【感想・ネタバレ】紫式部日記解読 天才作家の心を覗くのレビュー

あらすじ

道長の要請によって書かれたとされる紫式部日記。中宮彰子の出産や、華やかな行事にあふれた宮廷を描写しているようにも思える日記だが、著者はそこにたぐいまれな人間観察の筆致を見る。たとえば皇子誕生の祝いの場で、一見くったくなくたわむれているようであっても心中穏やかでない人たちを描く紫式部の洞察力が見逃すことはなく、馬鹿な男、立派な男をどのようなことで判断しているかも教えてくれる。また、有名な清少納言への批評は、彰子の周囲はこうあってはならぬという道長への密かな具申と解釈すべきと考え、単なる個人的な評価だという考えを退ける。
読み進めるうちに、紫式部は女性たちにどう生きることを望んだのかが私たちにわかってくる。日記文学の解読を通して、現代にも通じる女性の生き方を指南する画期的な書。

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Posted by ブクログ

紫式部が残した日記についての詳細な解説。
目からウロコの発見もあり、大変楽しく読めた。
著者(ご夫婦?)はかなりな研究熱心。深い造詣と膨大な知識の蓄積に驚かされる。
何より好ましいのは、紫式部に対する「情熱」が感じられるところ。紫式部を愛し、その実像に近づこうとする熱っぽさがひしひしと伝わってきた。

ひとつだけ難点をあげるとすれば、自説を主張するあまり、他の説を受け入れようとしない頑なさだ。
ご自分の信じる説以外は完全否定。「こうあらねばならない」感がものすごい。
どうしてなんだろうと思ったが、最終章にある、出版までの経緯を読んで納得がいった。他の説をいれないこの頑固さは、まさに自費出版の典型だ。
もう少し穏やかに、さまざまな説を受けとめられたらいいのにと思う。源氏物語が歪曲した捉え方をされていることも、エロティックな漫画化も、それらが広く人々に受け入れられていることを考えれば、それも源氏物語の一側面といえように。

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2017年04月16日

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