【感想・ネタバレ】パナマ文書の正体のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年09月07日

●まえがき
●世界の主なタックスヘイブンがここだ!
●パナマ文書に記載のあった主な政治家・有名人
●パナマとはどんな国なのか?
◇第1章 パナマ文書の正体
◇第2章 タックスヘイブンで何が行われているのか?
◇第3章 セコム創業者の相続税節税(?)スキーム
◇第4章 誰がタックスヘイブンを作ったの...続きを読むか?
◇第5章 最凶のタックスヘイブン「ケイマン諸島」とは?
◇第6章 これはイギリスの経済テロだ!
◇第7章 そして世界は超格差社会になった
●あとがき

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Posted by ブクログ 2016年07月31日

最近「パナマ文書」という言葉をニュース等で聞くことがありますが、断片的な情報しかなく何のことか分かっていませんでした。ただし、パナマ文書では、多くの人が取り上げられていることは知っていました。

そんな私にとって、この本は「パナマ文書」を暴露した法律事務所、タックスヘイブンはなぜできたのか、そのバッ...続きを読むクには英国がいること、日本人がなぜ他の国と比べて少ない理由等、知らないことが満載でした。凄い世界があるのですね。金持ちがより富むわけが少しわかった様な気がしました。

また、長年疑問をもっていた、世界の基軸通貨がポンドからドルに代わった経緯(p80辺り)を初めてこの本で知ったことは私にとって大きかったです。

以下は気になったポイントです。

・ヴァージン諸島の法人から日本の孫氏のもとに配当がもたらされれば、その時点で孫氏に税金はかかるが、ヴァージン諸島に利益を置きっ放しにしておけば、日本の税金は払わずに済み、そのお金は再投資に使える(p19)

・IMFによれば、南太平洋のタックスヘイブンだけで、18兆ドル(世界総生産の3分の1)が集められている。税公正ネットワークによれば、2010年待つ現在で、2270-3450兆円が保有されているとしている(p21)

・大企業や富裕層の税金がタックスヘイブンに持っていかれるので、先進国では彼らむけの税金を下げざるを得なかった。結果として、財源を賄うのは、「タックスヘイブンを利用できない人々」に対して増税するようになった(p22)

・消費税が増税されて以来、大企業の税金はこの20年間で約3割、高額所得者の税金は4割下げられた。穴埋めとして消費税が導入された(p22)

・パナマ文書にアメリカ人の記載が少なかったのは、タックスヘイブンを使っていないわけではなく、「モサック・フォンセカ」の顧客ではなかったということ(p28)

・アップル社は、2つのアイルランド子会社の間に、オランダの子会社を挟ませている。これにより、アメリカの税務当局の追及を完全にかわすことができる(p41)

・日本の大手商社5社は連結ベースで、2100-4500億円もの当期利益を出しているが、税負担は少ない。単独ベースでは、営業赤字なので。利益を税金の安い海外子会社に移して、本社で利益が出ないようにしている(p43)

・モサック・フォセンカの最大顧客は中国であり、実顧客の3分の1は、中国・香港の居住者であった(p48)

・パナマ文書により北朝鮮がタックスヘイブンをを利用していたことが明らかになった。ヴァージン諸島にペーパーカンパニーをつくり、その会社を通して貿易して、軍事費などの資金を調達していた(p50)

・先進諸国はタックスヘイブンに悩まされているが、タックスヘイブンを実際に運営しているのは先進諸国自身である(p54)

・セコム創業者から親族にセコム株を贈与すると、贈与税が500億円かかるが、タックスヘイブンのペーパーカンパニーを間に挟むと、所得税・住民税のみとなり、250億円以下となる(p58)

・武富士が起こした、追徴課税の処分を不服とした裁判は、国税が負けて、徴収していた税金を返還しただけでなく、税金を預かっていた期間の利子(400億円)までも払うことになった(p64)

・全国の相続資産に対する相続税の割合は2%に過ぎない、これはタックスヘイブンなどを用いているから(p65)

・消費税が逆進性なのは、低収入の人はほとんどを消費に回すので、収入に対する税負担はほぼ8%、年収1億円の人は、収入の大半は、預金・投資に回すので、収入に対する消費税負担率は8%よりはるかに低い(p67)

・タックスヘイブンには、二つの親がある。1)税金の安い地域、2)金融の機密性の高い地域(p70)

