あらすじ
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【脱炭素だけじゃない! 未来を拓くマルチ燃料の基礎知識】
トヨタ自動車がガソリン車に代わる脱炭素素車として水素エンジン車を開発し、自動車レースに出場したことで、燃料としての水素が脚光を浴びました。水素が注目されるのは、カーボン・ニュートラルであることのみが要因ではありません。「クリーン・エネルギー」として価値があるだけでなく、さまざまな形態のパワーを発出できるポテンシャルの高いエネルギー源です。今後、核融合発電を含め、水素エネルギーの利用がますます広がっていくことが予想されています。本書はこうした状況を踏まえ、水素エネルギーの基礎的な知識をすべて網羅し、わかりやすくまとめた書籍です。
■目次
1章 水素の基本的な性質
──1-1 奇跡のエネルギーキャリア
──1-2 宇宙で「いちばん」の元素
──1-3 核子を構成する素粒子
──1-4 水素の三態
──1-5 原子核と電子とイオン
──1-6 水素の化学結合
──1-7 水素結合3
──1-8 水素イオンの正体3
──1-9 マイナス電荷を持つ水素陰イオン
──1-10 水素の同位体
──1-11 オルト水素とパラ水素4
──1-12 水素の工業利用4
2章 水素の燃焼エネルギー
──2-1 水素の燃焼による熱エネルギー
──2-2 水素はどれほど燃えやすいか
──2-3 水素の爆発
──2-4 拡散係数と消炎距離
──2-5 水素はなぜこれまで燃やされてこなかったのか
──2-6 水素バーナー
──2-7 水素ボイラーの安全対策
──2-8 水素エンジン車の開発史
──2-9 水素レシプロエンジン
──2-10 水素ロータリーエンジン
──2-11 ハイブリッド水素自動車82
──2-12 水素でつくるe-fuel
──2-13 水素火力発電① 汽力と内燃力
──2-14 水素火力発電② コンバインドサイクル
──2-15 H-ⅡAロケットは水素で飛ぶ
3章 水素イオンが運ぶ電気エネルギー
──3-1 乾電池で理解する電池の原理
──3-2 鉛蓄電池で水素イオンが駆け回る
──3-3 ニッケル水素電池
──3-4 燃料電池の開発史
──3-5 水の電気分解と燃料電池の発電原理
──3-6 燃料電池の種類① 固体高分子形
──3-7 燃料電池の種類② リン酸形とアルカリ形
──3-8 燃料電池の種類③ 溶融炭酸塩形と固体酸化物形
──3-9 燃料電池自動車(FCV)
──3-10 家庭用燃料電池システム
4章 核融合の燃料は水素の同位体
──4-1 核分裂と核融合
──4-2 太陽とITER
──4-3 核融合の燃料と反応
──4-4 核融合の条件と質量欠損
──4-5 プラズマの閉じ込めと加熱
──4-6 レーザー核融合
──4-7 実用化先行の量子水素エネルギー
5章 水素の製造と貯蔵・輸送
──5-1 水素の製造① 副生水素
──5-2 水素の製造② 炭化水素から水素を取り出す
──5-3 水素の製造③ 水の電気分解
──5-4 水素の製造④ バイオマスから水素をつくる
──5-5 水素の製造⑤ 原子炉の熱とISプロセス
──5-6 水素の製造⑥ 光触媒と人工光合成
──5-7 水素の貯蔵と輸送① 高圧ガスか液体か
──5-8 水素の貯蔵と輸送② 水素吸蔵合金
──5-9 水素の貯蔵と輸送③ 液体水素化物
──5-10 水素の貯蔵と輸送④ 水素ステーションの整備
■著者プロフィール
白石拓:1959年、愛媛県生まれ。京都大学工学部卒。サイエンスライター。弘前大学ラボバス事業(文科省後援)に参加、「弘前大学教育力向上プロジェクト」講師(09 ~ 15年)。主な著書は、『ノーベル賞理論! 図解「素粒子」入門』(2009年 宝島社刊)、『透明人間になる方法 スーパーテクノロジーに挑む』(2012年 PHP研究所刊)、『「単位」のしくみと基礎知識』(2019年 日刊工業新聞社刊)、『最新 二次電池が一番わかる』(2020年技術評論社刊)、『きちんと知りたい! モータの原理としくみの基礎知識』(2021年 日刊工業新聞社刊)ほか多数。
