【感想・ネタバレ】冷泉家 八〇〇年の「守る力」のレビュー

あらすじ

冷泉家は藤原俊成・定家の血を引く「和歌の家」として、その伝統と文化を京都の地で今日まで守り続けている。冷泉家の長女として生まれた著者によれば、冷泉家には「大事にせんとバチが当たる」「相変わらずで結構」など、独特な伝統・文化継承の秘訣があるという。当主夫人でしか語りえない代々のエピソードをもとに、急速に変化する現代社会の中で、我々が時代に流されずに生きるためのヒントとなる“公家の知恵”、冷泉家八00年の「守る力」を明かす。【目次】はじめに/第一章 大事にせんとバチが当たる 守り伝えられてきた『明月記』/第二章 そこそこやから続いてきた 「歌の家」の八百年/第三章 「昔からそうしてきたから」でけっこうやないですか 公家の三百六十五日/第四章 知識も物産も情報もまとめて収めて 蔵こそ公家の生命線/第五章 “型”が守り、伝えるもの 「文化」の威力、底力/第六章 “これはお金の問題やない” 冷泉家の四季と行事/第七章 しなやかに強く。「相変わらず」ならけっこうや 冷泉家の人々/おわりに

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Posted by ブクログ

親しみやすい文章で、冷泉家が身近に感じられた。冷泉家は、和歌の家元。

「和の文化」の基本は歌にあり。私とあなたはいっしょです、という精神。
そう言われると、和歌がとても身近に思えてきた。

和歌は、型、約束事が大事。自我、おのれを出さず、型にのっとって歌うことが大事。
自分にも真似すれば和歌のひとつも詠めるかな、と思ってしまった。

冷泉家の家訓は、
そこそこで、相変わらず。
神さんのバチが当たらんように。
こうして、冷泉家は800年、続いてきた。国宝を守ってきた。無形の文化を繋いできた。
これが冷泉家の「守る力」。

日本の宝、冷泉家、国民が支えて守らなければ、と思った。

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2024年09月10日

Posted by ブクログ

読み始めてしばらくは、たいそうなお家柄のくせに自慢オンパレードなんて稚拙、と思っていたんだけど、それは私の醜いこころの表れ。
うなったのは、「有識故実とは、すべて決まりことは決まりごととして、守るものだ」というあたり。「なぜそうするのかを問うことは意味がありません。昔からしているからそうする。間違えないように同じことをする。これがなによりも大事なことなのです。」(p.76)とし、この伝えられてきたことを「守る力」は、そのまま「つながる力」でもあるという。
ここから浮かんだ自分が最近よく感じることとして「何で人はドラスティックに変えたがるんだろう」というのがある。担当が変わると旧来のやり方が一新されることが多い。しかしその一新は、果たしてよくなっているのだろうか。「変わる」ことがよいことという漠然とした印象に引っ張られるけど、改良もあれば改悪もある。どっちつかず以下に変わるのであれば、これまで間違いのなかった変わらないもののほうが優れているのではないか。
しかし実際のところ、こうしたことを説得力もって主張するのって難しい。その点、「『昔からこうしてきたから』ということでなにが悪い」ということがもっと重用されてもいいのではないか。これってたとえば「何で人を殺しちゃいけない」みたいな問いへの答えとしても有効だと思う。理屈じゃないのよ、殺しちゃいけないものはいけないってこと。
また、「芸術」は西洋的なもの。自分をさらけ出し、人と違うことを主張すること。対して日本文化は、和歌や俳句の文字の制限とか歌舞伎の型のように「私とあなたは一緒」にあり、それは「芸」というべきものという主張も腑に落ちた。

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2021年07月31日

Posted by ブクログ

Webサイトでたまたまこの本のことを知り、おもしろそうかなと思って買ってみたのですが、期待を裏切られませんでした。
藤原俊成・定家を始祖とし、800年の歴史を連ねる冷泉家がどのような歴史の変遷を経てきたのか、和歌の伝統をどのように京都の地で守ってきたのかが非常に読みやすい文章で書かれていて、勉強になりましたし、楽しめました。
日本の文化について世界の関心が深まってきている中、その原点と言えるこのような伝統文化は、これからの時代にもぜひとも守っていかなければいけないと思わされました。

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2013年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

藤原俊成、定家につらなる歌の家の冷泉家を通じ、公家の役割や暮らし、有職故実に基づく伝統を変えないことによる安定について考えることができた。
さすがに庶民とは暮らしも文化・教養も、時間すらも違っているように感じた。
和歌と短歌の違いなど、教養を深める点で参考になることも多かった。
13-135

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2013年09月29日

Posted by ブクログ

「新しいこと」「変えること」に無条件に価値を見出す人々がいる。
品のない価値観だな、と思うことがなんどかあった。

この本では、公家の価値観は「『昔からそうしてきたから』でけっこうやないですか」というところにある。と紹介している。
それがまつりごとを運営する力、有職故実というものであり、公家の力の源泉である。といういうことらしい。

しかし、それはそれでいやなものだなぁ、とも思う。
是々非々が「いい加減」じゃないだろうか。

一般に男子男系で代々継ぐ、というのが「家系」というイメージがあると思うのだが、著者自身が養子をとって冷泉家を繋いだ、という人。

「冷泉家800年の『守る力』」というタイトルだが、著者は血脈と家は違うもの、という感覚を持っているように感じられた。

また、冷泉家は、元々は藤原氏の一人の後添いが、先妻との子供に渡すはずだった資産を、60歳近くの当主との間に作った子供に渡すよう遺言状を書かせ、裁判沙汰のあげく立ち上げたお家柄、と紹介されている。

立ち上げ、守る力。けっこうえげつない力だったんだなあ、と感じた次第。

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2014年01月05日

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