【感想・ネタバレ】SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術のレビュー

あらすじ

米Amazon脚本術部門で売上No.1のベストセラー、『SAVE THE CAT! The Last Book on Screenwriting You’ll Ever Need』がついに邦訳!!

「小難しい脚本術の分析書はいらない。シンプルで、しかも本当に大手映画会社が買ってくれる脚本を書くための最低限のコツを教えてくれ!」。本書は、プロにも素人にも役立つこと間違いなしの、売れっ子脚本家による脚本マニュアルです。芸術であると同時に、科学でもある脚本を支配する普遍の法則、本書のタイトルである「SAVE THE CAT !」とは、脚本の常識やストーリーテリングの基本的ルールを表す象徴的なシーンの意味を込めています。売れるために大切なのは大きなスタジオでも多額の予算でもなく、良い脚本を書くための法則に従って書くことなのです。

本書では、業界を知り尽くした筆者が、脚本仲間と一緒に長年蓄積してきた売れる脚本の黄金法則を、いつでも簡潔に、楽しく見直すことができます。ジャンル、プロット、構成、販売戦略、キャスティングなどの基本要素から、誰も教えてくれなかったハリウッドのDNAを受け継ぎ、ビジネスとアートのバランスをうまくとるコツを教えてくれます。映画だけでなくテレビや舞台、ゲームなど、ストーリーを扱うすべての人が必読です。

この業界で勝負するならホームランを狙うのが当たり前! インディーズ映画ももちろんすばらしいですが、メジャーな市場で大ヒットを飛ばしたいあなたのための超実践的な脚本術です。

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Posted by ブクログ

脚本術の本。映画の話が中心。

これから脚本を書いてみたい!という人でも十分勉強になる内容だし、すでに脚本を書いている人にとっても改めて自分のやり方について整理ができる良書。


・その映画はどんな映画かを簡単に説明できること(ログライン)
・その映画の雛型は何か?
・ビートとして書かれる15の構成
・脚本のルール
・脚本のダメなところの修正の仕方


どの部分も勉強になりますし、実際に映画を見るとちゃんとルールに沿った構成になっていることがわかります。
脚本を書いてみたくなりますが、グッと堪えてログラインから始めてみようかな。

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2025年04月03日

Posted by ブクログ

すごくよかった!もっと早く読んでおけばよかったと思うほどだった。
明快な体系的に脚本術について描かれており、確かにこの方法でハリウッド映画は作られているし、このように書けば、ある程度面白い作品は作ることができるであろうという確信があった。この方法を取り入れる実践的な手法についてもきちんと書かれている

それでいて、平易で親しみやすい文章で書かれているので、読みにくさも感じなかった。

ほんと、もっと早く読んでおけばと思った。
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もう一度通読した。

SAVE THE CATの理論編。頭の良い人だったり確固たる方法論を確立しているひとにとってはこれだけで良いと思う。

この本で大きく解説しているのは3つだ。

・描く価値のある主人公の描き方
・ストーリーのタイプ別の10の作品分類
・15のシーンからなるプロットの解説

主人公は観客から応援されなければならず、そのテクニックの1つとして「猫を助けるシーンを挿入しなさい=SAVE THE CAT」ということ。要するに観客の共感を呼ぶように設定しなさい、みたいなこと。

物語は脚本のタイプによって10個に分けることができるというもの。たとえば「何かを求める旅に出る」というタイプの脚本という分類をすれば『オーシャンズ11』も『プライベート・ライアン』も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も同じジャンルだと彼は言っている。こうやって分類してから作品を分析していくことによって、執筆中の脚本の参考になる。

この本で一番大事なのが3幕構成をさらに細かく分割した『ブレイク・スナイダー・ビートシート』なるもの。著者の名前を冠したこのシートに当てはめていくことによって映画の脚本を簡単に完成できるというもの。
確かにビートシートを頭に入れながら作品を見ると、該当する箇所がおおむね同じ時間で出現する。

今まで読んだ脚本術の中で一番分かりやすく、実践的だった気がする。おすすめ。

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2023年10月21日

Posted by ブクログ

【動機】聞きたくなるようなストーリーをつむぐためのヒントにしたくて

「脚本」というジャンルで複数のサイトで薦められていたので興味を持った。
映画よりもっと短い、なにかの背景説明に用いたかったので、ちょっと変えた方がいい部分もあるだろうが、映画の構成が知れたり、おおまかなジャンルがわかったり、違う視点が持てた。

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2023年02月18日

購入済み

一生使えるストーリー制作

シナリオの修正の仕方がめちゃくちゃ参考になる。まだ何もわからない初心者にオススメ。説明の仕方が面白くて楽しく読めます。

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2022年08月26日

Posted by ブクログ

ハリウッドの作品って、中には嫌いという人もいるけれど、私は逆で、どの映画も毎回すごくよく出来ていると心から感心する。
日本映画を見てると眠くなって飽きちゃったり、感情移入できずに終わることも多いのに(すいません、でも事実)、ハリウッド作品にはそれがほとんどなくて、逆にこんな作品で泣くー?ってくらい毎回大泣きしたり大笑いしたり。

絶対に、海の向こうのあの国には、何か脚本を書くマニュアルとかシステム的なメソッドが確立されているはず!! そうじゃないと、こんなにいくつもいくつも長期にわたって継続的におもしろい作品が量産され続けられるはずがない!
…などと思って、その答えがほしくていろんな脚本術の本を読んだけれど、今まで私が読んだ中では、納得いく答えがなかった。

しかし、やっと、そういうことが書いてある本を見つけた。
絶対あると思っていた。何ページまでに何を書いて、何ページでこういうシーンを入れて、と細かくマニュアル化した本。
それがこの本です。

読み物としてもおもしろかったし、その理論はとても説得力があるように思う。(といってもあくまでも私は映画を見る側なので、受け取り手として感じた説得力ですが)

印象的だったのは、ミッドポイントが必ず45分で訪れる、というのを著者が発見したエピソード。なかなかすごい発見だと思った。
今まで見た映画を思い浮かべても、確かにだいたい1時間くらいでそういうシーンが来る。
そしてそのタイミングは110ページの脚本では55ページ目に来る、という著者の主張にもなんとなく納得。少なくともハリウッド映画を見る時にわたしたちが期待している物語の起伏は、映画のジャンルにかかわらず、大まかにはそのような形になっているように思う。
きっと太古の昔から、人類は「物語を語る」という行為のテクニックを実地で磨いていって、その到達点の一つがハリウッド映画なんだろうなぁ。

ミッドポイントだけじゃなくて、映画は四幕になっていて、それぞれの区切り(第一ターニングポイント、第二ターニングポイント)が来るタイミングも、基本的には決まっている、というあたりになってくると、統計学の箱ひげ図をほうふつとさせられて興味深かった。
ミッドポイントを挟んだターニングポイントは、中央値を挟んだ第二四分位数と第三四分位数みたい。

今後は映画よりも海外ドラマが主流になるんじゃないかと私は感じているが(映画は今の二時間ドラマか、テーマパークのアトラクションみたいな位置づけになるのではないかしら、などと勝手に予測)、その海外ドラマも、一つひとつのエピソードに、やっぱり同じように型があると思う。でも、映画とは時間の尺が違うから、ちょっと違う型。

ということで、次はこの本の海外ドラマ版みたいなのが読みたいな。
私の体の中のエンタメ時計は、もはや映画じゃなくて海外ドラマに合わせてしまっているような気がするので。

