あらすじ
歳を取ると話が長くなる――あまり歓迎されない傾向だが、そこには「なるほど」と思える理由がある。本書はそのような、老後に生じる「心境の変化」を論じ、特に一種の成熟の表れである「老年的超越」について詳述する。例えば、社会とのつながりが少なくても寂しくなくなったり、何事もポジティブにとらえる傾向が生まれ、しかも努力や経験を重ねなくても、歳をとれば自然にそのような状態に落ち着くのだという。高齢者心理学の専門家が、1831人の大規模調査(平均70歳以上の幸福感[老年的超越]の調査では日本最大)で見えてきた、高齢者の幸福な境地を語り、「生涯現役」とは異なる価値観を提示する。
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Posted by ブクログ
チェック項目11箇所。日本はこれから、ますます高齢化が進んでいきます、多くの方が、非常に長い高齢期を過ごすことになります、本書により、高齢の方々の日々何を考えいるのかを知っていただき、ご自分が老いたときの生き方を考えていただくきっかけになれば幸いです。認知機能的な側面でいえば、記憶を一つひとつたどっていくことで、正確に話が思い出せるということもありそうです、ですから、「話を短くして下さい」とか「話をまとめて下さい」とお願いしても、できない可能性があります。「こんなこと何で話すんだろう」と思っていても、まわりまわって、最後にそれが主題に結びつくということがけっこうあります、「話が長い」と感じるかもしれませんが、能力に合わせた最適な伝達方法を選んでいる可能性があると理解して、時間の許す限り、長くても話を聞くことが大切ではないでしょうか。若いころは大した努力をしなくても美しさを保てたかもしれませんが、若いころと違って美しさを保つことが難しくなっている以上、研究を重ね、知恵を絞るなど十分に努力をすることが必要になります。どの生き方・気持ちの持ち方がよいというものではなく、どのようであってでも幸福感を得ている方はいるということです。80最くらいまでの高齢者介護と、90歳、100歳の超高齢者介護が同じでいいとは限りません、90歳、100歳の方にとって何が幸せなのか、90歳、100歳の方は、どういうふうにご自分の幸福感を得ているのかをよく理解する必要があります。長寿と一番関係が深いと考えられているのは「誠実性」です、「誠実性」というのは、几帳面で仕事が丁寧である、約束や人の期待を裏切らない、目標達成のために頑張る、仕事を最後までやり遂げる、犯罪に走らない、危険なものを求めない、といった性格傾向です、またこのような性格の人は自分に対する自信を持っていて、有能感も高い人が多いです。ストレスも長寿に影響を及ぼすと考えられます、ストレスへの対処に影響する性格傾向として、「神経症傾向」と「外向性」が挙げられています。病気で入院して死を迎えようとしている親に対しても、子供のほうは最後まで頑張って生きてほしいとか、気持ちを見せてほしいという気になることもあります、そういう気持ちになるのは仕方のないことですが、本当に頑張れる状態なのかどうかを考えないと、双方がつらい思いをすることになるかもしれません。病気のときには「病気を治そうね」という言葉も重要ですが、オプションとして「病気のままでもいいんだよ」とか「病気なんだから、ベッドを汚したっていいんだよ」という言葉も持っておくと、状況を見ながら高齢者ご本人の感情のバランスをとっていけるのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
100歳の境地。「生涯現役」とは異なる価値観、感じ方ってすごいなぁ。
タイトルと内容が乖離しているように思うが、その主張は大変に興味深いものでした。
・高齢者心理学では、高齢になるほど、病気は増えるが、自己評価の健康度は若い人とほとんどかわらない。
・「世代性」の向上は、統合性や利他性の向上とも関係している。
・ハンナらは、エリクソンの八段階のそれぞれの達成度を測定した結果、各段階の達成の度合いには有意な正の相関があることを示した。
・同居している子どもが居る人よりも、別居している子どもがいる人の方が老年的超越が高い。
・老年的超越は「年齢」ほど強い相関を持つ要素はない。
・長寿と一番関係が深いのは「誠実性」。几帳面、仕事が丁寧。約束や人の期待を裏切らない。健康行動にまじめ。運動習慣がある。規則正しい生活。
・高齢者に体調のことを聞かない方がいい。過去のことを聞くのが日本ではよい。
Posted by ブクログ
タイトルの答えを見つけたい。と思って、読み始めた方は、第1章の早い段階で、なんか雰囲気違うぞ。と思うと思う。
私も、そんな一人だったが、楽しく読めた。
この本で、とても参考になったのは、エリクソンの心理社会的発達理論の第9段階があったこと。
そして、トルンスタムが「老年的超越」概念を提唱したことと、「老年的超越」の中身を知ることができたこと。
「老年的超越」とは、
⚫︎身体的な健康を重視しない
⚫︎外に向けた活動を重視しない
⚫︎社会的役割を重視しない
⚫︎社会的ネットワークの縮小にこだわらない
今の自分には、正直考えられない価値観であり、戸惑いを感じてしまったが、その戸惑いこそ、高齢者の思考や行動を受容できない壁なのだろうと思う。
『老年的超越は、何かを乗り越えて得られる心理というよりは、自然な老化の過程で起こる心理だろうと考えられます。』という結論が、本著作にあったが、それだと、今の自分が理解できないのは、当たり前な気がしてきた。
第6章では、高齢者の心理発達を踏まえた高齢者との付き合い方が、書かれており、役に立つと感じた。
Posted by ブクログ
タイトルから、お年寄りの特性を嗤うような本に見えなくもない(いや、僕もそう思ってたんだけど)。けど、早合点でした。すみません。
「長くなる理由」も書かれてはいるけれど、それ以上に老人になるとどのように心境が変化していくかが、非常にわかりやすく納得できる形で書かれている。本題はあきらかにサブタイトル側にある。まあ新書のお約束のようなものか。
何かができなくなるということは不幸だ、という考え方が支配的だけれど、老人は必ずしもそうではなく、出来ない中でも出来ることを見つける、あるいは出来無くても全然OKという、違う価値観で幸せに生きる人たちがいる。
明日目を覚まさないかもしれない。そうした老年的超越には、老年でなくても憧れるところがある。そうか、妙な親近感があると思ったら、僕はもう老年的超越にさしかかりつつあるのではないか。
出来事と感情に直接の因果などない。まだ老年じゃないと思うけど、いいのかなあ。