あらすじ
本書は多年にわたり、ひきこもり問題に取り組んできた著者による文化論的考察の集大成である。真に治療的効果をもたらす倫理と、ひきこもりから脱するための契機を考えるうえで第一歩となる書。文庫化にあたり、この10年の推移をまとめた「補足と解説」を附す。
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Posted by ブクログ
ウイキペディアで斎藤環氏のコメントを目にして氏に興味を覚えたので、手に取った。実際本書を読み進めていくと、その舌鋒の鋭さには舌を巻くという他ない。多少心理学の用語が難解に感じられ、しっかり氏の主張が認識できたか、怪しい面があった。さらには極めて分析的な論調に私の方が心持ちを苦しくしたため、韓非子を読んだ時のように私には受け付けない内容なのかと、怪訝な思いもしていたが、気を取り直して再び読むとスポンジに水がしみ入るように、愉快に読めた。氏の主張は哲学的な見地に立つ時も心理学の観点からも難解になるきらいがあるが、それでも辛抱して読み進めると、至言名言が随所にあり、それは引きこもりに適用可能であることを越えて、一般性を発揮していると言い得る。この著書で私がどれだけ実質的に進歩したかは全然自覚がないが、私の心理の追求という点からも、日本を知るという点からも、様々に有益な本だった。