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2021年05月31日

Posted by ブクログ

映画監督になりたかった子供の頃を思い出し購入。全ての映画は特定のジャンルに分けられるなど、衝撃的な内容が多かった。脚本を書く上で、同じジャンルからヒントを得る考え方は納得感が高かった。これから映画を見る際は意識してしまうと思う。映画だけでなく、仕事での発表方法にも活かせそうな点が多かった。

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2021年04月10日

Posted by ブクログ

脚本が書けなくなって困っていたのでとても助かりました。
語り口も軽快で読みやすいです。
もっと早く読んでいればよかったです。

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2020年09月27日

購入済み

読みやすい。

神話の法則よりも読みやすく、わかりやすかったです。
Dramaticaとも通じるものがあるかな?
軽い口調な雰囲気は好き嫌いが分かれると思いますが、
「現場の雰囲気」が感じられました。

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2020年08月12日

Posted by ブクログ

この類の本を手に取る機会は、自分がまだまだ書き手として足りていないということを自覚して初めて訪れるわけで。もっと早くても良かったんじゃないかと思いつつ、一生気付かないよりはマシかなとも思ったり。
教本にあまり興味が無かった理由の一つに、偉そうで堅苦しいことばっか書いてあるんだろうな~……ってのがあったんですが、この本は最初から最後まで語り口調で書かれているのでとても親しみやすい。シナリオを書く上で注意すべき点だったり、自分がなんとなく気をつけていることが言語化されてたりするので、とても分かりやすかった。
しかしこれ、去年の夏頃買った本のはずなんですがね、何故読み終えたのが今なんでしょうかね。

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2019年10月15日

Posted by ブクログ

脚本術の名著ですが、小説の創作にも役立ちます。
シド・フィールドの脚本術と並んで挙げられることが多い本じゃないかと思うんですが、あっちが丁寧に一個ずつ、ゆるやかに組み上げていく構成術なら、ブレイク・スナイダーは「こうだ! 議論はなし!」みたいな感じで、明快簡潔にどんどん提示していく感じ。さくさく読めるので、時間のない人にもおすすめかも。

ブレイク・スナイダー・ビート・シートが一番の目玉かな。構成で迷子になりやすい創作家さんにすごく役立ちそう。「このあたりでこう! それからこう!」という具合に、ストーリーの起伏をつくっていく方法を伝えてくれる。それでいて結構応用がききそうな、解釈に幅をもたせられるところもあって、「金太郎飴的ストーリー量産機」にはならずに独自性のある物語をつくれるようにしてるのがすごい。バランス感覚があるんでしょうね。

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2018年12月12日

購入済み

わかりやすかったです。

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2018年07月15日

Posted by ブクログ

ログラインや15のビートなど、脚本に参考できそうな法則が色々とあった。シーンごとに感情の推移や葛藤を入れ込むというのも、なかなかに難しいが納得。

chapter8は20年以上前の話なので、さすがに古い。脚本を競売していた時代の思い出話。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

物語の仕組みを理解するために読んだ。(Geminiに勧められた)

創作をする側の人には参考になると思う。
私は文章を趣味で書くので、とても参考になった。
感覚でおもしろい作品はだいたこんな感じとぼんやりと持っていたイメージが、はっきりと「型」として存在して説明できることに驚いた。
これを読んだ後に、映画・小説・マンガを読むとストーリーの必然性に気付けておもしろい。

作者が励ましてくれるので、やる気がでる。ためしにやってみると、英語が原文のせいか分かりづらいところもある。しかし完全に型にはめる必要はないらしい。

法則(物語の型)を知ると、創作者のアイデア、独創性、工夫の努力に気付ける気がする。創作の方面に少しでも興味がある人には、おすすめ。
ただ、ちょっとした舞台裏のことなので、「このあとこういうのが来るんでしょ」という分かったふうな観客になりたくない、ストーリーの型なんて知らなくていい、純粋に作品を楽しみたいという人には完全に不要で不向きな本だと思う。

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2025年06月19日

Posted by ブクログ

ハリウッドの脚本家が脚本について、物語形式について語る本。三幕構成とは違い展開が多い。勉強にはなった。

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 とりあえずパンチのきいたログラインとタイトルができるまでは、脚本を書くのはおあずけと言った。つらいだろう。わかっている。でも最後には必ず報われるのだ。例を挙げてみよう。つい最近私はネットを通じて、ある脚本家とやりとりをした。彼のアイデアは良かったが、ログラインは漠然としていて私の心をつかむものではなかった。だから残念ながらページワン(つまりほぼ全面的に書き換えということ)だと言って、ログラインを送り返した。彼は不満そうだったが、私のアドバイスに従うことにした。
 彼はとりあえず自分のお気に入りのストーリー、目の前に浮かぶ鮮やかなシーン、繰り返し現れるモチーフなどを脇において、もう一度ログラインを書き始めた――おそらく、イライラするいやな作業だっただろう。でも彼は、ストーリーにマッチし、しかもすべての基準を満たすログラインを必死に考えた。試行錯誤を繰り返し、皮肉・観客層と製作費・イメージの広がり・パンチの効いたタイトルの入ったログラインを作ることに専念した。凝り固まっていたアイデアをいったん捨ててみたわけだ。そうしたらなんと(その1)、ログラインが変化したのである。するとすぐに、テスト・マーケティングの反応が良くなってきた。そうしたらなんと(その2)、ストーリーがログラインに合うように変化し始めた。そうしたらなんと(その3)、ストーリーが良くなったのだ! そう、ログラインってそういうことなのだ! 良いログラインができれば、登場人物は際立ち、ストーリーはより明確になり、脚本を書くのも楽になるのである。
 こうして彼はいろいろな発見をしたわけだが、なかでも一番良かったのは、修正しなかったら映画化したときに生じた問題(予算の問題など)を回避し、関係者全員の手間をあらかじめ省けたことだ。もしログラインを直していなかったら、ポストプロダクションの段階で問題が浮上し、解決しなきゃいけなくなる。それがどれほど大変な手間になるか想像できるだろう? そうなってからじゃ遅いんだ。だけどログラインの段階で完ぺきに直しておけば、紙だって鉛筆だって、一銭だって無駄にならない。誰かの頭を悩ませることもなく、みんなの雑務を省くことができる。そうすれば新聞の映画欄を見た観客は、友達に映画を説明しやすくなるし、映画の出来だってずっと良くなるはずだ。それはひとえに、「どんな映画なの?」に対してより良い答え(=ログライン)を出したからなのだ。

 何かを生み出すということは――映画のアイデア、登場人物の話し方、シーンなど何であれ――新鮮なひねりを加えるということだ。しかし、平凡でないもの、伝統を超えて一歩前進したものを作るには、まずはそれまでの歴史や伝統をよく知る必要がある。これまでに製作された何百本という映画、特に自分の書きたい脚本と同じジャンルの映画については徹底的に知っておくべきだ。
 ところが驚いたことに(!)、映画で身を立てようとしている人間が、映画の引用ができない、自分が書きたいジャンルの映画でさえも引用できないのだ。
 いいかい、言っておくけど、名監督はみんな引用できるんだ。
 スピルバーグ監督やスコセッシ監督がいい例だろう。彼らは映画について語るとき、何百本という作品からさまざまな引用をする。引用と言っても、「台詞がそっくりそのまま言える」ってことじゃない。「その映画がどう機能しているか、その仕組みを説明できる」ってことだ。映画というのは、感情を引き起こすために作られた複雑な機械みたいなもので、精巧なスイス時計のように、いくつもの歯車がかみ合ってチクタク動いている。これを部品に分解し、しかも組み立て直せるようにならなきゃいけない。それにはもっともっと歴史をさかのぼって、いろいろな映画の種類を知り、どんな系統にはどんな作品があり、どう発展してきたのかを理解しなければいけないのだ。
 つまり〈ジャンル〉である。
 さあ、成功する脚本を書くための次のステップだ。自分の映画はどんなジャンルに属すのか考えてみよう。「そんなの無理! 俺の映画は斬新だから、同じような映画なんてあるわけない! どのジャンルにも入らないさ!」なんて反論したって……。
 悪いけど、もう遅い。
 これほど数ある映画のなかで、どれとも違う映画のアイデアなんてまずありえない。本当だ。君が書こうとしている脚本は、必ずどこかのジャンルに入る。そして各ジャンルにはそれぞれ特有のルールってものがある。平凡でなく、《同じものだけど……ちがった奴》を作るには、自分の映画のジャンルを熟知し、ひねりの加え方を学ばなきゃいけない。それができれば、売れる可能性は高くなる。ハリウッドでは実際誰もがそれをやっているのだ。だったら知らない手はないだろう?

