれど。
何しろ高校生の時、誕生日プレゼントとして友達に買ってもらった全7巻のうち、主人公が出てくるのが1巻の最後か2巻の最初か…そのくらい。
死んじゃってからもしばらく話が続く、超大河小説。
今はちくま文庫から全10巻で出ているらしいです。おすすめ。

あと、これは児童小説なんだけど、伊藤遊の『鬼の橋』と『えんの松原』
これは絶対入れて欲しかったなあ。
大人でもなじみのない平安時代を舞台に、平安京という都市が持つ闇と、人の持つ業が、そして『えんの松原』では天皇家の持つ闇というか業というかしがらみまでもが、怖ろしく、恐れ多く、そして切なく迫ってくる、すっごくいい小説なの。

あと個人的に気になっていることがあるのですが、妖怪と畏れられ忌み嫌われていた鳥居耀蔵が、いかにして宮部みゆき『孤宿の人』の加賀様のような人になったのかを書いた小説、誰かご存じないでしょうか?
私の中では加賀様と鳥居耀蔵が全然つながらないのです。
歴史は断章ではない。連綿と続いている…はずだよね。

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2018年02月18日

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