【感想・ネタバレ】限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

歴史上のあらゆるインフラシステムの3要素は①コミュニケーション、②エネルギー、③輸送マトリックス。

歴史的には以下のように変遷してきた。
 ・第一次産業革命以前 活版印刷+水車+馬車
 ・第一次産業革命 蒸気印刷+石炭+蒸気機関車
 ・第二次産業革命 TV・ラジオ+石油+自動車
 ・第三次産業革命(現在)インターネット+再生エネ+自動運転

第二次産業革命は希少資源がベースであったため、中央集権的社会を構築。

歴史的に見て、人間の意識の変遷は、神話→神学→イデオロギー→心理→生物圏(他者や他の生物と地球を共有)のように変わっていく。

0
2021年05月09日

Posted by ブクログ

モノを1ユニット生み出すのに必要な限界費用が、テクノジーとインターネットの普及で限りなくゼロになり、利益が出なくなっている。これは資本主義の究極の形であるが、その性質ゆえに、自壊していくという矛盾を秘めている。

IoTシステムの要は、コミュニケーションインターネットと輸送インターネットを、緊密に連携した稼働プラットフォームにまとめること。

IoTが、出現しつつある協働型コモンズに命を吹き込んでいる。→シェア文化に始まる「協働主義」が生まれ、新たな経済パラダイムを築きつつある。GDPによる景気動向の評価という、社会の考え方が根本から変わりつつあり、その代替品として「生活の質」という新指標を考え直す必要がある。

資本が企業家の元に集められ、労働者が自らの労働力を原材料に加え付加価値(商品)を大量に生み出し始め、資本主義が始まった。
過去においても、蒸気による鉄道輸送というインフラと、蒸気による大量印刷というコミュニケーション手段が、経済と産業のビジネスモデルを一変させた。
こうしたビジネスモデルは大量生産される財と流通を構成するのに、巨大で複雑なモデルを必要としたため、垂直統合型で中央集権化された少数企業が、各業界を独占した。

古来より考えられてきた労働力(財には自らの労働力を与え付加価値を増すものであり、したがってその所有権は労働した者にある)の価値観は、資本家という存在の出現によって大きく変わることとなる。

今後の生産性の向上に大きく貢献するのが、モノのインターネット(IoT)というインフラである。

肝心な疑問は、あらゆる人間とあらゆるモノがつながったとき、個人のプライバシー権をしっかり守るためにはどんな境界を設ける必要があるか、だ。

半導体の性能は2年ごとに倍になるというムーアの法則は、現在テクノロジー分野だけでなく、エネルギー分野(太陽光発電や風力発電の性能とコスト)にも及んでおり、このまま行けば、2040年にはエネルギーの7割を再生可能エネルギーによって生産することが可能となる。

3Dプリンティング
従来の工場は、素材が除去されるプロセスが多い。(原材料を切り刻み、より分けられるため廃棄が多い。)
3Dプリンティングは、溶融した材料をソフトウェアにより一層ずつ積み重ねるため、効率と生産性で有利。また、少数生産による在庫抱えのコストも少ない。

IOTインフラに接続できる環境であれば、エネルギー、製品、輸送手段等がほぼ限界費用ゼロで販売できる体制になると言えるだろう。グラム・パワーという新興企業が、スマートマイクロ送電網をインドの田舎の村に設置して、グリーン電力を供給している。

大企業による大量生産から大衆一人ひとりによる生産が可能となれば、もはや何もないところから現在文明を築くことができる。とりわけ、発展途上国におけるインフラの整備及び貧困の撲滅にはかなり効果的だ。

ガンディーは、分散・協働型の新型経済を提唱し、中央集権化したトップダウン型経済から、上下の差がないグローバルかつローカルな経済にパラダイムシフトすることこそ、人間の幸福に役立つとした。

【教育】
MOOCというオンライン教育の台頭は、従来の教育観を揺るがしている。今まで知識というのは教員から生徒への一方的なトップダウン型教育によって伝えられたものであり、「なぜ?」よりも「どのように?」といった即物的な知識が重要視された。
この先の時代では、知識は「共有」されるものであり、その時代の教室においては教師は生徒達のアドバイザーであり、生徒たちは学問分野の垣根を取り払い、より統合的な流儀でものごとを考え、他生徒との協働型の創造性を発揮させることが可能となる。互いが互いを教え合う時代の始まりだ。
学習とはけっして孤立した営みではなく、人々のコミュニティで最高の結果を出す協働型の企画なのだ。