 とにかく、自分の作品がどのジャンルに属すのかを知ることは、脚本家にとってとても重要だ。なぜなら書いている途中で道を見失うことはよくあることで、そんなときにはスティーヴン・スピルバーグでも私でも、同じジャンルの作品を参考にし、プロットや登場人物からヒントをもらうわけだ。これは当たり前のことだ。同じジャンルの作品を〈ふるいにかけ〉、そのなかからプロットに不可欠な要素や必要なヒントを手に入れるのだ。

私が今悩んでいるのは、物語で起こる出来事ではなく――それはかなり面白い――それらが主人公にとってどういう意味を持つかという点なのだ。どんなに個々のセット・ピースが面白くても、主人公の成長につながらなければ意味がない。だから私たちは『オデュッセイア』や『ガリバー旅行記』のような《金の羊毛》のストーリーの根底にあるルールに立ち戻って、試行錯誤している。ストーリーをうまく動かすのは、出来事自体ではなく、出来事からヒーローが何を学ぶかだから。

《バディとの友情》には秘密がある。実は《バディとの友情》といっても、バディの仮面をはがせばラブストーリーだということだ。逆に言えば、ラブストーリーとはセックスの可能性がプラスされた《バディとの友情》だということだ。『赤ちゃん教育』(38)、『パットとマイク』(52)、『女性No.1』(43)、『トゥー・ウィークス・ノーティス』(02)、『10日間で男を上手にフル方法』(03)などはすべて――ジャンル的には――ローレル&ハーディを洗練して、バディの片方にスカートをはかせたものなのだ。そしてこのジャンルに即ずる作品も、ドラマであれコメディーであれ、セックスがあるにせよないにせよ、やはり同じルールに従っている。最初〈バディ〉はお互いを嫌っているが、旅をしていくうちに相手の存在が必要で、二人そろって初めて一つの完結した存在になることがわかってくる。そうは気づいても、こいつがいなきゃダメだなんたまったもんじゃない! ここでまた新たな葛藤が生まれるのだ。
 やがて結末近くになると、《すべてを失って》の瞬間(チャプター4で詳しく説明しよう)がやって来る。連れ添ってきたバディと喧嘩になり、あばよ! ってことになるのだ。ただしこれは本当の別れじゃない。お互いなくして生きていけないこと、お互いにエゴを捨てて仲良くするしかないことを最終確認するためのきっかけなのだ。そして最後の幕が下りるとき、二人は覚悟を決めるのである。
 バディのストーリーによくあるパターンを挙げてみよう。たとえば『レインマン』の場合、トム・クルーズとダスティン・ホフマンのうち、変化するのはトム・クルーズ演じる主人公だ。ダスティン・ホフマンのほうは、主人公が変化するきっかけを与える役回りであり、本人は変化したとしてもほんのわずかだ。どちらが変化するかは、〈誰のストーリーなのか?〉によって決まる。『リーサル・ウェポン』(87)も同じ例だ。あくまでもダニー・グローバーの物語であって、メル・ギブソンは彼が変化するためのきっかけにすぎない。メル・ギブソンの破滅的な性格も多少は改善されるが、観客の焦点はダニー・グローバーの変化に向けられている。きっかけとなる〈存在〉がバディの人生に影響を与え、去っていくパターンは、《バディとの友情》のなかでかなりの割合を占める。《少年と犬》(たとえば『E.T.』[82])的なストーリーもこのジャンルに含まれる。
 もし《バディとの友情》の脚本を書きたいなら、このジャンルの構成やパターンをしっかり理解することだ。DVDを何十本も見て、じっくり研究してほしい。こんなにパターンがそっくりだったんだ! と驚くはずだ。これってもしかして盗作? と思うくらいに。サンドラ・ブロックはキャサリン・ヘップバーンそっくりじゃない? ケーリー・グラントはヒュー・グラントを著作権侵害で訴えた方がいいんじゃない? 答えはもちろん、ノー。単にストーリーテリングがうまいだけ。じゃ、なぜこんなに似てしまうわけ?
 そのパターンだったら、必ずうまくいくってわかっているからだ。

 人間は一人では生きて行けない。けれど、集団になると、多数派の目的を叶えるために、少数派の目的は犠牲になることもある。一長一短なのだ。《組織のなかで》は、集団や組織、施設、〈ファミリー〉についてのストーリーを扱うジャンルである。主人公は自分の属す組織に誇りを感じる一方で、組織の一員として生きるために自分らしさやアイデンティティーを失うという問題も抱えている。
『カッコーの巣の上で』は精神病院、『アメリカン・ビューティー』は現代アメリカの郊外、『M★A★S★Hマッシュ』はアメリカの軍隊、そして、『ゴッド・ファーザー』(72)はマフィア一族という組織や集団についての物語で、どのストーリーにも予期せぬ登場人物が現れ、集団の目的が実は欺瞞であることを暴く。ジャック・ニコルソン、ケヴィン・スペイシー、ドナルド・サザーランド、アル・パチーノがその役割を果たしている。
 こういったストーリーが《組織のなかで》という一つのジャンルに括れるのは、組織や集団を動かす根源に狂気や自滅的なものがあることが多いという共通項があるからだ。〝Suicide is painless〟(自殺は苦しくない)と叫ぶ『M★A★S★Hマッシュ』のテーマソングは、戦争の狂気よりも群集心理の狂気を象徴している。なぜか人間というものは、ユニフォーム――軍服であろうと、ポロのロゴがポケットに着いた着心地のいいコットンシャツであろうと――を着ると、本来の自分らしさをなくしてしまうのだ。《組織のなかで》は、個人よりも集団を優先することの是非を描いている。これも原始人だってわかる系のジャンルだろう。集団に対する忠誠を誓えば、ときには常識を逸脱した行動をとったり、さらには自分の命すら捧げざるを得ないときもある。人間は大昔からずっとそうして生きているのだ。《組織のなかで》の登場人物の行動は、観客自身の行ないを映しているようなものなのだ。それくらいわかりやすく原始的だから、人気の高いジャンルなのだ。
 このジャンルのストーリーは、新しく組織に入ってきた人物(新人)の視点から語られることが多い。観客は組織に関して何も知らないという点で、この新人と同じ立場にある。たとえば『9時から5時まで』(80)のジェーン・フォンダや『アニマル・ハウス』(78)のトム・ハルスといった新人同様、観客も組織のしきたりや独特の言葉に馴染みがない。だから「この組織はどう機能しているのか?」という疑問をいだいた新人が、同じ疑問をいだく観客に説明することになる。こうして組織内の掟やしきたりがいかに重要かが明確になり、さらには組織の〈イカれた〉実態も次第に暴かれていくのである。
 要するに《組織のなかで》のストーリーは、〈俺とあいつらとどっちがイカれてるか?〉ということなのだ。集団のために自分を犠牲にすることがいかに狂気か……。『ゴッド・ファーザーPARTⅡ』(74)ラストのアル・パチーノの表情が象徴的だ。一族と〈伝統〉を守るため、ずっと自分を押し殺してきたのに、その結末は……。同じく象徴的なのは、『アメリカン・ビューティー』のケヴィン・スペイシーが真実を知るラストシーン、『カッコーの巣の上で』でジャック・ニコルソンがロボトミー手術を受けた後の表情だ。これらはすべて同じジャンルであり、観客に伝えたいメッセージは同じ。ただ、語り口や手法が違うだけだ。
 でも語り口や手法が違うのに、どの作品も成功しているのはなぜ?
 きちんとジャンルの原則に従っているからだ。
 《同じものだけど……ちがった奴》だからである。

