【感想・ネタバレ】歴史民俗学資料叢書V 生贄と人柱の民俗学のレビュー

あらすじ

大正14年(1925)皇居(江戸城)二重櫓の下から多数の白骨死体が発掘され、にわかに「人柱」論争が巻き起こった。南方熊楠・柳田国男・中山太郎の人柱論といった強烈な個性で知られる民俗学者の「人柱論」をとおして日本文化の基層を探る。

目次
1.「人柱に関する研究」布施千造(一九〇二) 2.「宗教学と仏教史」加藤玄智(一九一一) 3.「掛神の信仰に就て」柳田国男(一九一一) 4.「本邦供犠思想の発達に及ぼせる仏教の影響を論じて柳田君に質す」加藤玄智(一九一一) 5.「人柱伝説〈『日本伝説集』より〉高木敏雄(一九一三) 6.「人身御供論」(序論)高木敏雄(一九一三) 7.「一つ目小僧」久米長目(一九一七) 8.「松童神」桂鷺北(一九一七) 9.「松浦小夜姫」榎本御杖(一九一七) 10.「人身御供」ジェームス・ビー・スミレー/三上義夫訳(一九一八) 11.「農に関する土俗」柳田国男(一九一八) 12.「人柱の話」南方熊楠(一九二五) 13.「二重櫓下人骨に絡はる経緯」中央史壇編輯部(一九二五) 14.「人身御供と人柱」喜田貞吉(一九二五) 15.「人身御供の資料としての『おなり女』伝説」中山太郎(一九二五) 16.「上代に於ける殉葬の風について」後藤守一(一九二五) 17.「動物を犠牲にする土俗」駒込林二(一九二五) 18.「尾張国府宮の直会祭を中心として見たる及び人身御供と人柱」加藤玄智(一九二五) 19.「松王健児の物語」柳田国男(一九二七) 20.「人柱と松浦佐用媛」柳田国男(一九二七) 21.「人身御供考」〈『変態風俗の研究』より〉田中香涯(一九二七) 22.イケニエ」〈『大百科事典』より〉守田有秋(一九三一) 23.「埴輪の原始型態と民俗」中山太郎(一九三二) 24.「裸祭りと人身御供の話」木曽惠吉(一九三四) 25.「人身御供とシトミゴク」田村吉永(一九三七)26.「天香山神社に残れる『ゴータク』歌」松田定一(一九三七) 27.「講談本に登場する『人身御供』は存在」歴史公論編輯部(一九三七)

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Posted by ブクログ

この本を読んで痛感したこと。それは、漢文を読む力と日本の神様の知識があれば、もっともっと理解が深まったということ。今後古文献を自分で読みたいと思っている自分としては、すこしずつ慣れるようにしつつ、解説付きの本も取り入れていくようにしようと思う。

人身御供、人柱。昔話や民間伝承や現在の物語の題材にもなっているので、意外と馴染みのあるテーマであるように感じたが、歴史上は記録に残りにくいものでもあるので、専門家達の間では大きな議論のテーマであったことが感じられた。
主に柳田國男(否定派)と加藤玄智・中山太郎(肯定派)の論文が多く、批判も交えているので研究の仕方の勉強としても面白いし、当時の論争が目に見えるように編集してあるので面白く読めた。

編集者の中山太郎への敬愛を感じるものだった。
また、編者は論文を読んでいて引用した資料に興味を持ち、論文自体よりその資料により魅力を感じたり、それがなかなか調べられなかったりしたので本書を作ったと。
確かに論文の多さと構成がよく調べられていて情熱を感じた。

印象に残った点
○隠居制度は姥捨て山から転じてできた制度であるということ。

○人身御供は神様に備えるという意味と思っていたが、「神様を食べる」という意味もある。人間を一人神様に選び、その人を殺して食べる風習やキリスト教の葡萄酒とパンがそれにあたるという。そういう見方をするのかと衝撃的だった。

○5月に機織りをしないという風習。水の神は女性であり、機を織ると考えられて入り、水の恩恵を最も必要とする田植月だけはその水の神の真似をするようなことはしないと。

○仏教や儒教の教えによって生贄の風習をやめたという事例も多い。儒教の教えから、人を捧げるように要求する神様は淫祠邪教の神であるからそのような者に捧げる必要はないと説いてやめさせたと。神様を否定せず説得できる場合もあるのか。

○人身御供の名残り転化した風習として、厄を受ける人を決め、沐浴させ、その人を象った土人形を殺す真似をする。その場で死ぬ訳ではないが、5年以内に死ぬとかいう噂になって村にはその期間は捉えられないよう出歩くものがなくなった。

○くしなだ姫の考察。櫛になったのではなく、串に刺されたということでは。女性が犠牲になって田の神になるという信仰は多い。オナリ信仰等。

○生贄自体は女より男の方が数多いが、なぜ伝承になるのは女が多いのか?それは劇的になるからだけではなく、奴隷、妻妾として略奪する場合もあったからだと。

○背景として、山の民海の民が生活物資不足や女が足りないために里に下りて強奪する。襲撃をおそれて村も女物資を用意していた。

○皇居の二重櫓から人骨。記録にないから人柱はなかったの論調に対し、今夜妻が孕んだなどと日記に記録する人はふつういない。記録にないからわが子ではないということがないように記録がないから人柱がないということにはならない。(南方熊楠)

○古代は王の死後人柱を燃やして立ち上った煙をみて霊が下りてきたといった。そのような幽霊観もあった。

○飲料が気化するのを見て、太陽神が飲んでいると古代の人は思った。

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2021年08月07日

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