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Posted by ブクログ
専門性が高いし、範囲も広いので初心者向けではない部分も多いと思うが、解説が詳しくて深い。水素について、素粒子レベルからスタートし、自動車など関連分野の技術についても図解をしてくれる。化学を履修しなかった人は、難しい箇所は読み飛ばしながらでも良いと思う。それでも十分有益だ。
ー 金属水素の生成が難しいのは400万気圧以上のとてつもなく巨大な圧力で水素を圧縮する必要があるからですが、いったん金属になった水素は常温常圧でももとに戻らないとされています。金属水素はロケット燃料や水素の貯蔵にも利用できると考えられています。
ー 常温の水素ではオルト水素とパラ水素の存在比は約3:1で、これをノルマル水素といいますが、温度が低くなるにつれて低エネルギーのパラ水素の存在比が高まります。このことは水素を燃料にしたときの性能には影響しませんが、水素を液化するときに重大な問題になります
ー MRI の原理は、磁気共鳴という現象をもとにしています。人体の60~70%は水からできていますが、人体に強力な磁場をかけると水素原子核のスピンの向きがそろいます。そこに特定の周波数の電磁波を照射すると、電磁波のエネルギーが吸収されてスピンの向きがいっせいに傾き、これを磁気共鳴といいます。そして電磁波の照射を止めると、スピンの向きがもとに戻るのですが、戻る速さが臓器や組織、病変部によって異なるため、放出される電磁波に差が生じ、その情報をコンピュータで処理し映像化するのです。
水素は決して新エネルギーではないという。今までも燃料とされてきていて、その例の1つが副生水素。副生水素とは目的生産するのではなく、別の製品をつくるときに副次的に生じる水素のこと。たとえば鉄鋼や化学製品の製造過程で水素が生成される。こうした水素は外部に流通せず、主に工場内で燃料として消費されてきた。
また、欧米諸国を中心に19世紀初期から水素ガスが都市ガスとして利用されていたらしい。実際に燃やされていたのは石炭からつくられた石炭ガスで、主成分は水素。
知らない事だらけ。タメになる本。
Posted by ブクログ
原子数では、宇宙には水素93.4%、ヘリウム6.5%。宇宙は水素とヘリウムでできている。
水素は単独では存在しない。分離することが一手間かかる。
夢の金属水素=金属結合で結びつき電気を通す。超伝導やロケット燃料、水素の貯蔵にも利用できる。400万気圧以上の圧力を必要とする。
水素結合=水は固体の方が大きい理由。氷は水分子が正4面体結合をしていて、スキマが大きいから。
水素の同位体=中性子が1個増えた重水素と2個増えた三重水素(トリチウム)がある。トリチウムは放射性同位体で、β崩壊で3ヘリウムになる。重水素とトリチウムは核融合の燃料になる。
重水素と酸素が結合してできた重水は、核分裂の中性子の速度を下げる減速材に使われる重水炉がある。日本は軽水を使う軽水炉だけ。
水素は可燃性で燃焼速度が速い。単位質量辺りの熱量は高いが、密度は小さいため、単位体積当たりは小さい。かさばる燃料。
活性化エネルギー=燃焼開始に必要なエネルギー。この山を越えないと炎症が始まらない。最初に着火するなど熱を加える必要がある。
輻射率が小さい=電磁波による電熱が小さい。機器にとって安全。
水素はガソリンよりも発火点が小さいが、最小着火エネルギーが小さいので、危険性がある。活性化エネルギーと似ている。
爆発は燃焼の一種。水素は燃焼速度が速いため、爆発的に燃焼する。
水素を利用するにはお金がかかる。水素は金属ないに侵入して脆くする水素脆性という性質がある。爆発しやすい、は誤解。ヒンデンブルグ号の火災は、水素ガスが直接の原因ではなかった。