 ストーリーにぴったりの主人公を加えると、アイデアやストーリーが本当に生きてきて、ログラインがふくらんでいく。それには主人公は次の条件を満たしているだろうか……。
 ◎設定された状況のなかで一番葛藤する
  ◎感情が変化するのに一番時間がかかる
  ◎楽しんでもらえる客層の幅が一番広い!
 三番目については、ついついやってしまう私の悪い癖がある。主人公を考えるとき、自分が四〇代なので観客も同世代のような気がして、私が魅力を感じる主人公は観客も魅力を感じると思い込んでしまうのだ。たとえば〈人生に多少嫌気がさしているが、まだ勇気と賢さを残す実存主義的な主人公〉。なんて魅力的な主人公なんだ! こんな主人公だったら、観客は喜んで映画館に来て……無言で出ていくだろう(本当にこんな主人公で映画が作れたら、フランス人は私のことを天才といって熱烈歓迎してくれるだろうね)。
 というわけで、私はすぐにティム・アレンやスティーヴ・マーティン、チェヴィー・チェイスが演じるような主人公を書きたくなってしまうのだ。でもすぐ現実を思い出す。ハリウッドがターゲットにしているのはあくまでも若者だ、と。スティーヴ・マーティンのような俳優は、アンサンブル作品やファミリー向け映画だったらOKだけど、主役としてはどうだろう? いや、ダメだ。難しいね。だからと言って、私がハリウッドの現実を変えられるわけでもない。じゃあ、どうするか……。実存主義的なジレンマに悩む主人公を一〇代の若者に変えてみたり、中年の危機を迎えた夫婦は二〇代の若い夫婦に変えてみたりする。映画館に足を運んでくれるのは、そういう世代なのだから。シネコンに足を運ぶお客さんが見たいのは、そういう映画なのだから。
 長いものには巻かれろって?
 とにかく登場人物の年齢設定は、私の弱点であり盲点である。ということは君の弱点にもなりうる。だからここでしっかり確認しておこう。私たちが相手にしているのは、誰もが楽しめるハイ・コンセプトな映画であり、国を超えた世界市場なのだ。だから自分の好みのタイプの主人公だったら、誰でも気に入るだろうなんて思いこんじゃいけない。以前、ある脚本家が脚本を売りに来たことがある。彼曰く、〈フリオ・イグレシアスの魅力が全開の〉最高の作品だそうだ――確かにそうなんだろう。でも公開初日に観客は映画館に来るだろうか?(かなり怪しいね)。だから何度も言うが、必ず赤の他人に自分のアイデアを話してみて、彼らの正直な反応を確認した方がいい。
 昔、親父がこんな話をしてくれたことがある。広告会社に勤めているときに、クライアントに日曜日のテレビ番組枠を買わないかと持ちかけたらしい。でもその大金持ちは結局しり込みして買わなかった。そのときの言い分はこうだった。「日曜日に家でテレビを見てる人間なんていないさ。みんな外でポロをやってるんだから」。
 やはり客観性は重要である。

 ログラインとは主人公のストーリーを簡潔に表現したものだ。主人公がどんな人物で、誰を相手に戦い、どんな動機を持つのかを一、二行でまとめたものだ。指針となるログラインを書くことはいい練習になるだけでなく、それを忠実に守ることはこれからストーリーを〈分解〉したり、実際に書いていくうえでとても重要なのだ。主人公と動機をしっかり押さえ、それから主人公を阻む悪役を押さえると、ストーリーに本当に必要なものが見えてくる。つまり、明確な主人公と悪役、はっきりした動機、最大の葛藤をログラインに数行で簡潔にまとめられれば、必ずうまくいく。あとはとにかく従うこと。脚本の書き始めから完成まで、いつでもログラインに沿っているかをチェックする。途中でもっといい表現を思いついたら、ログラインを書き直してもいい。とにかく〈誰についての映画か?〉をはずさなければ、途中で道を間違えることはない。構想から最後のフェードアウトに至るまで、ログラインは途中の計算ミスをダブルチェックするための大切な道具なのである。

 構成のしっかりした脚本では、冒頭から五分あたりで登場人物の誰か(たいていは主人公以外の人物)が問題を提起したり、テーマに関連したことを口にする(たいていは主人公に対して)。たとえば「よく考えてから願いをかけるのじゃぞ」とか、「奢れるものは久しからず」とか、「お金よりも大切なのは家族でしょ」といったセリフである。もしくはこれほどあからさまじゃなく、会話のなかの何気ないひと言として表現されることもある。主人公はこの時点ではその意味をはっきり理解していないが、やがてその言葉がとても重要な意味を持っていなことに気づくのである。
 これがテーマの提示である。
 よい脚本には必ず、脚本家の論点や主張がいろいろな形で提示されている。こんな人生ってどう思う? 君は賛成か、反対か? こんな行動、夢、目標には価値があるだろうか? 財産と幸福はどちらが大切か? 組織で優先されるべきは個人だろうか? まず最初にテーマが提示されるのだ。そして次に、テーマについての議論が展開される。主張に対する賛成意見、反対意見を吟味しながらさまざまな角度から問題をとらえたり、主張の是非を証明したりする。優秀な脚本はコメディーであれ、ドラマであれ、SFであれ、必ず〈何かについて〉主張している。しかも冒頭で! まず最初に自コメディーはっきりと表しているのだ!
 もし君の作品が〈何も〉主張していないとしたら、それはまずい。自分が言いたいこと、テーマは何なのか、よく考えよう。初稿が出来上がるまでテーマが曖昧だったりすることもあるが、よく考えて明確になったら、とにかく冒頭で主張しよう。私は必ず五ページ目で提示している。
 テーマは絶対に冒頭で。競売の最低額はそこで決まるのだ。
 テーマを宣言したら、次はそれを証明しようじゃないか。

