【感想・ネタバレ】読まない力のレビュー

あらすじ

「言葉は意識の産物である。現代は意識優先、つまり脳化社会で、だから情報化社会になる。人生は『意識のみ』になってしまった」……。著者はあまり言葉を信用していない。言葉を読み過ぎず、先を読まず、解剖学者の眼で世の中を見つめ、静かに考える。すると現代日本人が気づかない、人間社会を取り巻くシステムが立ち現れる。たとえば、著者は本書で以下の意味のことを述べている。「秩序は同量の無秩序と引き換えでないと手に入らない。文明とは秩序であり、秩序を構築する過程で同量の無秩序を生み出している。それが炭酸ガス問題、環境問題の本質である。代替エネルギーもどうせ同じことであり、どこかにエントロピーを増やしてしまう」。日本人がこれからどう行動するかを考える上で、無視できない指摘ではないだろうか。本書は月刊誌『Voice』で2002年からはじまった好評長期連載「解剖学者の眼」を完全収録した時評集。石油問題、自衛隊のイラク派兵、靖国参拝、振り込め詐欺、オリンピック…。日本のこの7年を振り返りつつ、普遍的な視座を提案する。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

共感。やはり、今の時代何かがおかしい。そのおかしさというか違和感はどこから来るのかの回答が示されている。特に環境問題に関しての主張は参考になった。ガソリン文化(物質至上主義)の終焉とピークアウトによる文化の転換点という考えは非常に面白かった。なるほどね。そう言われるとストンと落ちた。文体も飾らなくて、理論的で良い。

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2010年05月01日

Posted by ブクログ

雑誌の時評をそのまま載せた本。愚痴っぽい部分が軽くて読みやすい。
色々な事件や出来事に対して著者の思った事がストレートに書かれている。

ただし、その内容が正しいのか、間違っているのかは分からない。
判断は読者に委ねられている。

言葉や文字は過去の産物であり、常に現在の状況と比較し判断しなければならない。疑いを持ちながら行う一連の流れを、著者の養老さんは望んでいるのではないかと思う。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

「言葉はタダで元手はいらない。その程度のもの。」
・言葉をどこまで信じるか。言葉の内容ではなく言葉そのものの重みについて。人が言葉を信用しているかは、振り込め詐欺の流行を見ればわかる。口でいうのはタダで元手がいらない。元手がいらない商品は実態がないので、普通は信用出来ない。
・河合隼雄の"私はウソしかいいません"という口癖。典型的な自己言及の矛盾。「ウソしかいわない」のが本当なら、本当のことを言ってるのでこの叙述はそもそも成立しない。言葉なんてその程度のものということ。
・昔は本を読むなという教育を受けた。本を読むと考えなくなるという。古くはソクラテスもそういったらしい。現代社会では文字を読まないわけにはいかない。じゃあどうするかというとできるだけ言葉による危害をこうむらないようにするしかない。なにしろネットに悪口を書かれて傷つくのは日常茶飯事、自殺する子がいるくらいなので。

「意識中心の情報化社会では言葉が全てと思われがち」
「意識なんて人間のごく一部。言葉も同様。」
・言葉は意識が生み出したもの。現代は意識優先の脳化社会で、だから情報化社会になる。人生は意識のみになってしまった。情報とは"時間が経っても変化しないもの"を指す。
・人間は意識じゃない。寝てる時間は意識がないので、人生の三分の一は意識がない。意識は人間の一部に過ぎない。でもそれがすべてだという社会をわれわれは懸命に作ってきた。それを情報化社会という。意識は情報しか扱えない。言葉は情報の元だから、意識は言葉なら扱える。それだけのことである。
・スキーの本を数冊読んだがスキーは上手にならなかった。当たり前である。スキーは情報じゃないからである。

「情報は変わらない。人は変わる。」
「人が情報とみなされ、自分は変わらないと信じ始めた。」
・現代人は、「私はいつも同じ私」で、「いつまで経っても私の本質は変化しない」と考えて、それを「個性」と呼んで「大切にしなきゃ」という。いつまで経っても変化しないものは私ではなく情報である。それなら「同じ私」というのは、「情報としての私」ではないか。
・人間が「同じ」なわけはない。歳をとりついには死ぬ。諸行無常と古人がいったとおり。いつまで経っても同じなのは情報で、人間は情報じゃない。それを取り違えたから、言葉が重いような、重くないような、変なことになった。変わらないのは私、情報は日替わりだ、などと思ってしまう。とんでもない、百年経っても、今日の新聞記事はそのままですよ。

「全てが言葉になるわけじゃない。」
・人間が生きているって、そういうことじゃないでしょ。まさに生きて動いているんだから。情報化社会では、それをしばしば忘れてしまう。だから自殺する人が増えたんじゃないかと、邪推してしまう。
・生きて動いている人生は、かならずしも予想通りにはいかない。すべてが言葉になるわけでもない。赤ん坊は生きて動いているけど、言葉はありません。じゃあ、赤ちゃんに価値がないかといったら、ひょっとすると親より価値が高いかもしれないじゃないですか。