スマートメーターの設置とエネルギーインターネットの発達により、消費者自体が生産者となり、エネルギーにおける限界費用をほぼゼロへと近づける。また、使用できる周波数帯域の増加により、国に無料Wi-Fiを整備する計画もある。

あらゆるコモンズがフリーライドのせいで破綻すると運命にあるという主張は、オストロムの研究により、個人は市場で私利だけを求めるのではなく、コミュニティの利益や共有資源の保全を優先するということが判明し、覆った。
コミュニティの生活を管理する方法を最もよく知っているのはコミュニティの成員自身であり、そこにある公共の資源や財やサービスは、コミュニティ全体で管理するのが最善であることが多い。
こうしたコモンズは生物学の分野にも及び、遺伝子情報を共有し、特許権を認めない判例が下された。

インターネットというバーチャルスペースのインフラを、企業による囲い込みから解放しようという動きが、ハッカーを中心に行われている。それは、コモンズを商売に利用しようとする企業と、コモンズを開かれた資源として活用することで、限界費用ほぼゼロを達成し世界を繁栄に導こうとする人間との戦いだ。

市場における財産の交換と深く結びついた資本主義に代わり、「所有からアクセスへ」を掲げるシェアリングサービスが人気を集めている。
限界費用がほぼゼロになることの恩恵によって、協働型コモンズにおける経済活動の占める割合が拡大すれば、旧来の資本主義が支配力を失っていくことは間違いない。

商業はつねに文化の延長として存在してきた。そこにはまず文化による成員の社会的結びつきがあり、それに裏打ちされた社会関係資本がある。決して貨幣と商業が、人間の文化より先にあるわけではない。2008年の世界金融危機において、実体経済に見合わないほど膨れ上がった貨幣の価値が、人々の希望や幸福を破壊しつくすのを見た。

【持続可能性】
富裕層と貧困層の間に存在するエコロジカル・フットプリントの不均衡の問題に取り組む必要がある。
物質的主義が富裕層と貧困層の間で不信感を植え付けるのは、その主義が教官という本質を奪うからだ。人間はもっとも社会性の強い動物であり、社会に根を下ろすことを切望する。

ミレニアル世代は他の世代に比べ、共感に基づく関与の増加、他社への支援、LGBTへの配慮、多数の人々への集合知の信頼性が高く、逆に政府、専門家、物質主義への懐疑性が見られる。
この物質主義から人生の有意義性へのシフトは、2008年を境に起こっており、これは協働型消費や共有型経済の急拡大とぴたりと一致する。

【希少性の経済から持続可能な潤沢さの経済へ】
人類史には、たえず自己の枠を超えて、いっそうの進化を遂げた社会的枠組みの中にアイデンティティを見出そうとした、幸福で調和のとれた時代が含まれている。人類の歩んだ歴史を振り返ると、幸福は物質主義ではなく、共感に満ちたかかわりの中に見出される。

ミレニアル世代には、保守対革新、資本主義対社会主義について論じることはない。政治行動を判断するときには、組織がとる行動が中央集権的・トップダウン的・強権的・専有的という性格か、分散型・協働型・透明性が高く、ピアトゥピアなのか、といったこと。



【感想】
この本を読む前は、世の中に出現し始めているシェア・サブスクリプションに対して、あくまで人々の節約を促す一サービス程度にしか考えてなかった。

この本では、そこから一歩踏み込み、環境を持続可能的に、人々を協働に、世界をより水平かつ透明性の高いものに変えていこうとする人々の取り組みや、今後の展望を描いている。

ここで出てくるのが「限界費用ゼロ」という概念だ。
太陽光などのエコ・エネルギーによりモノを動かすコストが限りなくゼロに近づき、
モノの生産にかかる限界費用も限りなくゼロに近づいていく。
そうした究極の資本主義社会の先に待っているのは「資本主義の終焉」なのだから、なんとも皮肉な話である。

だが、本書は資本主義の終焉に対しても「それでいい」という態度を取っている。
幸福は物質主義ではなく、共感に満ちたかかわりの中に見出されるため、
人間が社会的動物である以上、生きる上で大切なことは物質の多寡よりも「社会との関わり」であるからなのだ。

この本を読んでから改めて自分の生活を振り返ったときに、いかに多くのモノが自分の手の内という「閉じたコミュニティ」の中だけに存在していることを知った。

0
2020年06月07日

Posted by ブクログ

所有しない経済。クラウドから好きなコンテンツを楽しみ、3Dプリンタによるインフラに居住し、シェアリングされた車で移動。ユニバーサルアクセス可能な電力やネットワークを使い、バーチャル空間で人間関係を満足させ、性欲を満たす。

