【感想・ネタバレ】カニバリズム論のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

以下4点がキッカケで読む事になった『カニバリズム論 』(中野美代子)

❶『フォギーフット2』(紗与)読んでて出てきたワード【カニバリズム(人が人の肉を食べる事)】が気になり、

❷⑴『ロビンソン・クルーソー』(デフォー)で、主人公が無人島生活をしている時に、カニバリズムな野蛮人が描かれていたシーンを、

⑵ 『文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの』(ジャレド・ダイアモンド)でアメリカ南西部・アナサジ遺跡から出土したものから【人肉食】の痕跡があった事を知り、

⑶ 『トマトの歴史』(クラリッサ・ハイマン)で「スペイン人がベラクルスからテノチティトランまでメキシコ内陸に進んでいた時、先住民がトウガラシ、トマト、塩を入れた鍋を手に彼らを食べようとした」という文を読み、

「昔からこの発想はあっただろうし、実際にあったのかもしれない。これまでにどんな事があったんだろう。」と、

過去のカニバリズム事例が気になりました。

※(ちなみ戦争で生き延びるために、自分の腕を切り落として食べる他なかった例は何かで読んだ事はあります)


本書では以下4点からカニバリズムについての考察が行われていました。

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❶出土した原始人の骨の形跡から推測されるカニバリズム

❷海難事故における飢餓原因のカニバリズム

❸史書に記されたカニバリズム

❹物語設定としてのカニバリズム

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カニバリズム原因としては、

①人肉食糧視(人が牛を食べるのと同じという感じだそう)

②飢餓(やむなし)

③宗教儀式(よくわかんない)

というものがあり、

以前私が読んだ戦時中のお話は②にあたります。

これが自分の体ではなく、亡くなった仲間を食した場合、これは罪になるのかならないのかというお話は深かった。

本書曰く、日本の国の刑法第37条には、

「事故又ハ他人ノ生命、身体、自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ其行為ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ之ヲ罰セス」とあるとの事。

「カニバリズムの行為は、ふつうならば、たとえばわが国ならば、刑法第190条死体損壊罪で罰せられる。しかし、危難共同体においてのカニバリズムが「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」と判定されれば、「其行為ヨリ生シタル害」すなわちカニバリズムによる死体の損壊は、「其避ケントシタル害」すなわち生ける者の生命の危難を超えないことは明らかであるから、カニバリズムは犯罪を構成しない。」

と書かれているのを読んだ時は何とも言えなかったなぁ。

まぁ、①に関しちゃ共食いのイメージが強いのですが、知人曰く「カマキリの共食いはコレには当てはまらない。あれは子供を産むための栄養摂取」とのこと。

人と虫の比較って意味あんのかって話だけどさ……女だけど女怖い。

変わってフィクションとしてのカニバリズムとなると描写がエグくて、
 
「豚なんぞ、味からいっても立派さの点でも、よく育った肥えた一歳の赤ん坊にはとても較べものにならない。」っていうセリフを読んだ時にゃ「ヒィッッ」ってなった。

『注文の多い料理店』(宮沢賢治)と『東京喰種』(石田スイ)が浮かんでくる。


…………といろいろ忙しい本でした。

本書初版の単行本刊行が1972年と、文体がちょっと古めな所があって読むのに時間かかりました。

読み終えた後に思うのは、

「複雑」の一言に尽きます。

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2023年06月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

社会学・哲学の本ではなく、文学に属する評論的エッセイ集である。
「カニバリズム」つまり人肉嗜食に惹かれる著者は澁澤龍彦などと通じる傾向が見られるが、澁澤なんかよりもずっと学識豊かで、冷静なまなざしを持っている。
中国の文学と歴史に詳しい著者の記述は、中国について非常に疎い私から見ると魅力的で、なかなか興味深い。
中国人は現実的で、即物的なリアリストだという指摘も面白い。いったん死んだものについてはさほど気にかけない点、日本的文化と逆である。
本書は学術的とまでは言えないが、じゅうぶんな学識をもった文学者の書であるので、面白く読み通すことができた。

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2017年10月24日

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