「情報とは常に過去である。」
・毎日インターネットで新しいことを知ったと思っているがインターネットの中にあるもの、つまり情報とは、つねに過去である。済んでしまったことしか入っていない。毎日のニュースもじつは同じ。ニュースをひたすら見ている人たちは「ともあれ、済んでしまったことだ」と思った方がいい。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

養老氏の考え方が好きです。
言葉をどこまで信じるか。変わる自分と変わらぬ情報。
養老氏のおかげで「諸行無常」を意識することができています。

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2011年12月07日

Posted by ブクログ

2002年3月から2007年12月まで雑誌Voiceに連載された時評集。内容はやはり「唯脳論」の敷衍。変わる自分と変わらない情報、と云う概念はとても面白い。ここで問題視されている事柄で、2011年現在深刻化しているものが多い。

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2011年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
言葉は意識の産物である。
現代は意識優先、つまり脳化社会で、だから情報化社会になる。
人生は『意識のみ』になってしまった」…。
著者はあまり言葉を信用していない。
言葉を読み過ぎず、解剖学者の眼で世の中を見つめ、静かに考える。
すると現代日本人が気づかない、人間社会を取り巻くシステムが立ち現れる。
本書は二〇〇二年以降の日本と世界を論じた時評集。
石油問題、自衛隊のイラク派兵、靖国参拝、振り込め詐欺、オリンピック…。
日本人がいかに行動すべきかを考える上で示唆に富む一冊。

[ 目次 ]
第1章 石油と文明
第2章 社会と世間
第3章 都市と環境
第4章 政治と政治家
第5章 世界と日本
第6章 人間と人生

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月23日

Posted by ブクログ

先入観とか、固定観念に違う視点を与えてくれる。
ああ、そうゆう見方もあるよなぁ。と、すとんと納得できることや、納得できないけれど、面白いなと思うことが書いてあり、楽しんで読めました。

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2013年07月21日

Posted by ブクログ

雑誌voiceの時評をまとめたものなので、今読むと昔の自治ネタで著者が繰り返す「済んだこと」感が強い。
しかし、戦争についてや外交についての考え方はとても勉強になった。「反日に感謝」についてはユーモアと皮肉に富んでいて面白かった。

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2020年08月14日

Posted by ブクログ

本書は、「政治、環境、世界に対する日本、人生、生き方」などに対する思いつきを心の赴くままに、というよなスタイルで書きなぐった養老孟司のブログである。ブログなので、何のまとまりもなく、ダラダラという印象はぬぐえない。面白くない。

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2018年10月23日

Posted by ブクログ

雑誌Voiceに掲載されたコラムだから一つ一つが読み切り。大体2004年とかそれくらいの時事問題に触れ、養老孟司が感想を綴る。そういえばこんな事もあったと懐かしい。事件は風化する。そして繰り返しながら少しずつ良くはなっているのだろうか。そう思いたいものである。

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2017年04月03日

Posted by ブクログ

現代は情報化社会と言われる。情報は文字が中心であり、情報化社会とは、文字が溢れる時代と言える。そして、文字情報は脳で処理するから、情報化社会とは、脳化社会とも言える。
この本を読んで「現代は言葉のインフレが起こっている」と感じた。例えば、テレビ番組にもテロップが出ることが多い。音を聞きながらテロップも読む。もはや、テレビ番組にはテロップの文字が欠かせない。文字の重要度が増しているのである。
しかし、言葉が溢れる現代は、言葉の価値が下がり、言葉が軽量化する。ゆえに政治家の失言が増え、それを批判するマスコミの声が飛び交う。そしてそれに感化された民衆の批判の声によって、政治家が辞任する。
結果的に、言葉が言葉を生み、政治家も民衆も言葉に振り回されることになる。
オレオレ詐欺も言葉を重視した結果だと著者は言う。言葉は軽量化しているにも関わらず、同時に重視されてもいるという両者を合わせ持った状態が現代と言えないか。

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2016年04月11日

Posted by ブクログ

 よく読むということは、とりもなおさず、なにを読まないでおくべきか判断するということだ。 読みすぎは逆効果というわけだ。

  現代は意識優先の脳化社会すなわち情報化社会である。だから言葉をあまりに重要視しすぎるし、読みすぎてしまう。読みすぎてしまうから生きにくくなる。なぜなら、人間は意識ではないからである。意識がない時間は人生の3分の1以上あるのだから、意識は人間の一部に過ぎない。そこを履き違えて、意識だけが自分である、そして自分の本質は永遠に変化しえないのだという思い込みが自己を蝕むことになる。

 いつまでたっても変わらないのは情報であって自分ではない。「万物は流転する」とヘラクレイトスはいった。しかし、万物は流転するという情報は流転していないのがその証拠だ。諸行無常、人間こそが変わっていくのだ。