 もう一つの記号><は、葛藤を表す。葛藤とは何か? シーンにたとえるならこんな感じだ。ライトがつき、部屋の両端にあるドアからそれぞれ人が出てきて、真ん中でぶつかる。二人とも、もう一方のドアに向かって進むという目的があるのだが、お互いの存在が邪魔になって前に進めない。これが葛藤だ。葛藤には物理的・肉体的な葛藤、言葉のうえでの葛藤もあるし、今にも漏れそう! トイレに行きたいのにいけないなんていう葛藤もあるが、とにかくどのシーンでも葛藤は最大でなきゃいけない。人間VS人間、人間VS自然、人間VS
社会といった、高校の国語の授業で習う基本的設定は、葛藤を考えるうえでいいヒントになるだろう。
 どのシーンでも、何が中心となる葛藤なのかを明確にしよう。誰がどんな問題を抱え、誰とぶつかっているのか? 各カードの><には誰と誰がぶつかり、なぜぶつかっているか(葛藤の原因)、そして最終的にどちらが勝つかを書いておこう。複数の人間や複数の原因が絡む場合には、当然葛藤も複雑になるし、シーンも複雑になる。だから一つのシーンには一つの葛藤でいい。一つで十分だ。葛藤が物理的なものか精神的なものか、問題は大きいか小さいかは別として、とにかく各シーンに一つの葛藤を盛り込むこと。どうしても葛藤がない場合は、そのシーンにふさわしい葛藤を作り出そう。
 なぜ葛藤が全てのシーンに必要なのか? なぜそれほど重要なのか? それは葛藤が原始的なもので(ほら、またこの言葉だ)、確実に観客の関心を引きつけるからだ。人間はもともと、葛藤している人間を見るのが好きなのだ。レスリングがあれだけの長寿番組になっているのは、人間同士が殺し合う(=生死をかける)という原始的な娯楽番組だからだ! どんな映画にも恋愛が描かれるのも、なんとかセックスしたいという根源的な葛藤に観客が魅力を感じるからだ! だから観客の関心を引きつけるのに、各シーンの根源的な葛藤は欠かせない。もし><が決まらないシーンがあったら、それはまだシーンとしては完成していない。だから……。
 葛藤を見つけるか、考え直してダメなら……カードを捨てよ。
 そんなカード、捨てても泣かなくていい。たかがカードなんだから。

 好感の持てない主人公は、明るいファミリー向け映画にだって登場することがある。もう何回か例に挙げたが、再び『アラジン』(92)をここでも取り上げてみよう。ディズニーはこの作品を煮詰めていく段階で、主人公があまり好感の持てない人物だという問題にぶち当たった。原作を読みなおしてみても、やはりアラジンはほめられた奴じゃない。わがままで怠け者。さらに悪いことに……こそ泥である! けれどもありがたいことに、ディズニーにはテリー・ロッシオとテッド・エリオットという名脚本家がいてくれた。私に言わせれば、ロッシオとエリオットはハリウッドで最高の現役脚本家だ(なのにほとんど無名! いったいどういうことだ。宣伝部は何をやっているんだ!?)。
 有能な二人はどうやってこの問題を処理したのか? そう、《危機一髪、猫を救え!》のルールに従ったのである。一億ドル超のスマッシュ・ヒットとなった『アラジン』の最初のシーンで観客が目にするのは、お腹をすかせたアラジンが食べ物を盗む姿だ。その後アラジンは、偃月刀を振り回す宮廷の護衛に追いかけられ、街中でさんざん逃げ回る(こうして逃げている間にストーリーの舞台や背景が簡潔に紹介されている。うまい手法だ)。やっと追っ手をまいて路地へと逃げ込んだアラジンは、早速盗んだパンを食べようとする。ところが目の前には同じくお腹をすかせた子供たちがいるじゃないか。するとアラジンはパンを彼らにあげるのだ。これで観客の心はアラジンと〈一緒〉になる。怠け者でこそ泥という原作のアラジンとは違うが、観客はこれで確実にアラジンを応援したい気持ちになる。彼のおかれたつらい立場を描くことによって、好感の持てない主人公にも観客が共感できるよう、ロッシオとエリオットが仕向けたからだ。だからこそ観客はアラジンを応援したくなり、勝ってもらいたいと思えるのである。
 肝心なのは、観客が主人公を好きになるような配慮をするということなのだ! 危険の迫った猫を助けるミエミエなシーンとか、道路を渡る老人を助けるわざとらしいシーンを入れろと言っているのではない。観客が主人公やストーリーに共感できるように配慮し、仕向けることが重要なのだ。ついつい主人公を応援したくなる状況を作って、見せなければいけないということだ。そんなこともしないで、自分の気に入ったキャラクター(たとえばララ・クロフトのような)だったら観客も気に入るのが当たり前なんて思い込むなんて、とんでもない。それは脚本家としてやるべきことをやってない。何の工夫もせず平気でいる映画もあるかもしれないが、とても優秀で良心的な脚本とは言えない。

《変化の軌道》とは、映画の登場人物はすべてストーリーのなかで変化するというルールだ。唯一変化しないのは悪役だけで、主人公やその仲間はみな大きく変化しなければいけない。
 まさにそのとおりだ。
 私はこの〈軌道〉という言葉が好きじゃない。映画会社の企画制作部のお偉方や、脚本術関係の著者がよく使う言葉だから。ただし、言わんとしていることは正しい(用語の好き嫌いは別として)。〈軌道〉とは、各登場人物の〈旅〉(これまたいかにも自己啓発っぽい響きの言葉だが)の始まりから中盤、結末に至るまで起こる〈変化〉のことである。彼らが変化したり、人生に影響を受けたりするほどの素晴らしいストーリーであれば、必ず観客の心は動く。実は太古の昔から、優れた物語にはいつでも登場人物全員の成長や変化が描かれているのである。
 それはなぜか?
 語る価値のあるトーリーであれば、当然そこに関わる人間はみな影響を受け、変化するはずだからだ。その際、登場人物の変化前の状態から変化後の姿まで(変化の軌道)をじっくり考えて描く必要がある。そういえば、『プリティ・ウーマン』(90)はこの良い例だ。登場人物全員の変化の軌道がはっきりと描かれている。リチャード・ギアも、ジュリア・ロバーツも、ローラ・サン・ジャコも――ホテルの支配人役のヘクター・エリゾンドまでも――このラブストーリーに関わり、心を動かされて、変化していく。唯一悪役のジェイソン・アレクサンダーだけが、何も学ばずに変化しないのである。
『プリティ・ウーマン』は丁寧に考え抜き、しかも《変化の軌道》のルールをきちんと守って作られたたヒット作だ。良い映画――笑って泣いて、しかも忘れられない映画、もう一度見たいと思う映画――はみなこのルールに則っている。
 それで? それで?
 ストーリーとは変化を語るものだと言ってもいい。変化できる能力がある人物かどうかで、人生の成功の如何が分かれる。善良な人間は、変化を前向きな力としてとらえ、喜んで受け入れることができる。一方、悪い人間は、変化を頑なに拒み、変われずに自業自得で死んだり、マンネリから抜け出せないままでいたりする。人生で成功するということは、変われるということなのだ。だからこそ、ストーリーだけでなく、世界中の主な宗教も変化という概念を基盤に成り立っている。変化は良いことなのだ。変化は再生や新たなスタートを約束するものだから。
 これが《変化の軌道》なのである。