資本主義の跡継ぎとして共同型コモンズで展開されるシェアリングエコノミーがある。そうする事で過剰な生産が抑えられ、地球にも優しい。人間の労働にもゆとりが生まれ、貧富の差も縮小する。

理想は分かるが、これだとグローバル公共経済を実現した共産主義にならねばならず、プラットフォーマや、そのシェアリングインフラを保守、提供する側のモチベーションはどのように保たれるのか。脱成長論は究極的にベーシックインカム民族と、インフラ維持民族に二分される?ような印象だ。インフラ維持勢のみ子作りトークンを配る?面白そうだが(この本には、そんな事書いてない)、結局、経済モデルが示されないと、社会が緩慢にしか動いていかない。現状資本での利益を獲得できるだけ、その転換を引き伸ばそうとするからだ。

確かに、世界のGDPの伸びが鈍り続けている。エコノミストはその原因を高いエネルギーコストや人口動体、労働人口の伸び悩み、消費者と政府の負債、世界の収入のうち富裕層に回る額の増加、出費を嫌う消費者による買い控えといったものを指摘するが、財やサービスを生産する限界費用が様々な部門でゼロに近づくと言う理由も関係している。だが、段階的にだ。車を所有する人がある時からゼロ、とはならないように。

そしていまだに、人口の2割が電力の使用に不安があり、他の2割は電気のない生活を送っている。女性の解放に必要なものは、電力。電力へのユニバーサルアクセスが可能になれば、女性が勉学に勤しみ、家事から解放されることで出生数は下落。これにより、最貧国の人口の急増にも歯止めがかかり、先進国とのアンバランスな、ヤンキー子沢山問題のワールドワイド現象に片がつく。

変化は、徐々に徐々に。しかし、間に合わないなら、一気に価値観を変えるカタストロフィ。このチキンレースのサーキット場が、社会資本のあり方について、という事だと思う。

1
2023年07月29日

Posted by ブクログ

全く図表が出てこないのでなかなか読むのに疲れます。IoTしかり太陽光しかり限界費用ゼロの世界観が詳述されます。他方でネットゼロ排出の世界に向けては水素や二酸化炭素の吸収のような途方も無いコストがかかる分野への研究開発・インフラ投資も必要な訳で分野に応じたメガトレンドの見極めは大事になるでしょう

1
2022年07月18日

Posted by ブクログ

IoTを中心としたインターネットの発展によって、財やサービスを1ユニット当たり生み出す費用がゼロになる。物質を追求する資本主義社会から、他者との親交を追求する協働型コモンズの社会が到来するという、2015年当時では先進的な主張が展開される。
限界費用ゼロになるというのは、ケインズが「100年後に人間は労働から開放される」と主張したものの、人間の飽くなき物質的追求欲を見誤ったように極端だとは思うが、先進国のGDP的成長率が低減していく中で、「本当の幸せとは何か」を考える風潮や世代は増えている。テクノロジーの飛躍的進化を享受した後、人類は何のために何を目指すべきかを考えさせられる良著。事例は冗長に感じた。

0
2024年05月21日

Posted by ブクログ

モノのインターネットと共有型経済の台頭による経済パラダイムの大転換について、3Dプリンター等の事例をもとに変革のメカニズムと未来展望を説明。

メルケル独首相のアドバイザー等を務めるジェレミー・リフキン氏による2015年の書。

0
2022年02月26日

Posted by ブクログ

限界費用ゼロのコモンズ型経済が、教育、環境、エネルギー、格差の問題を解決しうる、という希望にあふれた1冊。実際には、今の資本主義社会の既得権益を受けている「抵抗勢力」に阻まれて実現は容易ではないと思うが、コロナで中央集権的な国家・企業の必要性が問われる今、著者の展望は意外と早く実現するかもとも思う。
 限界費用ゼロ社会により、モノの交換価値ではなく使用価値が重視され、物欲主義が克服されるとき、人の「幸福」の在り方も問われていくだろう・・・ということも考えさせられた。

0
2020年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

5年たって、この本が言ってきた方向にきたものとそうでないものを分けたのが何かのそのそと考えながら読む。まだもじゃもじゃしていて書けない。考える良いきっかけになった。