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2011年08月10日

Posted by ブクログ

まるで内容を覚えていませんが、読めば養老さん的アナロジーがよくわかると思います。

第二章以降、雑誌で連載していた、
800字~1000字くらいなのかな、
短い時事のエッセイをまとめた本でした。
そのくらいの分量ではたいしたことは
言えていないんだろうとお思いのあなた!
無駄のない主張にガツンとやられること請け合いです。

養老さんって文章が下手なのかなぁ、なんて思い、
さらに養老さんの理屈は屁理屈めいているなぁと、
これまで思っていたんだけれど、今回読んでみて、
それはアナロジーのせいだったんだなぁと、ほんのり理解した。
文と文のリンクの仕方が、どこか飛んでる感じなのも、
読みなおしたり、なれてきたりするとわかるようになります。
そういったところは独特なんでしょう。

内容もまえがきからしてやられてしまいます。
「巧言令色鮮仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」という孔子の
言葉が引きあいにだされて、「口でうまいことを言うヤツなんて、信用できないよ」
という意味だと語られる。
痛いところですね。
文章がうまくなりたいとか、もっといろいろしゃべれるようになりたいとか
常日頃考えていますが、そういうのは人として枝葉末節な部分で、
大事にすべきところではないのだなぁ。とはいえ、プロの人とかは、
そういった枝の部分も、考えや独創性などの幹の部分も
しっかりしていたりするんだろう。
言葉を使った表現力って、なんぞや?って思ってしまいますね。
日本におけるユング派心理療法のパイオニアで文化庁長官も務められた
故・河合隼雄さんが、まじめになると「私はウソしかいいません」と
きっぱりと言われたという話も載っています。
「ウソしかいわない」というのは、じゃ、その発言はウソなのか本当なのかという
矛盾を含んだものですが、だから河合さんは、言葉なんてその程度のものですよ、
みたいなことを言っておられたということらしいんです。
ここでも、小手先の言葉じゃなくて、人としての幹を育てることの
大事さを感じさせられます。

まえがきでも十分勉強になるのに、他にもいろいろなエッセイが盛りだくさん。
簡潔で平易な物言いなのに、深みがあって、
知識人で識者の養老さんと対話しているような読書感覚を覚えました。
とはいっても、読み手はあたりまえですがうなづくばかりですけどね。
でも、こうやって文章にすることで、アウトプットに頭を使っているのだから
少しはましなのかもしれないです。

こうやってブログを書くことにも、
あんまりサラサラっと書いてしまうのは
なんの経験にも、思索にもならないですね。
そこのところを頭の片隅に置きつつ、
自分の幹を鍛えることができるような記事を書けたらいいなぁ。

そうそう、日本が軍隊を持つことについての論説があるのですが、
そこで、国家としては武士道の精神が必要になるみたいなのがあるんです。
そこのところ、以前に読んだ北大の社会心理学者の山岸俊男さんの
『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』の主張とぶつかるところだったのが
興味深かったですね。武士道を可にするも不可にするも、帯に短したすきに長しな
印象をうけるんですよねぇ。とはいえ、統治の論理である武士道は、
きたるべき信頼社会をもたらす商人の論理とは相いれないと言われています。
これは山岸さんの主張なんですがね。でも、そこのところ、ちょっと山岸さんの
話は精彩に欠いているようにも読めるのです。信頼社会の欧米だって、統治の論理に
属する「二枚舌」を使ったりするじゃないかって。
どうも、どちらにしても、なんでもありじゃいけないっていう風潮なんですが、
僕が育ってきた中で感じてきた自由というのが、
そもそもなんでもありなイメージだったりするんですよねぇ。
考え直せということなのか。

そんな、いろいろ考えさせられて、
内容をつぶさに覚えておきたくなるような本でした。
養老さんは今年で73歳。もっと長生きしてほしいですねー。

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

見開き一ページごとに一つの題が付いてあり、読みやすい印象を受けた。また種々の内容があるが、一貫して養老氏の考えがあるため、自分の中で噛み砕いて吸収しなければならなかった。やはり、養老氏はすごく『知』的な人物であるなと思った。

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2010年07月21日

Posted by ブクログ

養老孟司氏のコラムは、ふつう、簡単に「差別だ」とか、「エコだ」とかで思考停止しているぶぶんをグラグラ動かしてくれて、ありがたい。

<国立大学の教授に国家公務員の服務規程を応用したら、大学なんぞ違反行為だけでもある。>とは、これを書いた時点では、「でも、べつに警察もひまじゃないから、まさか、、」ということもあったのかもしれないが、いまや、本気で逮捕されてるひとが出てきている、ということでは予言的なくだりだ。

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2010年04月03日

Posted by ブクログ

たまたま、夕食の際に、妻と「いつのできごとだったっけ?」と考え込んでいた出来事の時期が、偶然この本の「注」に出ていたので、すっきりしました。時系列でなく、分野ごとの章立てになっているので、その都度、頭を切り替えて読みましょう。

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2011年08月03日

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