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Posted by ブクログ
西沖廉は、ヤクザの下っ端であった。
幼い頃に父が捕まり、母に捨てられた廉は、コンビニの前にたむろしたり、悪い仲間とつるんだりして大きくなった。
性別不明の容貌が周囲の男たちの目を引き、男に無理やり抱かれたこともあったが、それを当然のこととして受け止めていた。
そんな廉に、再開発予定の土地を立ち退かない住民の中に紛れ込み、敵の弱みを探してこいと組の若頭に言われる。
廉は、仕方なく中華飯店の前で行き倒れ、ターゲットの一人であるその店の店主・魚住鉄馬に助けられる。
そしてそのまま住み込みで働くことになる。
意外とあっさり潜り込めた事に拍子抜けするけれど、鉄馬に対し、色仕掛けも辞さないつもりで仕掛けるもののまったく鉄馬には通用しない。
それどころか、鉄馬の鍛えられたたくましい筋肉を見て、ドキドキしてしまう始末。
おまけに、街の仲間は優しくて、廉のことを取り調べに来た警察官から守ってくれる。
そしてその日、「俺のもんになれ」と言って鉄馬に抱かれてしまう。
すべてが計画通りに行っているはずなのに、なぜか廉は罪悪感に苛まれ――
という話でした。
結局、廉はヤクザ仲間に何とかあの土地を諦めてもらうように伝えたけれど、当然、聞き入れるはずもなく、廉に「くれる」と言い、「預かるだけだから」と言ってもらっていた街の仲間の一人の権利書を奪われてしまう。
そこを助けに来た鉄馬と一緒に逃げ出して、ハッピーエンド。
街の住人は、どの道、「再開発になれば立ち退かなければならないから」と言って、その土地を立ち退き、新たに別の場所で生活をし始める――というラスト。
廉の生い立ちは散々なものだけれど、廉自身にあまり周囲をねたむ気持ちがないので、淡々と書いてあって。
それでいて、下町の人たちのあったかさだけはきちんと書かれてあって、廉の生い立ちに比べて随分、ほのぼのする話でした。
ドタバタでいてシリアスな話が好きな方にはオススメします。