《「やあ、元気?」「うん、元気だよ」》は、薄っぺらなセリフがいかに退屈で、スペースの無駄かを教えてくれるルールだ。平凡なセリフだったら、誰にだって言える。現実の世界でよく使うありきたりな言いかたを、そっくりそのまま使っているとしたら、それは登場人物を生き生きと描くための努力が足りない。だいたい会話が単調な場合、話している登場人物も薄っぺらなことが多い。
 魅力的な登場人物というのは、どこか人と違った話し方をするものだ。彼ら独自の言いかたがあり、たとえ日常的な話であっても、魅力を感じさせる言い方をする。登場人物のセリフというのは、内容だけでなく人となりを表すチャンスなのである。どんな話し方をするかで、登場人物の性格・過去・心の奥の本音・人生観などが表現できるのだ。
 登場人物が口を開くたびに、そういう特徴を表すチャンスだと思った方がいい。
 自分の書くセリフはそんなに退屈でも薄っぺらでもないよって思っている諸君、試しに私がマイク・チーダから教わった簡単なテストをしてごらん。まだ私が駆け出しの頃、マイクは脚本を読んでいきなりこう言った。「君の書いた登場人物は、話し方がみんな同じだな」。当然私は侮辱された気がして、正直ムカッときた。まだ勉強不足で未熟だったから、マイクの言うことが信じられなかったのだ。あんたに何が変わる!? ってね。
 この時マイクは、セリフが下手かどうかを診断するテストを教えてくれた。やり方はこうだ。脚本のどこか一ページを選んで、登場人物の名前を隠し、セリフを読んでみる。名前を隠しても、誰がしゃべっているかわかるだろうか? バリー&エンライトのマイクのオフィスで初めてこのテストをやったとき、私はびっくりした。くそっ! たしかにマイクの言うとおりだ。名前を隠すと登場人物が区別できなかった。しかももう一つ分かったことがある。どの登場人物もみな、私のしゃべり方になってる! よくできた脚本だったらこんなことはない。登場人物は各自ちがった、独特の話し方をするものだ。たとえそれが「やあ、元気?」「うん、元気」のような、ごくありふれた日常の会話だったとしても。

 何を隠そう、書き直し作業に十カ月もかかってしまった脚本がある。相棒のシェルドンと私は《金の羊毛》作品を書いていたが、納得の行く仕上がりになるまで六回も書き直したのである。どうしてそんなにかかったのか? それは……。《一歩戻って》のルールを破るという根本的な間違いをしていたからだ。そういうことはよくあるのだ――たとえプロでもね。
 チャプター4でもこの脚本について触れた。スパルタ式の学校を退学になった少年が家に帰ろうとしたが、家族はいつの間にか引っ越していたというストーリーだ。家族のもとに向かう冒険の途中で、少年はいろいろな人と出会い、彼らを助けたり人生を変えたりもする。じゃあ私たちはどこで間違ったのか? それはこの主人公――人助けをする気立てのいい少年――が最初から変化し終わっていたからだ。最初から最後までいい少年で、何も変わらなかった。つまり、そもそも旅など必要なかったのである。この問題を解決するのに、かなり長い時間がかかってしまった。主人公にとって旅が意味のあるものになるには、主人公の感情が変化する前の段階が必要だった。じゃあ、一歩戻ろう、いやもっと最初のところまで戻そう! って感じで一歩一歩戻していった。こんなこと今となっては当たり前なのに、当時はどう修正していいかわからず、途方にくれてしまった。ストーリーの前進によって主人公が変化していくためには、最初は主人公が変化する前の状態になっているなんて常識なのに……。当時は気づかなかったのだ。びっくりするだろうけど、こういう間違いは意外とあるのだ。
 脚本家であれば、自分の書いた主人公がどう変化するかわかっているし、成長していく過程であまり苦しめるようなことはしたくないと思う。だから辛い部分は避けがちになる。けれども子育てと同じように、それは無理な話だ。主人公はあらゆる困難や障害にぶつかって成長するものだし、嫌であろうとなかろうと、そういう道を歩ませなきゃいけない。シェルドンと私の場合も、主人公の少年が大好きになってしまい、陽気で前向きで特別な存在にすることばかり考え、あまり苦労させたくなかったんだ。問題集の問題をやらずに、巻末の答えを先に見てしまったようなものだ。最終地点に到達することを望むあまりに、到達までのストーリーが旅までなのだということを忘れてしまっていた。旅の途中で大きな問題にぶつかればぶつかるほど、最後の報いは大きいのに。
《一歩戻って》のルールは、主人公だけでなく、すべての登場人物に当てはまる。ストーリーの進行とともに全員が変化し成長するには、まずは彼らが変化する前の地点をしっかりと設定し、見せなければいけない。最後の結果ばかりを気にして、到達するまでのお楽しみを忘れちゃいけない。観客はみんな、その変化の過程を見たいのだから。
 映画というのは、観客にすべてを見せなければいけない。主人公の変化、成長、旅で経験することすべてを見せるのだ。それには主人公を最終地点からできるだけ遠くまで引き戻す。弓を強く引けば引くほど、矢は力強く最高の状態で長く飛んでいくのと同じだ。《一歩戻って》のルールはこの重要な原理を再確認させてくれるのである。
 登場人物の旅の過程が見えない、変化が見えないと思ったら……一歩ずつ戻って、すべてを観客に見せよう。観客はそれを見たがっているのだから。

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2025年04月04日

Posted by ブクログ

映画の都ハリウッドの脚本家が映画プロデューサーに脚本を読んでもらうための技術的な枠を解説している本でした。何より、面白い映画にするために、どのように物語を構築していけばよいのかが、いくつかの映画の事例を上げながら解説をしているので、読み物としても楽しめます。

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2025年03月12日

Posted by ブクログ

創作活動を復活したくなったので再読。
映画だけではなく、小説やシナリオなどさまざまな創作物に共通して言える物語の作り方が載っているためとても頼もしい一冊(作者が自信満々というか常にちょっとテンション高めなのは少し気になるところではあるが)。
脚本という点においてしたほうが良いこと、してはいけないことがハッキリと書かれているので創作を始めたての人やスランプに陥っている人ほどおすすめしたい本。

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2025年03月07日

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脚本を書くための本ではあるが
脚本を書かない人でも映画のストーリーのでき方や脚本家が映画を見る観客にどうゆう仕掛けをしているかがわかる本になっており誰でも楽しめる内容でした。
本の中では様々な有名な映画がでてきて、たくさんの映画を見比べたくなりました。
また本書に従うことで、自分でもおもしろい脚本が描けるような…
いや、描きたくなりました。

映画のような大作に関わらず短編やストーリーがあるものならこの本を読むことで何かしら参考になるかと思います。

また、本の内容と直接関係はないのですが本書ででてくる数々のルールに特徴的な名前がつけられており、各項目には内容が想像でき忘れないような名前をつける大切さが伺えました。

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2024年10月01日

Posted by ブクログ

なんか話の構成とかストーリーの作り方を知りたくて、ガストで初めて一気読みというのをした。メモとかしながら4時間くらいかかった気がする。

冒頭のログラインの説明が長くて、マジで大事なんだと学びつつ、ビートシートの説明あたりからめちゃくちゃ面白い。

そうそう、こういうのを知りたかったって感じ。
このビートシートを知ってから映画とかドラマを見ると「あ、ここでミッドポイントね」とか「はいはい、悩みのとき」みたいな感じで構成理解してるマンになれる。

あとはボードに付箋いっぱい貼っていって構成作りするヤツやってみたいな。部屋の壁一面使って。なんか誰かのブログでこの構成を考えるのが楽しすぎて毎日やってるって見てマジかよってなった。なにがそんなに面白いのか気になる。

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2024年06月07日

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・売れる脚本のコツ
→ 一行 (ログライン)でどんな映画か明確に答えられる。

ログラインに必要な4つの要素
① 皮肉 (つかみ)がある
② 映画の全体像が見える
→ 時間設定やいろいろな可能性を予想させることができる。
③ ターゲットの客層や製作費が明確かどうか
④ パンチの効いたタイトル
ストーリーを象徴するような言葉。

