あらすじ
医師不足や医療不信が同時多発的に拡大し、社会問題化した「医療崩壊」は、その後どのような道を辿ったのか。本書では、繰り返される医療事故をはじめ、「医療崩壊」後の日本医療が今なお抱える問題を、独自の職業観や医局運営術も交えながら検討し、米国での無給研究員時代より続く著者自身の実践から捉え直す。新医療事故調査制度や新専門医制度などの相次ぐ制度改革や、アメリカ型医療の流入といった目まぐるしい変化について、日米両国の現場で外科医療に携わった体験を交えて考察した一冊。【目次】はじめに/第一章 米国医療の光と影/第二章 日本の医療はなぜ崩壊したのか/第三章 外科医療はトキメキの宝庫/第四章 意識改革で外科医局再生――トキメキと安らぎのある村社会/第五章 日本医療の未来像/参考資料 「読売新聞」連載コラム
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Posted by ブクログ
過酷な労働条件下にありながら、医師や看護師の使命感をベースとした高い士気が、我が国の医療を長らく支えてきた。が、そのシステムはガラス細工のように脆い。医療事故をセンセーショナルに報道し結果責任を問う医療バッシングは、患者の医療に対する不信感を煽り、権利意識を肥大化させた。その結果、医療者の心の支えだった患者の笑顔や「ありがとう」が病院から消え、それが医療バッシングで委縮していた医療者のモチベーションをさらに下げ、心を折り、脆いガラス細工を壊している。1998年の医師の総数は25万人で、2012年には30万人へと、その数を増やしてきている。にもかかわらず勤務医の数は、特に内科、外科、産婦人科医の勤務医は1998年から15%も減少している。ただでさえ給料が安く労働時間が長い勤務医に追い討ちをかけることになっている。外科医の勤務医のうち年間2000万円以上の給与を受けている医師はわずか1%なのに対し、開業医では約半数が年間2000万円以上の収入を得ている。著者は、医師が使命感を胸にイキイキと働ける環境モデルを提案する。キーワードは普遍のトキメキ。医療再生のかすかだが、薄明かりを感じることができた。