【感想・ネタバレ】「法令遵守」が日本を滅ぼすのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『法令遵守が日本を滅ぼす』。なんだかタイトルもあざといし、新潮新書なのであまり期待しない方がいいかな(←出版社差別)と思いながら読んでみたのですが、思ったよりも面白く読み応えのある本でした。

法律と企業倫理のこれまでの関係と、そのこれからあるべき関係が述べられています。具体例や歴史的経緯、それに日本人の法感覚などに照らし合わせながら論述が進められていくので、本の厚さに対して情報量も相当なものです。

まあ大まかな作者の主張はタイトルの通りで、最近は法令遵守ということがよく言われるけれどそれだけではダメだ、ということです。

規則を無視するのも、規則を無批判に遵守するだけの態度も、どちらも間違い。そもそもその法律が社会的感覚とズレていることは多くあるのであって、企業は必ずしも法律に即さないような社会的・道義的責任までも見据えていかなければならないのです。そういうことが述べられています。

もっと簡単に言えば、「企業よ、法律を守るばっかりではなく、ちゃんと社会の空気を読め!」といったところでしょうか。

しかしこの本は「企業寄り」という感じで、もはや法律に絶望しているようにも見えます。その点が少し気になりますね。

恐らく企業にだって空気が読める企業とそうでない企業があることでしょう。それにそうした空気じたい、一般的な暗黙の合意としてあるわけではなくて、マスコミがどう報道するかにかかっている部分もあります。

例えばマスコミが「この企業はこんなに反省しているから許してあげよう」という報道をすれば、社会全体でそういう空気になるものです。また逆に、どんなに謝罪しても、マスコミが叩く限り我々はその企業をそういう目で見続けてしまうものです。

この本の立場は「明文化されたルールに依存するとろくなことはない」ということだと思いますが、僕にしてみれば「場の空気を読んでばかりいるのは日和見主義で、そうした立場からは一貫した道義性は生まれない。不祥事を起こした企業は、それへの対応が、今後も他の企業に対して模範となるように心がけねばいけない」といったところです。

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2012年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書のテーマはコンプライアンスである。90年代の末か国家公務員倫理法制定により、官僚の実社会との隔絶が広がり、法令を遵守するだけでは、社会的要請に応えられなくなって来ているという問題意識が存在する。

例えば、談合について、高度経済成長期には社会的要請としての富の再配分としてのシステムが存在しており、雇用の確保、中小企業を通した地域振興、天下りの受け皿、技術革新などの多面的役割があった。刑法の談合規定も適用されず、談合は公然化していた。しかし、低成長時代、弊害が多く出始めたので会社法上の規定と公正取独禁法の見直しにより、談合に課徴金を課し、談合コストを高める事で談合=犯罪のイメージは定着した。90年代以降の規制緩和の流れの中で、一方で競争システムを助長する事で、消費者の利益に資する反面、受注実績に制限を掛けなければ安全、良質という社会的要請には応えられない。談合を巡る問題で、結果的に談合は「不正の温床」というイメージは出来たが、なぜ談合が必要とされていたのか社会的実態を問う事をしなかったため、談合=悪論が目的化し、手抜き工事や有望ななどの問題が出始めている。

上記のように、時代とともに法令と社会的要請にはズレが生じ、拡大して来ている。法令遵守する事がメディアや規制緩和の事後チェック型の流れで求められるが、社会の要請に基づかなければ法律だけ守っても問題の解決にはならない。そこで法と実態社会のギャップの拡大を食い止める為に、どうすれば良いかは述べられていない。ただ、おそらく法令が完全に社会の要請に応える事は困難であろう。筆者はコンプライアンスを「組織が社会的要請に適応すること」と定義し、組織が法の趣旨に照らし社会的要請に応えるための組織改革が必要だと言う。ただ、当たり前の事のようにも思え、多くの企業が生き残るべく実施しているのではないかとも思える。むしろ、官僚という組織について知りたいので、他の書にあたろうと思う。

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2012年03月11日

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