あらすじ
人の血を啜る怪物の存在が科学的に認められた近未来。人々を《吸血種》から護るために設立された『捜査第九課』の唯一の課員は、美しき《真祖(クドラク)》の少女、櫻夜倫子――吸血種を狩る吸血種だった。 彼女の相棒として第九課に配属された、バカだが熱心な新人・桐崎紅朗の仕事は、倫子に血を吸われることだけ!? それでも二人は少しずつコンビの絆を深め、吸血種感染を広める組織《王国(キングダム)》を追い詰めていく――
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Posted by ブクログ
うわー、なんと言うかすごい物語を読んでしまったなあ。
吸血鬼を題材にした話はあまたあるけれど、こんなに吸血鬼の悲哀を感じる話は初めてだ。
吸血鬼が伝染病の一種である世界で、それゆえに周りから忌避され、同族を葬ることを選択せざるを得なかったヒロイン倫子。
その苦しさが、悲惨さが、哀しさが、なんとも胸に迫って、息が詰まった。
もし、その病気が現実ならば、こんな世界になり得るんだろうなあと思わせるリアルさがあって、それがまたすごい。
そんな苦しい世界の中、唯一の希望は紅朗の存在。
そのバカだけどまっすぐな馬鹿さ加減がとてもいい。
最初、彼が本作の主人公だと思った。
いや、事実、前半のあるところまでは彼が主人公だった。
こんなバカキャラを主人公にするのは作者の物語では初めてで、どうした作者と思ったけど(笑)
もちろん、今までもそう言うキャラはいた。
平坂組の組員とか闘魂烈士団とか(笑)
でも、その愛すべきバカが主役になるのは初めてだ。
ただ、この悲惨な物語の中で、たぶんいつものようなへたれな主人公では、見ていられなかっただろう。
そう言う意味で、彼の存在は、読者の、そして倫子の、いや、もしかしたらこの世界の、唯一の救いだと思う。
うん、すごいな。
そんな本作の個人的ハイライトは、やっぱり紅朗が倫子に自らの血を与えるために口づけした後に言う言葉。
『生きて帰りましょう』
それはきっと、倫子に再び生きる意味を与えた言葉なのだ。
うん、とても面白かった。
心を揺さぶられた。
続編はあるのだろうか?