・ハイコンセプト=映画を見やすくすること


・ジャンル
→ 新しいジャンルを生み出そうとするのではなく、既存の同じジャンルの作品をふるいにかけ、その中からプロットに必要不可欠な要素を手に入れる。

① 家のなかのモンスタータイプ
→ 逃げ場のない場所でモンスターに襲われる。
ジュラシックパーク、ジョーズ

② 金の羊毛タイプ
→ 主人公はなにかを求めて旅に出る。

③ 魔法のランプタイプ
→ 「ーがあったらいいのに」という願望を叶える。
願いの代わりに天罰が下るパターンもある。

④ 難題に直面した平凡な奴タイプ
→ どこにでもいそうな奴が、とんでもない状況に巻き込まれる。

⑤ 人生の節目タイプ
→ つらい経験を通して主人公が成長する。解決策を見つける。

⑥ バディとの友情 (ラブストーリーも含む)タイプ
→ 最初はバディを嫌っているが、徐々に必要不可欠な存在になる。

⑦ なぜやったのか?タイプ
→ 人間の邪悪な性が暴かれる。

⑧ バカの勝利タイプ

⑨ 組織のなかでタイプ
→ 集団や組織、施設、ファミリーについて描く。組織の中で自分らしさを失うこともしばしば。

⑩ スーパーヒーロー
→ 超人的な力を持つ主人公がありきたりで平凡な状況に置かれ、苦悩する。


・主人公
→ 共感でき、学ぶことがあり、応援したくなり、最後に勝つ価値があり、シンプルな動機がありそれに納得がいく人物。

・save the catの法則
→ 主人公が置かれた状況に観客が最初から共感できるように気をつける。主人公が悪い奴の場合は敵役をさらに悪い奴にする。

・パイプ置きすぎの法則
→ 状況説明に多くの時間を割いてストーリーが進まない。

・黒人の獣医の法則
→ 設定や肩書きが多すぎる。

・氷山、遠すぎの法則
→ 出来事が起こるまでのスピードが遅い。テンポが遅い。

・変化の軌道の法則
→ 悪役を除いて全ての登場人物はストーリー中に成長する。

・マスコミ禁止の法則
→ 主人公のスーパーパワーや未確認物体が映画のマスコミによって報じられること。主人公と観客だけの秘密が秘密でなくなってしまい緊迫感がなくなる。


・脚本の再チェック
① 行動で見せるべきところをセリフで語っていないか?
② 登場人物は皆同じ話し方をしてはいないか?
③ 見た目の特徴ははっきりしているか?
④ 主人公の変化の軌道は早い段階から始まっているか?
⑤ 原始的な欲求か?

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2022年01月10日

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「売れる脚本のつくりかた」を細かに分析し、体系化した良書。
ビジネスへの応用可能性の高さはもちろん、単純にいち映画ファンとしても膝を打つ内容がふんだんに盛り込まれていて、タイトルによらず幅広い読者層におすすめな一冊。

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2021年08月28日

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ネタバレ

 売れる脚本には法則がある。芸術特に時間芸術と言われているものは一定の「型」が見られるが映画脚本においてもそれがあるということである。「三幕構成」が有名だが本書が提唱するのが「BS2(ブレイク・スナイダー・ビート・シート)」である。
 BS2は以下で構成されている。この構成がキモである。構成を作った人が「脚本家」として印税を手にできるのだそうだ。また全体を110ページとした場合は下記の長さはほぼ決まっており、業界の人はペラペラとめくって見るだけで良いものかどうなのかの判断ができる。ベンチマークの意味あいもある。なかなかシステマティックである。
1.オープニング・イメージ
2.テーマの提示
3.セットアップ
4.きっかけ
5.悩みのとき
6.第1ターニング・ポイント
7.サブプロット
8.お楽しみ
9.ミッド・ポイント
10.迫り来る悪い奴ら
11.すべてを失って
12.心の暗闇
13.第2ターニング・ポイント
14.フィナーレ
15.ファイナル・イメージ

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2021年07月16日

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ネタバレ

「脚本術」とあるが、規模こそ違えど、プレゼン資料や読書感想文にも活用できそう。脚本家だけでなく、ビジネスマンや学生も一読の価値あり。
全体的にシニカルな口調でさらっと読めるし、映画の名前もたくさん出てくるので、映画評論的な目線でも読めるかと。
各チャプターには練習問題があるし、後半は完全に脚本家向けと感じた。

以下参考になった箇所。
・ログラインを最初に考える
 →どんな映画なの?を簡潔に一行で表現
  皮肉やパンチが効いているか
  観客層が想定できるか
  実際に興味を持ってもらえるかテストする
・共感できる主人公であること
 主人公は最後には成長すること
・構成を考えてから描き始める
 →ブレイクスナイダービートシート
・ボードにシーンを書き出して全体を可視化する

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2021年02月03日

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めちゃくちゃ目新しいことが書かれているわけではないけれどぼんやり考えていたことがちゃんと体型立てて書かれていてとても助かる。

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2020年12月06日

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 シナリオに興味があるわけじゃない。
でも、魅力的に感じるタイトルだった。
 飛ぶように読める。
読みやすいかわりに、不思議と残らなかった。
 私がシナリオを描く人だったら、もっと響いたんだろうか。

 ちょっと残念。
 

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2020年05月16日

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映像関係で働いていた友だちと映画の話をしていたらこの本の名前が出てきて、今のハリウッド映画は基本的にほとんどがこの本の仕組み通りにできているという話を聞いたので、映画の仕組みとははたして、と思い読んでみた脚本術の本。こういう本は読んだことがなかったのですごく興味深く読めたし、なるほど思い起こせばそういう感じにできてるかもと思ったり。これを頭に入れたうえで、ますます映画を見たくなる。

以下、要点抜粋

どんな映画なのか、一行で説明できるようにする。

一行で読者の心をつかめないようなストーリーは聞くまでもない。この一行がログラインと言われる。

良いログラインには4つの共通項がある。

まずは、皮肉があるか。次に映画の全体像が見えるか→読み手の想像力をかき立て興奮できる内容か。 その次に、ターゲットや客層が明確か。 そして最後にインパクトのあるタイトルか。良いタイトルに不可欠な要素はストーリーを象徴するような言葉かどうか。

どんな映画なのという質問に答えるには、なにについての映画か、誰のための映画かの明確化と、作品の雰囲気、展開の可能性、登場人物のジレンマ、登場人物のタイプについても簡潔で説得力のある説明が出来ないとだめ。

脚本を作るとき、どんな映画に一番似ているかを考える。

映画の脚本的なジャンルは10個。

1、家の中のモンスター
→モンスター、家(制限された空間)、モンスターを倒したい人間、これが揃っていると原始人にでもわかる話になる。

2、金の羊毛
→主人公が何かを求めて旅に出るが、最終的に発見するのは別のもの=自分自身というストーリー。 絶対に欠かせないのは、主人公が旅の途中で人々と出会いいろんな経験をするということ。それが主人公を成長させる要素。重要なのは物語で起きる出来事ではなく、それが主人公にとってどういう意味を持つか。ストーリーは出来事で動くのではなく、出来事から主人公が何を学ぶかで動く。

3、魔法のランプ
→昔から人間は〜があったらいいのに!をつぶやいている。願いの代わりに呪いが叶うパターンもある。主人公はひどい扱いを受けていることが多く、だからこそ観客は主人公の願いが叶うことを祈る。けれど観客の性として、成功し続け始めるとそれが鼻に付いてくるので、最終的には普通の人間でいるのが一番だと気づく。そして最後には一番大切なことを道徳に適した行いをすることという教訓が用意されている。

4、難題に直面した平凡なやつ
→どこにでもいそうなやつが、とんでもない状況に巻き込まれる。主人公が観客と同じ普通の人間であることと、勇気を振り絞って解決しなければいけない問題に直面したということ。