・エジプトで経営されている(取締役会を行う)事実があるので、イギリスで課税することはできない、イギリスの海外領は、第二次世界大戦後も、税制はそのままであった。多国籍企業に出ていかれないように(p74)

・1955年ころ、イギリスのミッドランド銀行が、アメリカ・ドルの預金を受け入れた、これは為替管理法に触れるので、本来ならばイギリスの中央銀行であるイングランド銀行が指導すべきであったが、これが新しい金融ビジネスになるかもしれないということで目をつむった(p77)

・1960年代の欧州(西ドイツ、スイス、フランス)は外国人の定期預金の利子支払いを禁止した、イタリア、オランダ、フランス、ノルウェー、スウェーデン、オーストリアは自国の銀行に預金できる額を制限した、しかし、イギリスは正反対の方向に向かった(p78)

・イギリスは、ドル預金に対する利子には、税金をかけないという優遇措置をつくった。これがオフショア取引の始まり。これにより、ユーロダラーという新しい通貨が誕生した。ユーロダラーとは、欧州で主にドルを使って外国人同士が取引すること(p79)

・イングランド銀行が危険なことを容認したのは、イギリスの栄光を取り戻すため。世界中の富(金)を集めて、それを元手に世界で初めて金本位制を導入し、基軸通貨であった。1957年時点でも、ポンドは世界貿易の40%を占めていた(p81)

・ポンドの価値が下がり、基軸通貨としての役割を失えば、シティの影響力も弱まる。それを取り戻すために、イングランド銀行は「ポンドの代わりにドルを取り扱う=ユーロダラー」という賭けに出た。これが、オフショア取引の原型となり、オフショア市場が誕生した(p82)

・リーマンショックの要因の一つとされている、グラス・スティーガル法の改正(1999)だが、ロンドンでオフショア市場が作られた時(1950年頃)に骨抜きにされている。アメリカの銀行は、ロンドンのオフショア市場を使って、投資業務を行うことが可能になったので(p85)

・ユーロダラーが拡大した要因の一つとして、冷戦がある。ソ連は手持ちドル資金をイギリスの銀行に預けた。1997年には国際融資の90%以上がユーロダラー市場を通して行われた(p87)

・イギリスは、海外領にスイスのような秘密銀行をつくり、そこでユーロマネーを運用するスキームを考えた。1)税金を安く、2)会社登記を簡単に、3)金融の秘密を守る、このとき、タックスヘイブンのスキームが出来上がった(p88)

・日本人や日本企業は、タックスヘイブンとして、ケイマン諸島(登録税、関税以外は一切の税金なし)を使うことが多い。2015年時点で、63兆円(国税収入を超える)額である(p92)

・ケイマン諸島をタックスヘイブンにするときに、ポンド圏から離脱させた、ポンドがそこから流出する恐れがあるので。代わりとして、アメリカドルとリンクするようにして、1974年に、1ケイマンドル=1.2ドルとした。このドル固定制度は、ケイマン諸島がタックスヘイブンとして繁栄した要因の一つ、ケイマン諸島でドルが使えるので、イギリスとしてもケイマン諸島が反映して、ポンド流出も止められた(p101)

・ウォール街は、金融取引量自体は世界一、しかしその大半は国内取引。世界経済全体のシェアを見れば、ロンドンのシティの方が、ウォール街を凌駕している。国際的株取引の約半分、国債新規公開株の55%、国際通貨取引の35%は、シティが占めている、外国為替取扱量は、1日あたり2.7兆ドルで世界全体の40%、アメリカは半分以下の1.2兆ドル(p104)

・イギリスが世界金融に影響力を持っている理由は、タックスヘイブンの総元締めだから。イギリスおよび海外領オフショア銀行の預金推定残高は、3.2兆ドルでオフショア市場の55%を占めている(p105)

・スターバックスは、税金が非常に安いオランダに、知的所有権を管理する会社を置き、他の国のスターバックスから高額のロイヤリティを払わせて、税金の安いオランダに収益を集める仕組みを作っていた(p110)

・フェイスブックは、スターバックスと似たようなスキームで、アイルランドに子会社を作って、そこに利益を移転させていた(p112)

・アメリカは、タックスヘイブン規制が難しいと見るや、急速にタックスヘイブン化し始めた。デラウェア州、ネバダ州などでは、銀行秘密法に似た法律が作られている(p124)

・イギリスは、ジャージー島にEUの制約を受けない地域を作った(p124)

2016年7月31日作成

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