【感想・ネタバレ】ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるかのレビュー

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Posted by ブクログ

 本書は単なるウィトゲンシュタインの入門書ではない。『相対主義の極北』と『時間は実在するか』で確立された入不二哲学の手法を自我論に適用した、オリジナルな哲学書である。
 入不二はウィトゲンシュタイン哲学を「私」の問題に限定し、「独我論」「無主体論」「私的言語論」の三つの側面に切り分ける。そのそれぞれに入不二製の哲学メスが入れられる――「独我論」には「正反対の一致」が、「無主体論」には「ないよりもっとないこと」が、「私的言語論」には「拡張するわれわれ」が――。ウィトゲンシュタイン哲学の入不二的解釈であると同時に、入不二哲学のウィトゲンシュタイン的解釈でもあり、読者は双方の哲学を味読できるというお得な構成になっている。
「世界は私の表象に過ぎず、私が死ねば世界も消える」と主張する独我論。「私は世界の一部に過ぎず、私が死んでも世界は傷つかない」と主張する実在論。それら相反する二つの立場を徹底させると、その極限において両者が重なるというマジックのような展開は、序章でも紹介されている「入不二」哲学の醍醐味である。
 世にウィトゲンシュタインの入門書はいくらでもあるが、入不二自我論の書は今のところこれだけである。読みやすそうな体裁をまとっているが、内容は決して薄くはない。『ウィトゲンシュタイン』というタイトルだけで誤解してほしくない、本格的かつ独創的な入不二哲学論文であることを改めて銘記しておきたい。

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2019年07月09日

Posted by ブクログ

私と世界の深淵をのぞき込む体験をした。言葉に出来ないものを言葉で表す野心作。ウィトゲンシュタインの思考の深まりも追っている。冒頭の維摩詰の導入から引き込まれた。

・限界という概念 P39
 0.限界とはあるものごとが、それでありうるぎりぎりの条件である。
 1.限界とは、部分ではなく、全体に関わる
 2.限界とは、全体の外にある何かではなく、全体を成り立たせている不在というあり方をする。
 3.限界とは、境界線なき全体であり、その全体の中身は別様でありうる。
 4.限界とは一つ限り、一回限りという唯一正を示唆する。
・類比的な以降の観点から見るとき、隣接項を持たない側面としての私と隣接項を持つ側面としての私の葛藤は、単に解消すべき矛盾ではなく、移行に内在する力である。P92

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2016年05月07日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
「すべて」と「無」は一致する。
私は強力で特異だからこそ、無と化していく。
独我論から私的言語論まで、正反対のものが折り重なる不思議な世界に分け入る。

[ 目次 ]
序章 不二の法門に入る―補助線として(この本のテーマ;正反対の一致 ほか)
第1章 独我論―「限界」としての「私」とは何か(『論理哲学論考』―自らを消し去るべき本;いわゆる独我論 ほか)
第2章 無主体論―独我と無我は一致する(いわゆる無主体論;ウィトゲンシュタインの無主体論 ほか)
第3章 私的言語論―「ない」ままで「あり」続ける「私」(私的言語とわれわれの言語;私的言語への接近とその不全 ほか)

[ POP ]


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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年06月07日

Posted by ブクログ

『論考』が「私」「世界」「言語」をどのようなものとしてとらえているか。そこに焦点を絞って説明してくれているのでありがたい。本書を読み進めていくと、著者が引用する『論考』の文が何だか理解できた気がするのがうれしい。特に60頁あたりの、「「言語」は、「世界」や「思考」や「論理」とは違って、その中で「限界」を引くことができる唯一の領域」という指摘は、なるほどと思った。が、本書後半の『論考』以降の議論は難しかった。

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2018年12月27日

Posted by ブクログ

 ウィトゲンシュタインの入門書は書くのが難しいだろう。10人いれば10とおりの入門書ができる気がする。そんな訳でこれも一般的な入門書ではない。僕はそもそも独我論というのがまったくピンとこないので,その路線からのウィトゲンシュタインには興味がない。しかも論理学がからきしダメなのもあって,言語哲学そのものにも全く触手が伸びない。それでもウィトゲンシュタインに魅力を感じるのは,彼の生き方にあるのだろうと思っていて,それはそれで間違いではないのだけれど,この本を読んでウィトゲンシュタインの思想それ自体にも,僕の好きなテイストがあるのだということを思い出した。

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2012年06月19日

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私は世界より大きいか、小さいかという問いに対して独自の論を展開してく。やはり哲学はロジカル×クリエイティブでおもしろい☆

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2010年02月01日

Posted by ブクログ

とても難しい哲学者のひとりであると思う。
概要が記載できない自分がイタイ。
こういう人物がホントに天才なのだろう。

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2011年06月28日

Posted by ブクログ

ウィトゲンシュタインの「私」に関する思想にのみ集中したウィトゲンシュタイン本。論理哲学論考、青色本、哲学探究のそれぞれ一部について、三つの章で書かれています。テーマが絞られていてページ数も少ないのですが、それでも私には難解でした。

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2011年06月12日

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