0
2020年06月21日

Posted by ブクログ

分散型、ネットワーク、ピアトゥピアの関係に基づいた社会の事例を数多く集めた内容です。なんだろう、そんな社会だと多様な人々と関われる機会がそれまでと比べて非常に増える。一瞬ごとの共感を大事にして暮らそう。

0
2020年05月30日

Posted by ブクログ

長かったが、勉強になった。


限界費用とは物やサービスを作る費用がゼロになること。

これによって、資本主義からのパラダイムシフトが発生するかもしれない。

経済は熱力学的の第一第二法則に支配されていることにエコノミストは気づいていない。

■第一部
1400年代ヨーロッパを中心に水車、風車の登場で、封建社会の経済パラダイムシフトが発生。

それと同時期に印刷機が発明され、コミュニケーション革命が起こった。

今日の資本主義は18世紀後期の蒸気の動力が導入されてから。

蒸気という強力な動力を得た資本家は、株式会社を組織(鉄道など)し、限界費用を押し下げていった。
垂直統合型の企業の誕生。

電話と電話の普及てさらに限界費用が下がった。
自動車のフォードも電気の恩恵にあずかっている。
現在、少数の企業が、莫大な経済力をほこっている。

自然の摂理を後ろ盾に経済パラダイムを正当化する傾向がある。むしろそれしかない?

IoTの登場で、垂直統合型の企業ではなく、分散水平型の経済を生み出す。つまり限界費用がほぼゼロの社会を育み、世界観をかえる萌芽期である。

■第二部 限界費用がほぼゼロの社会
IoTは生産性を大幅に高める可能性を秘めているが、プライバシーなどのセキュリティ面ではまだ課題がある。

再生可能エネルギー(太陽、風力、地熱、バイオマスなど)も限界費用ゼロになりつつある。その結果、化石燃料による発電所は採算がとれなくなってきており、駆逐され始めている。

遅くとも2040年よりも前に、再生可能エネルギーによる電力が全エネルギーの八割に達すると予測される。

化石燃料は限界費用ゼロには決して近づかないが、再生可能エネルギーは限界費用がほぼゼロになりつつある。

マイクロインフォファクチャリングとは、3Dプリンタのように、情報による製造のこと。


3Dプリンタは製造業の中央集中型の製造体制を根本的に崩壊させる。物作りを特別な企業のものではなく、個人で、考えられる物は何でも作れる世界が近づいているかもしれない。

ビット(情報)を使ってアトム(原子)を配列するというハッカーのアイデア。

アプロプリエートテクノロジーとは、地元で手に入る資源から作れて、協働型文化でシェアできる道具や機械を生み出すこと。

インドのガンディーは水平型の経済力という考え方を信奉していたが、一方で中央集中化されたものが成功しているのを横目に、ある矛盾に気づけなかった、あるいは気づいてはいたが、迷いがあったか?
資本主義体制を突き詰めて新しいテクノロジーが生まれることによって、ガンディーが思い描いていた水平分散型の経済パラダイムがおこりつつある。

教育においても、学習は個人的な経験、知識も専有するものと考えられていたが、協働の時代においては、学習はクラウドソーシングの過程ととらえられている。

サービスラーニングに参加することによって問題解決技能や認知的な複雑性の理解などの能力が向上した。

スタンフォード大学の教授が人工知能の講座をインターネットで開催したところ16万人の生徒がいた。
大学では年間5万ドルの学費を払っているのに無料で提供された。
moocのキッカケである。

世界で最高の教育が限界費用がほぼゼロになり、オンラインでほぼ無料で配信されるとき、それを単位として認められたとき、大学はどのように考えるか。

製造業もロボットの導入で限界費用がゼロに近づいている。
小売業の実店舗も今後は少なくなっていくだろう。
生産性が上がっても労働者は増えない

第8章まで読み進めているけど、社会主義、共産主義みたいに感じてきたんだけど、、、

(クリーンウェブでの着想、市内の避難所案内をルート案内できないものか?)

