【感想・ネタバレ】公共貨幣―政府債務をゼロにする「現代版シカゴプラン」のレビュー

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Posted by ブクログ

先進国の債務危機の脱出口として公共貨幣を提案。貨幣の根本的意義から公共貨幣システムに移行していくまでのダイナミズムを具体的に展開した壮大な試論。

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2017年12月23日

Posted by ブクログ

第一次、二次世界大恐慌を引き起こした元凶は債務貨幣システム。現在進行中の政府債務危機も債務貨幣システムが引き起こしたもの。債務貨幣システムを除去すれば、不況、失業、企業倒産、所得格差、政府の債務危機等を回避できる。

日銀が公開した株主構成は、政府出資者55%、個人39%、金融機関2.5%、公共団体0.33%、証券会社0.1%、その他2.6%。拒否権を持つ個人の名前はデヴィッドロックフェラーとステファンデロスチャイルド。

日銀が公表している日銀政策委員会4名(総裁、副総裁以外)の元所属は、東京電力、三井住友ファイナンス&リース、モルガンスタンレーMUFG証券、野村證券金融経済研究所。

日銀のビジネスモデルは利息のみ。政府と民間銀行が顧客だが、民間貸出金利利息は国債利息の5%程度なので、ほぼ顧客は政府と言える。政府は貨幣発行権を放棄して、民間である日銀からお金を借り、その利息を国民から税金を徴収して日銀の所有者に支払っている。現行の債務貨幣システムは、日銀の所有者が国民から利息という不労所得を合法的に吸い上げる仕組み。

毎年国家予算の半分を国債で賄い、その利息を税金から支払っているのに、政府も国民もその利息計算の確認ができない。国債保有額から考えると、推測される約半分くらいしか利息を計上していない。日銀には極めて不都合な点が多くある。

預金は法貨ではない。中央銀行通貨に比して、発行体の倒産リスクが存在する為、債務の支払いを受ける際には、銀行預金での受け取りを拒む事ができる。だが、通常は最終的に中央銀行通貨との引き換えが可能であるという安心感を背景に民間銀行預金は通貨として機能している。マネーストックの84.4%(2014年8月現在)は法貨ではなく、通貨として機能しているにすぎない。

研究論文“The network of global corporate control”によると、
146企業(0.024%)が取引全体の40%を支配しており、737社(0.123%)で世界の80%の取引を支配している。上位50社はほぼ全て金融機関(バークレイズ、キャピタルグループ、FMRコーポレーション等)であり、GM、トヨタ、エクソンモービル、ファイザー、モンサント等の有名企業ではない(非金融機関は50位のCHINA PETROCHEMICAL GROUP COのみ)。

2011年、連邦準備制度情報公開法により米国会計検査院が提出した報告書によれば、2007年から2010年までの三年間で、米政府の債務総額以上のお金16兆ドルがFRBから国際金融機関20行に密かに融資されていた。そして、融資先の半分は国外(欧州)の金融機関であった。

世界を支配する銀行家の多くはマルタ騎士団。

債務貨幣・株式所有システムが与える影響
経済、、、バブル、不況、失業、債務危機、所得格差等
社会、、、人種差別、男女差別、宗教対立
環境、、、遺伝子組み換え、農業破壊、環境破壊、放射能汚染
政治、、、戦争、テロ、核開発、TPP、安保法案、在外米軍基地等

過去40年で、世界経済は1年に10回以上の貨幣危機、銀行危機、債務危機に見舞われた。

日本は2014年に消費税が8%に上がった結果、実質GDPが1.9%下がった。税収は7.6兆円増えたが、17兆円弱のGDPを失った。救国のつもりが逆に滅ぼそうとしている。

国内金融資産のうち、自由に国債を購入する余裕のあるお金は80兆円弱。つまり、2年以内に国内の金融資産では政府の債務を賄いきれなくなる。

2000年から2014年までの日本の債務増加率は3.3%、米国は7.7%。

債務貨幣システムの3つの破局シナリオ
金融メルトダウン、、、借入増大→利子率上昇→国債価格暴落→債務超過・銀行倒産→金融メルトダウン
ハイパーインフレ、、、銀行倒産→政府の景気対策・臨時予算→政府支出増大→財政赤字→借入増大→量的緩和→マネタリーベース急増→ハイパーインフレ
デフォルト、、、借入増大→債務残高増大→デフォルト。
借入増大→利子率増大→利息返済増大→デフォルト


債務増大を阻止する為に歳出削減を行うと、逆に税収が減少し、債務増大を招く。そこで増税を行い、債務増大を阻止しようとすると、経済は不況に突入し、税収は減少、さらなる債務増大を招く。