福島原発の水素爆発は、ジルコミウムが水蒸気と反応して水素ガスが発生した。
副生水素(鉄鋼や化学製品をつくるときにできる水素)は既に燃料として使われている。
昔の都市ガスは石炭ガスで、主成分は水素。
昔の舞台照明は、水素バーナーで参加カルシウムを高温加熱していた。2400度から強烈な白色光を放つ。
東京オリンピックの聖火台は水素ガスバーナー。
水素バーナーは煤を発生しない。温度が高いためNOXを発生させる=サーマルNOX(高温のため空気中の酸素と窒素が化合する)。
水素エンジン車は水素を燃やすエンジン。ガソリンエンジンと同じ仕組み。水素は燃焼速度が速いため、ロータリーエンジンと相性がいい。マツダのRX-8ハイドロジェンREは、発電用に水素ロータリーエンジンを使ったモノ。
e-fuel=グリーン水素を使った合成燃料。水素と二酸化炭素を化合させたもの。燃やすときには二酸化炭素が出るが製造時に使っているのでカーボンニュートラル。
H-ⅡAは、水素の液体燃料を使う。イプシロンは固体燃料。
電池のロングセラーは鉛蓄電池。自動車用バッテリー。
ニッケル水素電池はリチウムイオン電池についで人気がある二次電池。
燃料電池は、燃料と酸化剤があれば電気を作り続けられる。排出ガスは水だけ。宇宙船内で引用にできる。
水の電気分解の逆反応。固体高分子型、リン酸型、アルカリ型、などいくつかある。
燃料電池車は充填が速く航続距離が長い。
エネファームは、都市ガスやLPガスから水素を作り発電する。燃料電池の排熱を利用してコジェネレーションを行う。
地上に太陽を作るITER計画。太陽の核融合と葉少し違う。重水素と三重水素を使う。中性子がないと核融合が起きにくい。
レーザー核融合。
常温核融合と呼ばれるが、単純な核融合ではない。メカニズムはわかっていないが、過剰熱は確認されている。量子水素エネルギーと呼んでいる。三浦工業で発売予定。
製鉄所ではコークス、高炉、転炉などで発生するガス二水素が含まれている。これを精製して出荷している。
石炭を粉砕して高温で加熱すると石炭ガスができて、これを精製すると水素になる。
水の電気分解は昔からある。
微生物の発酵を利用する。
光合成微生物を利用する。
バイオマスを超臨界水でガス化する。
高温ガス炉という次世代原子炉で水素製造する。
光触媒で水分解する。人工光合成の可能性もある。
高圧ガスタンクで貯蔵する。鉄鋼などのタンク材料に浸透する減少(水素脆化)を防ぐ必要がある。
液化水素で保存する。体積が800分の1になる。極低温にする必要がある。
水素ガスをパイプラインで送る方法もある。HARUMIFLAGではパイプラインで送る。10気圧以下であれば水素脆化がおきない。
水素貯蔵合金で貯蔵する方法。
有機ハイドライド、アンモニア、ギ酸で運ぶ方法。
Posted by ブクログ
水素
賢者の燈。 錬金術師の 亜鉛と酸で燃える気体。
エネルギーキャリア:熱、運動、核融合 電気 燃焼しても水しか出さない
宇宙で最初に生まれ いちばん多い
質量で71%、数で93% ヘリウム+水素 98.1%、99.9% ダークマターその5倍
化合物として存在 自然から直接採取できない二次エネルギー コスト高
最小着火エネルギー ガソリンの1/10 広い燃焼範囲
高い燃焼速度ガソリンの8倍 爆発しやすい
水素ロータリーエンジン
圧縮空気に水素ガス噴射
燃焼室が移動し温度低下しNOx抑え バルブなく異常燃焼防ぐ
水素レシプロエンジン
理論空燃比が高くパワー不足→ターボ、ノッキング→リーンバーン
e-fuel グリーン水素を用いた合成燃料(水素+CO2) コスト高
液体燃料ロケット H-ⅡA/B/3 液体水素燃料
金属水素
水素原子の金属結合 常温で超電導 400万気圧以上で水素を圧縮 検証段階
太陽の核融合
水素 約半分を消費、その後より重い原子の核融合へ 2000億気圧 1600万℃
ITER 国際熱核融合実験炉 2025年運転開始
1億℃ 重水素+三重水素
プラズマの磁場閉じ込めや レーザー(慣性閉じ込め)核融合