【感想・ネタバレ】アメリカの20世紀〈下〉1945年~2000年のレビュー

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Posted by ブクログ

一般向けとしては新書2冊でややボリューミーなアメリカの社会史。政治との連関で追いつつも、主にマイノリティの位置付けを追う。保守からリベラルまでエリートたちがこぞって批判するトランプとは何者なのか。彼が壊すかもしれないものは何なのか。本書はそのヒントをあたえてくれると思う。(この観点でいえば下巻で足りる)
公民権運動から保革対立激化に至る歴史を新書にしては詳細に叙述する。その白眉はその歴史から到達する20世紀末の「文化戦争」の記述である。アメリカには、WASP(伝統的白人)のアメリカとサラダボウルと例えられるアメリカがある。1980年以降激化した「文化戦争」(中絶、信教、人種などをめぐる保革の対立の激化)は、アメリカの位置付けをめぐる大きな揺れを生み出し、それは本書で指摘されるように事あるごとに噴出してきた。関係ないような事件にまで絡められる事もあった。本書は2002年巻だが、ブッシュ・オバマ期を通じて大きく揺れ、2016年に至る。
最後の方にこんな記述がある。
文化多元主義と多文化主義は、いずれも異質な人種・民族集団の文化を尊重するが、前者は一つの統合されたアメリカ社会における多様性を尊重するのに対し、後者では各人種・民族集団の文化がまず尊重され、一つのアメリカ社会としての統合はほとんど問題にされないう。この意味で、多文化主義は統一国家としてのアメリカという前提をひっくり返したものと言っても過言ではない。p156
進歩派ないしリベラル派が進めてきた人種や性の平等、人間の差異に対する寛容さなどの価値観は、広く社会に浸透していった。保守派はこう言った価値観を建前上は受け入れながらも抵抗を続けている。それは、多くの場合リベラルな勢力が強い大学のキャンパスでよく見られる。p177
トランプが壊そうとしているのは、そもそもの「異質な人種・民族集団の文化を尊重」する姿勢であり、その「建前」なのであろう。クルーズはトランプを放送コードを絡めて批判しているが、共和党の超保守派ですら守った最低限のレベルなのである。
トランプは”Make America Great again”と言い、クリントンはケネディの言を引いて"America is great, and we can do great things if we do them together." と批判する。見ている時代は同じなはずなのになんとも不思議な話である。
その意味でトランプが壊そうとしているものの正体を知る一冊であると言える。

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2016年04月29日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦後、「パックス・アメリカーナ」は危機を迎える。
ソ連との対立、ベトナム戦争の泥沼化でアメリカの国際的地位は著しく低下した。
他方、国内では公民権運動、マイノリティの地位向上や女性解放の運動、ベトナム反戦運動など、社会変革を求める動きが活発化する―。
冷戦終結により唯一の超大国となったアメリカは、どこへ向かおうとするのか。
国内外の新たな試練にさらされる二〇世紀後半を描く。

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2014年10月26日

Posted by ブクログ

 とりあえず下巻だけ買ったので、下巻だけのレビューを。

 第6章 冷戦下の「黄金時代」-1940年代~1950年代
 第7章 激動の時代-1960年代
 第8章 保守の時代-1970~1980年代
 第9章 文化戦争の世紀末-1990年以降
 「九月十一日」が示すアメリカ

 文化的・政治的側面からアメリカの「20世紀」を描く通史の下巻は1945年以降の時代をあつかう。第二次世界大戦の戦勝がもたらした豊かな「アメリカ的生活」は幅広い中産階級をうみだし、保守的な「アメリカ像」となった。
 一方1960年代はケネディのパーソナリティに代表されるような革新的な若々しいリベラリズムやカウンターカルチャーによって前の時代が批判される。そして逆行的な保守化の時代を経て国民のコンセンサスが多様性を容認する社会の形成へと変化していく。
 「民主主義」という共通の土台を共有しながらも、他文化主義による分裂をのぞかせる「アメリカの世紀」を考えさせられる。

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2011年03月30日

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