税収危機ループ
財政赤字削減→歳出削減、増税→不況→税収減→財政赤字増大

歳出危機ループ
財政赤字削減→歳出削減、増税→不況→救済・景気刺激→政府支出増大→財政赤字増大


米国貨幣法
1.連邦準備制度を米国財務省に統合し、全ての新貨幣を利付債務ではなく、政府が貨幣として創造し、一般の厚生を促進する為に支出し流通させる事。
2.銀行業や金融サービス産業ではなく、貨幣制度を国有化し、現在民間機関に付与されている貨幣を創造する権限を中止し、穏やかで気品ある方法で部分準備制度を廃止し、かつ過去に法貨となり未だに流通している民間の信用を全て米国政府貨幣と換金する事。
3.新貨幣を社会の成長・向上の為に必要となる教育や健康管理はもとより、21世紀の地球に優しいインフラやエネルギー資源の為に支出し流通させる。

1929年の世界大恐慌は、1932年後半から1933年春が底辺であり、33年の名目GDPは19年から45%減少、株価は80%下落、工業生産は1/3以上低落、1,200万人に達する失業者を生み、失業率は25%に達した。閉鎖された銀行は1万行、33年2月には全銀行が業務停止、社会主義革命の発生すら懸念された。

シカゴ大アーヴィングフィッシャーらの銀行改革のためのシカゴプラン
1.連邦政府は銀行預金を保証し、これ以上の通貨の減少を防止する。
2.この預金保証は、現在の銀行危機の再発を防止する銀行改革の一部とする。
3.長期的な通貨管理の基準を採用する想定で、(例えば15%を超えないような)卸売物価水準の緩やかな上昇をもたらし維持する政策を貨幣当局は公表し、実施する。
上記達成の為の具体的提案
1.連邦政府は連邦準備銀行の所有と経営を直ちに接収し、連邦準備銀行は連邦準備銀行券を法貨として発行、連邦準備制度加盟銀行、非加盟銀行の預金を保証する。
2.長期的な銀行改革として既存の商業銀行の持つ預金機能と貸出機能を二つの異なる機関に完全分割する。1つは預金銀行であり、小切手による振り出し可能な預金並びに要求払預金を受け入れて、100%の準備金を維持し、預金と資金の振替を行い、その手数料収入を収益源泉とする。他は貸付会社として、預金者からの貯蓄預金や株主や社債権者による投資資金を受け入れ、貸出・投資に振り向ける機関とする。
3.金の自由鋳造や輸入の廃止、金輸出の禁止等。

技術は豊かな時代を創り上げたが、唯一銀行システムの構造だけがこの豊かさを十分に享受し、貧困を撲滅する事を妨げている。
政府のみが貨幣を創造し、それを物価の安定に用いる権限を有している。この為には、銀行が貸出によってお金を創り出す事を排除する必要がある。要求払預金に対して政府貨幣のドルで交換できるドルを銀行が保有する事を義務付ける事によってそれは可能となる。

不況と失業ループ
債務返済→貨幣量及び流通速度の収縮→財サービスの収縮→貨幣量及び流通速度の収縮。

信用収縮ループ
債務返済→貨幣量及び流通速度の収縮→物価の下落→債務返済

不況の原因は、要求払い預金の収縮にある。


公共貨幣システムについて
1.公共貨幣の発行権能は国会に属し、その権限を独立の公共貨幣委員会に委譲する。政府が55%所有の日本銀行を100%政府所有の公共貨幣庫とし、新たに設立する公共貨幣省に統合する。公共貨幣省は公共貨幣の製造、発行及び管理、運営の実務を行う。
2.銀行の信用創造を禁止し、要求払預金の公共貨幣庫での預金準備率を100%にする。但し、準備率は日銀に於ける現行の約1%から段階的に引き上げていく。この過程で必要となる資金は、公共貨幣省が無利子、無期限で貸与する。また、銀行保有の国債で充当できるとする。
3.経済成長や社会福祉等に新たに必要な公共貨幣は政府が財政政策を通じて流通に投入し、過剰な公共貨幣は同様に引き上げる。

政策提言
非正規雇用を正規雇用にする
豊かな老後の為に社会福祉を充実する
教育の無料化

グローバリゼーション→民営化→国内寡占→多国籍企業による寡占→国際銀行家支配


ポスト資本主義「むらトピア経済」
1.むらトピア企業に雇用される労働者は、労働を共有する共働者として、雇用時にその会社の生産手段を自動的に保有し、民主的な方法で経営に参加する。共働者は自らの意思に反して解雇されない。
2.共働者が職場を去る場合には、その会社の生産手段は全て自動的に非保有となり、外部からコントロールできなくなる。死亡した場合も同様。
3.共働者の職場は生計を得る場所となり、生産手段から得られる経済利益を共有する。
すなわち、日本の伝統的な家族社会の組織を企業組織に拡張した企業からなる経済システム。

債務貨幣制度を終わらせる貨幣改革の動きは、スイスではMomo貨幣改革イニシアチブ、米国のNEED法案、英国のBank of England bill、豪州のAustralian sovereignty party等、世界中で誕生している。


持続可能な発展とは、将来世代がその必要を満たす事ができるのを犠牲にすることなく、現在世代がその必要を満たす発展である。-Our common future, Oxford Univ.

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2016年11月14日

Posted by ブクログ

要求払い預金については信用創造を認めないというのが第一の眼目だが、それだと経済のダイナミズムが失われるようにも思う。魅力的な構想とは思うが、実際に運用するとどうなるか?

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2017年06月26日

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