【感想・ネタバレ】常識として知っておきたい 世界の三大宗教のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

仏教、キリスト教、イスラム教を取り上げている。本書を読んで、強く感じたことは次の2点である。
そのひとつは、宗教というのは、より良く生き、より良く死ぬための先人達の知恵の集積であると思っているが、その宗教を、日本人はいかに簡略化し形や中身をを変えてきたか、ということである。8万4千もあるというブッダの教え、あるいは3千あるといわれる仏教の経典の内容は、一般の日本人は知らない。しかも、例えば浄土真宗では「戒律を守らなくても極楽へ行ける」「阿弥陀仏の力を信じるだけで救われる」と説く。同じ浄土系の時宗では「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで極楽往生できるという。さらに真言宗は(秘密の教義や儀礼が師から弟子へ口伝によって伝授さる神秘的な宗教であるにも拘らず)「遺骨の一部を高野山に納めれば間違いなく浄土へ行ける」と説いたという。このような日本の仏教は、キリスト教や、イスラム教と比較してみると「果たして宗教なのか」とさえ思ってしまう。このあたりの日本人の宗教観については、芥川龍之介の『神々の微笑』を読んでも面白い。
もうひとつは、イスラム教に対 する偏見のない理解が必要だ、ということである。イスラム教は、明治時代になってから、キリスト教国を通して日本に伝わっている。つまり、敵対的な視点から理解している可能性が高い。本書によると「イスラム教徒は、キリスト教徒を神から経典を授かった人達として仲間として扱っており、敵とはしてこなかった」という。さらに、他の宗教と違って「科学的な態度を貫いている」、「民族、国籍、性別、社会的地位に関係なく、全ての人に自人慈愛を与えてくれる」宗教だという。イスラム原理主義運動については、「暴力とは無縁のイスラム社会内部での自浄を求める運動である。イスラム教徒以外の人々に攻撃を与えるような考え方は、そこにはない」という。しかし、「イスラム教には、弱者救済、平等の思想」が強いがために、多くの貧困者を生み出した某自由主義の国に対する敵対心が生じたのだろう。イスラム教は、もちろんテロを正当化しない。
いずれにしても、グローバル社会の中では、国際社会の根底を形作っている宗教をできるだけ誤解なく理解することが大切だ。そして、日本文化を形作った、神道、仏教について、いちど振り返ることは、日本人としてのアイデンティティ―を確立する上で必要なことだ。これらの意味でも、本書が有益であることは間違いない。

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2017年05月02日

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