アメリカでは、全ての人に無料のWi-Fiをと連邦通信委員会が提言した。これは既存の通信事業者に大打撃を与えそう。

封建制度下のコモンズではなく、ネットワーク化されたコモンズが、IoT社会の統治モデルとなる。

■第三部 協働型コモンズの台頭
コモンズは規約がなければ、荒廃していく可能性が高い。

昨今、遺伝子の特許が出されてきたが、ある営利企業に遺伝子、あるいは生命を生むものに対して独占すべきではない。
これこそコモンズによる統治が必要だと説いた。

コンピュータの性能が上がったことによって、DNAの塩基を解析するコストが急落しており、限界費用がほぼゼロに向かっている。

数年前までは限られたエリート集団にしか許されなかった研究が今や誰でも可能になってきている。

ITと生命科学の一体化。生命情報をどのようにするか最も興味深い情報とビル・ゲイツは述べている。
この考えに近い人々はピアツーピアのコモンズ方式が適していると考えている。
しかし、ビル・ゲイツはソフトウエアをフリーで使用することに窃盗だとも言っている。これに対してGNUやLINUXなどが登場し、フリーソフトやオープンソースソフトウェアが登場した。

一方で、コモンズを囲い込み営利企業が独占する状況も続いていた。
これらのコモンズの再開放を求めてアラブの春を代表とするソーシャルメディアでつながり行動を起こしている。

今後、資本主義体制か協働型体制のどちらが発展していくかは社会インフラにかかっている。

現在のコミュニケーションネットワークはGoogleやFacebookに牛耳られそうになっている。
なぜならユーザーの情報が独占され、囲い込まれてしまうためである。
コミュニケーション媒体の商業的な囲い込みという問題は今後議論されていくだろう。

エネルギーコモンズについても、同様の問題を抱えている。しかしアメリカの1930年代の電力事業にヒントがある。
田園地帯に電力を供給しようと電線の敷設を農村の協同組合で実施し安価にアメリカ全土に拡げた。(結果的にそうなったというのはあるが)今でもこの協同組合による電力供給は続いており、原価で電力を提供している。

次にロジスティクスコモンズに関して、従来の垂直統合型の運送会社だと、社内の最適化は可能だが、グローバルな視点で見ると、積載率は6割というムダな状態であった。
これが倉庫を共有したり、複数のドライバーで積荷を届けるような分散水平型のやり方が出始めている。

■第四部 社会関係資本と共有型経済
カーシェアリングサービスの登場で、自動車が減り、二酸化炭素の排出量も減った。
シェアリングエコノミーは市場機会ではなく、経済パラダイムの変換点か?

ナップスターが登場し、p2pで音楽をシェアリングし音楽業界を一辺させた。

エアビーアンドビーのように個人宅をシェアしたり、庭を農地にシェアするコモンズも生まれてきた。更には、個人情報の最機密である疾病情報のシェアで、希少疾病の患者主導の研究などが始まった。

3Dプリンタで臓器も作成できるようになってきている。しかも限界費用がほぼゼロで。

広告業界においては、人々の受け身の態勢から自ら情報を取得することによって危機的状況になる可能性がある。

2008年のリーマンショックによって、貨幣に対する信用が低くなった。
各地で地域通貨と呼ばれる物が増えてきた、地元で資金を循環させるためのものだ。
分散水平型のインターネットの破壊力も金融の領域には及ばないというのは視野が狭い。

■第五部 潤沢さの経済
潤沢というのは主観がはいる定義である。

2050年には人口が今より35%増加し(25億人)2030年の時点で、今の水準の資源消費は地球2個分が必要。

幸福度はあらゆる研究で、横軸を貧困度に取るとベルカーブを描いて上下する。裕福になっても幸福度は落ちる。物質に所有されるという状態になる。

ミレニアル世代のほうがミラーニューロン(共感ニューロン)が発達している?

お金では幸せは買えない、ベーシックインカムは貧困層をなくすという意味でいい施策なのかも?

富裕層のエコロジカルフットプリントを減らしても、貧困層の出生率は下がらず、資源が不足する。
貧困層の子供はいわば労働の保険だ。
貧困層の出生率を下げるだめには、電気の安定供給が不可欠だというデータがある。
そうすると出生率2.1以内に収まり、世界の総人口は50億人にまで減少する。

これを実現するための不確定要素として、温室効果ガスによる温暖化である。
2100年には4.5℃以上上昇する可能性がある。
現在でもあらゆるところで異常気象が観測されている。
世界中で旱魃が発生しており、農作物の収穫量が減少している。このため、摂取カロリーも減少しており、栄誉不良の子供が増えると予想されている。
異常気象を乗り越えるためにも再生可能エネルギーに移行すべき。

潤沢さの経済への移行に向けた取り組みの障害になり得る不確定要素の2つ目は、サイバーテロだ。
サイバーテロにより、アメリカの大規模な変圧器が破壊されたら、復旧するまでに甚大な被害が発生するだろう。

