【感想・ネタバレ】捨て猫という名前の猫 柚木草平シリーズ9のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

樋口有介は、ずいぶん前。駅前の小さな本屋で、最初に『ぼくと、ぼくらの夏』、翌日に『風少女』を買って以来のファンだ。
ジュブナイルというか、青春の物語というか。ジュブナイルに毛が生えたみたいなw感じなところがいいんだと思う。
確か、2000年代の初め頃だったか? 中公文庫からポツポツ出てた頃も、本屋で見かける度買って読んでいた。
ただ、創元文庫の柚木草平シリーズの『彼女はたぶん魔法を使う』を見た時は、「あぁまだ樋口有介って書いてたんだなー」と妙に懐かしくw感じた記憶があるから、
その頃は全く読まない作家になっていたんだろう。

その後、その『彼女はたぶん魔法を使う』と『初恋よ、さよならのキスをしよう』を読んだのは何年前だったっけ?
いつ頃読んだか皆目見当がつかないくらいだから、内容もほとんど憶えてなくて、ただ、柚木草平シリーズはイマイチだなぁーという印象だった。
そう、なんかこう、物語の広がりが今一つ物足りない、みたいな感じ?
今一つ物足りないから、読み終わって、今一つ食い足りないんだよなぁー、みたいなw
まぁ、それは、樋口有介=青春の物語というイメージなのに、主人公が中年男という時点で、そもそも食い足りないみたいな、読者側の勝手な思い込みも大きんだけどさw

とはいえ、樋口有介だって年をとるわけで、ていうか、もういい加減いい年(知らないけどw)なわけだ。
いつまでも青春の物語を書くわけにもいかないだろうし。
ていうか、この本のあとがきで著者は「若くて綺麗な女性を嫌いな男がいたら、それはただのビョーキなんですから」と書いているが、著者のその「若くて」って、中一も範囲なの!?と、かなり引いた(爆)

ま、それはともかく。
いや、あまり、ともかくでもない気もするのだが、それはとりあえず横に置くとして、この『捨て猫という名前の猫』は、食いでがあるところがいいんだと思うた。
よくよく考えると、かなりエゲツナイ話なんだけど、主人公とその周りのアホバカえぇかっこしぃーな会話がそれを中和するから、読んでいて気分が重くならないのもいい。
というか、そのエゲツナイ事件や出来事も、過去の出来事や事件のその関係者の哀しみや葛藤、後悔、諦念、身勝手、執念等々、様々な思いが絡み合うことでそれが起きたというところに、青春にはない、それなりに生きた人ならではの哀感みたいなものを感じるのだろう。
最後の方で、登場人物の一人が語りで手である柚木に「私のことを、そんなにロマンチストだと思うの」という場面があるが、そこがまさにそれで。
それなりに生きている人なら、誰しも大なり小なり抱えていくことになる負の側面を情感で化粧してやることで、読者の心を優しさの方に振れさせているように思った。
そこに横溝正史っぽさを感じて、いいと思うのだろう。

そんな反面、真ん中くらいである登場人物が言う、「あの業界ってね、モデルもカメラマンもクライアントもコーディネーターも、全員がバカなの。二年くらいしかやらなかったけど、脳が半分くらい、溶けてしまったような気がする」という辛辣なセリフには笑った。
いや、その「あの業界」が本当にそうなのかは知らないが。
でも、今って、本当にそういう業界が多いよなぁーみたいな?w
ていうか、現在の状況を見ていると、そのことは、自分も含めて誰もが頭の隅において置いとかないとヤバイよね、なんてw
たぶん、渦中に入り込んじゃったら、目の前に見えるものすら見えなくなってしまうってことなんだろうなぁー。

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2020年05月06日

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