5、人生の節目
→モンスターが主人公に忍びより、主人公はその正体に徐々に気づき、受け入れることによって最後は勝利を収める。

6、バディとの友情
→最初はお互いを嫌っているが、旅をしていくうちに相手の存在が必要で二人揃って初めて完結した1つになれるとわかってくる。そうは気づいてもコイツがいなきゃダメなんだとかまだ受け入れられない。葛藤が生じる。結末近くになってくると連れ添ってきたバディと喧嘩になり、あばよ!となる。ただしこれは本当の別れではなく、お互いなくしては生きていけないことを再確認するためのきっかけ。最後はふたりで覚悟を決める。

7、なぜやったか
→観客の心の闇へと連れて行き、スクリーン上の探偵が観客の代わりに謎を解くかに見えるが真相を突き止めてるのは観客自身だということだ。観客が集めた情報をもとに自分でその真相を明らかにして意外な結果に衝撃を受ける。俺たち人間はこんなに邪悪なのかと問いかける。

8、バカの勝利
→負け犬のバカに対してバカが抵抗する大きな権力が存在する。アウトサイダーが勝利することが醍醐味。

9、組織の中で
→主人公は自分の組織に誇りを持つ一方で組織の一員として生きるための自分らしさを失うという問題を抱えている。個人よりも集団を優先することの是非を描いたりもする。新しく組織に入ってきた新人の視点で語られることが多い。

10、スーパーヒーロー
→人とは違うという事はどんな事か、独創的な考え方や素晴らしい能力を妬む凡人と向き合わなければならないとはどういうことかを観客が共感できるように描く。誤解されたり周りから理解されないヒーローの苦しみに共感している。

主人公を含んだ完璧なログラインを書くために。
1、主人公を描写する的確な形容詞
2、悪役を描写する的確な形容詞
3、人間だったら誰でも共感する原始的な目的

主人公は
1、設定された状況の中で一番葛藤する。
2、感情が変化するのに1番時間がかかる。
3、楽しんでもらえる客層の幅が一番広い。

主人公には原始的な動機があるかが大事。
→動機は原始的でなければいけない。人間は本能的で原始的なものに心を動かされる。根本的な欲求は万人の心を掴む。

特定の俳優を想像して脚本を書くのではなく、典型的な役柄を考えながら書くと配役はうまく行く。

主人公は最大の葛藤をし、
感情面での変化が最も大きく、さらに誰もが応援したくなる動機を持っている。

脚本を分解すると15個に分かれる。
オープニングイメージ=映画の第一印象でファイナルイメージと対になるもの。
テーマの提示=冒頭5分で登場人物の誰かが問題提起したりテーマに関連したことを口にする。
セットアップ=脚本の最初の10ページで冒頭の10分。登場人物の特徴や後に起こる問題の原因となる行動も提示され、主人公が最後に勝つためにはなぜ、どのように変化すべきなのかが示される。主人公に必要なものや欠けている部分がある場合もここで見せる。
きっかけ=110ページの脚本なら12ページに持ってくる。
悩みのとき=脚本の12ページから15ページに来る部分。何かしらの疑問を抱く。
第一ターニングポイント=25ページで起こる。1幕と2幕の変わり目。古い世界を出て、正反対の世界に進む瞬間。主人公ははっきりと明確な意志を持って次の段階に進まなければいけない。
サブプロット=30ページから始まる。観客にとっては息抜き。ラブストーリーであることが多い。
お楽しみ=お約束部分で一番おいしい部分。
ミッドポイント=いきなり危険度がアップする。対を成すのはすべてを失って。
迫りくる悪い奴ら
すべてを失って=ミッドポイントの絶好調とは逆の絶不調状態であるが、それはみせかけの絶不調で最悪の状態は一次的なものではあるが死の気配が漂い、主人公の人生はめちゃめちゃになったように見える。
心の闇=徹底的に打ちのめされたあとの悟りのシーン
第二ターニングポイント=解決策が見つかる。
ファイナル=教訓を学び、主人公の直すべき点が直り、メインプロットもサブプロットも主人公が勝利して終わる。古い世界は新しい世界へと変わり、新たな秩序が生まれる。主人公が勝利しただけではなく、世界が変わる。
ファイナルイメージ=オープニングイメージと対を成す。

観客が主人公を好きになるように配慮する。=セイブザキャット
話し詰めすぎはダメ。アイディアを積み重ねてもろくな事はない。シンプルなほど良い。アイディアは一回に1つだけ。
危機は今そこにないと駄目。
映画の登場人物はすべてストーリーの中で変化する。唯一変化しないのは悪役だけ。
ストーリーは速度や複雑さを増しながらクライマックスに到達しなければいけない。
肝心なことは観客を感情的にヘトヘトにさせること。あらゆる感情を働かせ、経験させる。

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2020年05月06日

Posted by ブクログ

脚本は脚本でもだいぶ映画寄り。
1本の映画がどのような要素から生まれているのか種明かしをしてくれる。
あのシーンはそういう意味だったのか!という気づきがいっぱい。
純粋に映画をただ楽しみたい人は読まない方がいいかも。

具体例で挙げられている映画をほとんど知らなくて教養の浅さを実感した、まとめてリストアップして少しずつ鑑賞しようと思う。

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2020年03月12日

Posted by ブクログ

前田裕二さんのおすすめの本
全ての脚本に通じる普遍の原則が網羅されている
面白い物語の型を知りたい人は一読の価値あり

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2023年12月26日

Posted by ブクログ

脚本家を目指す人にとっては、バイブルになり得る本でしょう。

シナリオをどのように組み立てると、魅力的な作品になるか、具体的な手順も含めて書かれています。

個人的に映画は、シナリオよりも映像と思っているので、個人的な好みで言えば、当てはまらないところもあります。

しかし、「売れる」という観点で言えば、説得力のある内容なのではないでしょうか。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

売れる脚本には15のビート(イベント、物語の移り変わり)があり、これを細かく説明しているのが本書の目的です。

人を惹きつける者には必ずストーリーと変化があることに気づきました。目的は主人公の求めるものを手にすることや問題を解決することですが、それに追い付くまでにどのようにストーリーを展開(変化)させていくのか、読者に未知の体験をしてもらうかが大切だと感じました。
例えば、お笑いでいうと、オチが読めないギャップに笑いが起こったり、どれだけストーリーを展開させても受け手が求めているキラーフレーズに落ち着くことで笑いが起こったりします。ただ、ストレートに淡々と進めるのではなく、進めるまでに変化をどう楽しませるかということが大切だと感じました。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

現代にも通用する脚本術の根幹が学べた。
ただ、有名どころの映画について幅広い知見がないと例が退屈。もちろん、脚本家志望ならば前提なのだろうが。
2010年初版発行ということで、売り出し方などは古さが残る。

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2024年03月13日

Posted by ブクログ

面白かった!
映画のストーリーから固有名詞を省き、抽象化してプロットだけを抜き出すと様々な映画の共通点がみつかる。
「読んでいない本について堂々と語る方法/ピエール・バイヤール著」でもあるように、批評においてはその本が他の本との関係性における立ち位置を知ることが大事なのだから、ストーリーを抽象化することはまさに批評につながるのだ

ダイ・ハードとシンドラーのリストが同じプロットだなんてなぁ。

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2021年10月14日

Posted by ブクログ

・ログインに皮肉が含まれているか。

・「なぜやったのか」を深堀りして作品にする。

・原始的な動機があること。

・スピルバーグ監督はマスコミを入れなかった。
ETは家族だけの秘密にした。
そうすることで視聴者との共感を勝ち得た。

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2020年02月02日

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