日本の状況は化石燃料にいまだ頼っており、ドイツに比べて非常に遅れている。再生可能エネルギーの資源はドイツの9倍あるにも関わらず、生み出しているエネルギーは1/9である
日本は大きな岐路に立たされている。旧来の持続不可能な古いコミュニケーションテクノロジーに固執すれば二流の経済になり下がる。

0
2020年02月13日

Posted by ブクログ

原著は2014年刊行ですが、2018年末現在、日々萌芽する限界費用ゼロなシェアリングサービスを予測しています。資本主義の膨張競争の果てに待つのは破滅ではなく、IoTで強化された協働型コモンズでの共生ならば、それは人類にとってとても望ましい事に思えます。
人類が年間に使う470エクサジュールのエネルギーは太陽の88分の放射に等しい、とか明日から使える知識が山盛りです、が、全編文章がちょっとくどい気も。

0
2018年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネット等の台頭により、単位増加に伴う限界費用がゼロに近づき、あらゆるものの価値観が変わろうとしていることを幅広く深く紹介した本。3年前ではありながら名著。

<メモ>
・スマートシティ文脈のIoT。構造的健全性を評価し、修理を判断。自動車や歩行者の最適化を図る。駐車スペースを知らせる。交通情報。保険料率の適正設定。照明の最適調整。ごみ収集ルート最適化。
・IoTは地球の生態系管理の向上のため。急速に自然環境に適用されつつある。
・セキュリテイシステムの高度化。
・第三次産業革命では、IoTにより、生物圏の複雑な構成の中へ人類が自らを再統合し、地球上の生態系を危うくすることなく、劇的に生産性をあげるのを助ける。
・インフラには三つの要素が必要。それぞれが残りの二つと相互作用し、システム全体を稼働させる。コミュニケーション媒体、動力源、輸送の仕組み。コミュニケーションがなければ、経済活動を管理できない。エネルギーがなければ情報を生み出すことも、輸送手段に働力提供もできない。輸送とロジスティックスがないとバリューチェーンに沿って経済活動を進めることはできない。
・コモンズは市場も政府も提供しない様々な財とサービスをもたらしてくれる。コモンズは資本主義市場と代議政体のどちらよりも長い歴史を持つ、世界で最も古い制度化された自主管理活動の場。
・利益率の激減に直面している巨大な資本主義企業は限界費用がゼロに向かう激しい勢いに対して、そう長くは持ちこたえられないだろう。協働型コモンズ、経済が台頭する。

0
2018年08月05日

Posted by ブクログ

なんとなく気になっていた「限界費用ゼロ社会」、詳しく読んで納得。今後の社会の変化の基礎となる、前提条件を学んだ気がする。限界費用ゼロということは希少性を生み出すことができなくなるわけで、購入=所有では利益が出せなくなる。シェアリングエコノミーの勃興はこれがベースになっていると考えると腹落ちする。著者は、エネルギーさえコストゼロに近づくと予想していてその先端がドイツであると評価。日本は建設コスト・維持コスト・管理コストが高い原発にこだわっていて両者の差は広がるだろうと予言している。一方、西洋では当たり前の「共有地の悲劇」が起こらない数少ない地域が日本であるとして期待もしている。

0
2018年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。
ホントにこんな社会がやってくるのかは、今暮らしてる僕らにかかってるんだろうけど、ワクワクした。
きっとこれから混乱するんだろうなぁ。けど、全く新しいルールでできている世界、楽しみです。

0
2017年11月01日

Posted by ブクログ

GNUがある程度成功しているのは、それなりに収入が保証されている研究者が仕事の片手間にやっているからで、利益を求めない世の中への貢献がトレンドになりつつある例として挙げられるのはどうかとも思う。

0
2017年05月06日

Posted by ブクログ

技術の進展が限界費用をほぼゼロにすることにより起こる、変化の経済・社会的側面に迫るもの。
歴史的な流れの中での考察。
潤沢、幸福とは何か。

日本の現状に対する認識興味深い。ザ・ヨーロッパ的思考。

・人間の思考、提案もフリーで集約できることによる新たな開発の方向性
・シェアリングの先の所有権の放棄と物質管理の容易化があるのか
・資金もフリーで集約できることによる社会の多様化があるのか

0
2017年04月23日

Posted by ブクログ

資本主義は素晴らしく世界を進歩発展させたのだが、このままでいいの?という疑問も膨らませている。協働型コモンズが来るのかどうかの予測は別として、そんな未来の方が幸せかもしれない。

