あらすじ
女装倒錯、その美貌とあいまった孤高のナルシズムに生きる作家志望の青年。そして、殺戮をくりかえしてまでも子供たちを守ろうとする過剰な家族愛に生きる異形の大女。高原の避暑地を舞台に、それぞれの人生が交錯するとき悲劇のドラマがはじまる――。愛と憎しみに囚われた人間の2つのストーリーがモザイク模様のように絡み、展開する衝撃のサイコ・サスペンス。
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Posted by ブクログ
これまで,小池真理子の理想が見えていなかった。
三つ以上の方向があるような気はしていた。
真琴の自己陶酔は,一つだと感じた。自分を美しいと思う。
千鶴の浩二への想いも,一つかもしれない。
「浩二はしばらくの間,じっと千鶴を見つめていた。雨まじりの風が強く吹き,闇の中でベランダに下げた丸い物干しがくるくる回っている。わかった,と彼は真顔で行った。「でも,車は貸さないよ」「何故?」「僕も一緒に行くからさ」また涙があふれそうになった。」
もう一つはみつからない。乃里子の真琴への思いだろうか。美しいものが好き。
推理小説としても,いくつも途中での予想を裏切られたという点ですごいと思った。
今,小池真理子で何を読んだらいいかと聞かれたら,「ナルキッソスの鏡」と答えると思う。標題にある鏡が,鏡子の由来であるという分かり易さもある。