0
2017年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シェアリングエコノミーの話をこえた未来予測に非常に感銘を受けた。
これまでの第1次、2次産業革命の社会の変容と合わせての現在起こりつつある第3次産業(社会)革命ととらえるアプローチが斬新かつ面白かった。
これらの革命は決して、産業にとどらず社会自体をかえていく、第3次革命がたどり着くところが、1次革命以前のコモンズ(共有地)と言う。ただし、規模はインターネットを基盤とする世界規模の。
そこには、資本主義の次に来る、協働社会。語られている事象をとらえれば、確かにこのまま資本主義が続くというより協働社会の実現を感じずにはいられない。
その原動力は、物欲より共感を重視するミレニアル世代。
ミレニアル世代は、周りに手に届くところにすでにモノやサービスがあふれそれを所有することに価値を見いだせないというのも納得でした。(決して、欲望がないのではなく、欲望の価値観が違う。)
最後の特別章「岐路にたつ日本」も非常に的を得た提言でした。ドイツに比べやはり危機感の足りない日本。日本がたぶん世界でもっとも技術的には、限界費用ゼロ社会の実現がしやすく、かつ必要性があるにかかわらず、相変わらずの垂直統合的資本主義に縛られている、この本が発行されたのが1年前なので、少しは進展しているように感じますが、たぶんさらなる加速が必要ですね。それが日本の将来の姿であればいいと説に願います。それが来年1年でさらに顕著になればいいですね。そして自分がこの時代の変化にどう適用していけるかを考えていかなければならないと感じます。

0
2016年12月31日

Posted by ブクログ

★資本主義を突き詰めるとシェアリングエコノミーになる。稀少な資源を奪い合う時代から、潤沢な資源を分け合う時代へ。そのための障害は、地球温暖化問題、食糧問題、テロの問題。3つをいっぺんに解決できないだろうか。例えば人工光合成みたいな技術で。ミドリムシもいいかも。

0
2016年12月16日

Posted by ブクログ

資本主義から協働型コモンズに世の中が変化していくこと、またそれによって、テクノロジーによるコミュニケーション、エネルギー、輸送に関する変化、それによりビジネスや人の生活が変わっていくこと、その上でどのように生きていかなければならないのかを少し考えさせられる本。
第一次産業革命から、世界の革命による変化の歴史を知ることができること、今すでに限界費用が限りなくゼロに近づいている教育などの具体的事例なども解説されており、勉強になった。
読んでいてまだ理解が難しい点、読みにくい点も多かった。また改めて読み返したい。

0
2024年02月14日

Posted by ブクログ

旧来の資本型経済は終わりを告げ、新しい共有型経済が台頭しつつあると主張する本。最後の章で日本向けに書かれている章が結構衝撃的。ドイツと日本を比較し、共有型に移りつつあるドイツとだいぶ遅れている日本とを比較し、日本の進むべき道を示している。共有型主義が資本主義の後継なのかどうか。これからの時代が興味深い。

0
2018年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

IoTと3Dプリンターと再生可能エネルギーがシェアエコノミーしいては第3次産業革命を起こすということを書いた本(第4次産業革命とも言われているが、正確には第3次らしい)。内容もよく練れておりそれなりに納得感もあるが、最終的に限界費用が限りなくゼロに近くなる社会が訪れるということが俄かには信じがたい。マイケルサンデル張りのpublic societyが最終的な社会形態ということだが、人間は本当に自らの欲望(利己心)を克服して利他的に行動するようになるのだろうか?結局のところ、自分が最も得をするようい行動するという人間の本来の性向を考えると、なかなか実現しにくい社会だと思う。生産性が低すぎて協力しなくては生きていけなかった中世ならいざ知らず。ただし、このまま欲望のままに資本主義を発展させていくと最終的に社会の成長を地球が賄い切れなくなるというのはあるのだろう。まあ、ローマクラブが何十年か前にも同じことを言っていたが。。。

0
2018年09月17日

Posted by ブクログ

生産や教育の限界費用がゼロに近づき、モノは所有からシェアへ、資本主義の源泉たる利益が得られなくなってきた。雇用も失われる。資本主義はゆるやかに協働型コモンズに変わっていくだろう。

製造業に、人やお金やエネルギーをかけていた時代が終わりつつあるというのは理解できる。次は協働型コモンズとのことだけれど、福祉や医療やサービスというのも含まれるんだろうか?労働者はどこで稼げるんだろうか?

0
2018年04月09日

Posted by ブクログ

ものを作る限界費用がゼロに近づくと資本主義社会が崩壊し、新たな価値観を持つ共有型経済が台頭すると予測している本。

0
2017年11月05日

Posted by ブクログ

2012年頃に書かれた本。
「インターネット広告は、従来の広告より単価が安く、ユーザーはレビューを重視して広告は信用しないので生き残れないだろう」という当時の筆者の予想は今読むと外れています。
この本は、ネクストソサエティのような予言の本ではないけれど、一つ一つの事実を知るにはまとまっていました。

・1995年から2002年にかけて、全体の生産量は3割以上増えたが、製造業の雇用は2200万人分も消失した。
・GDPの上昇と雇用は相関しなくなっている

・トレーラートラックのグローバルな輸送の積載率は1割にも満たない。輸送は効率化の余地が大きい。
・ロジスティクスは分散型インターネットのアーキテクチャを用いて改善すべき。最初から最後まで一つのトラックで運ぶのではなく、輸送拠点を途中にいくつも設けることで輸送を効率化できる。

・生産・ロジスティクス等エネルギー効率の改善、持続可能エネルギーの普及、シェアサービスの普及、で限界費用はゼロに近づき、希少性をもとにした資本主義の次の時代、潤沢さが前提となる時代が訪れるだろう(しかし、食糧問題は未解決)

・20世紀に入って、ヨーロッパやアメリカをはじめとする国々で女性を家事から解放したのは電力だった。地球上の人口を安定させるには、電気へのアクセスが鍵となることが分かり始めている。最貧国において、大家族というのは実質的に保険のようなもので、たとえ子どもの中に若くして命を落とすものがいても、その仕事を引き受けられるほかの担い手を確保できることを意味する。

・ミレニアル世代が家や車を所有したがらず、出世欲も少なく、物質的豊かさよりも人と人との関わりをより重視するのは、世界金融危機の影響が大きい。

0
2017年09月06日

Posted by ブクログ

 うん、2000年ぐらいに言われていたことをまとめた本で、1周廻った感じ。当時IoTはM2Mって言われていたしね。

0
2017年04月09日

Posted by ブクログ

「限界費用」つまり、プラス1単位の生産コストがゼロになったとき、人々は「所有」の概念から解き放たれることになる。そこに出現するのはユートピアか、ディストピアか。
再生可能エネルギーで皆が自活するようになり、3Dプリンターでなんでも手元で作り出せるようになり、すべてがネットワークでつながることで、所有からアクセスへの大転換が起こるとする。それは、資本主義社会の終焉でもある。ロボットが労働を駆逐し、生活に必要なものがなんでもピア・トゥ・ピアで融通されると、労働者は資本家から報酬を得る代わりに、協同的に働き、協同的に消費するようになると説く。
現在、起こりつつある技術の変化を革命的に読み替えるとこうなるというか、行き着く先の究極を予想していくところにおもしろみはある。しかし、突き詰めて考えられてはいるが、論理に飛躍があることは明白であり、読む人によっては1冊丸ごと夢物語的な感想を持つかもしれない。

0
2017年03月11日

Posted by ブクログ

シェアリングエコノミー、IoT、3Dプリンタが経済の形を変える!とコンセプトは意外と目新しさが無いと感じたけれど、それはそういった世界が現実になりつつあるという認識が既に当たり前になっている証拠なんだと、少し落ち着いて振り返れた点は良かった。

0
2017年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

インフラの
コミュニケーション
エネルギー
輸送
の一体的な革新により、価値の軸とビジネスモデルの勝ち筋が大きく変わる

0
2017年01月07日

Posted by ブクログ

情報・エネルギー・ロジスティックスの三分野におけるネットワーク構築論を軸に、現在様々な局面で起こっているシフトチェンジを幅広くカバーした大著。資本主義経済が現在の陣容をもはや保てないことを鋭く指摘した上、ローカルコモンズの水平的連帯による新たな社会の到来を予言している。ユーフォリアの匂いは嗅ぎ取れないではないが、少なくとも完全に閉塞しきった現代金融資本主義の次に来るべき社会についてポジティブに考える材料を豊富に提供してくれている。「利益を出すことが企業の社会貢献」であるとする戦後日本経済を支えてきたクリシェは、ひょっとしたら時代遅れになるのかもと考えさせられた。なお終章の日本への賞賛と警告は必読。政府は官製相場で既存の大企業を甘やかしている場合ではない。

0
2016年12月28日

「ビジネス・経済」ランキング