【感想・ネタバレ】コロナ漂流録 2022銃弾の行方【電子特典付き】のレビュー

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Posted by ブクログ

2022年6月~2022年12月までの話。
今は2024年4月だから、1年半程前の様子だ。
ちょうど読もうとしたタイミングで文庫化された。
解説が鈴木エイトさん。
話題がコロナから別の方向にそれている。

ハチャメチャな政府のコロナ対応をテーマに執筆を開始した本コロナシリーズだが、
五輪利権や奉一教会問題が明るみに出て、コロナ対応の不手際よりも自保党批判の色合いが濃くなっている。
この3作目では、浪速万博利権に焦点を当てて浪速白虎党にも苦言を呈している。

「この物語はフィクションです」が、呆れてものが言えない物語です。

本書の内容がヒントになって、私が知らなかった事実を知ることになった。

2024年4月の今、連日ニュースで小林製薬の「機能性表示食品」である「紅麹サプリ」の健康被害問題が取り上げられている。

そんなこともあり、本書で「機能性表示食品」の話題がひつこく繰り返されているのが気になった。
理由は読んで納得だった。
各国でコロナワクチン開発が開始された時、日本政府も国産ワクチンを作るべく大阪の製薬ベンチャー「アンジェス」に巨額の支援金を出した。
この「アンジェス」という会社を作ったのは、森下竜一なる人物。
森下は安倍のゴルフ仲間でもあり、安倍案件だった「機能性表示食品の導入」に尽力した人物だ。

「機能性表示食品制度」は「アベノミクスの規制緩和による経済成長戦略」の一つで、国会決議でなく閣議決定で作られた。
国の審査を経ずに事業者の届け出だけで認定される危険な制度であったが、企業の利益を最優先し国民の健康よりも経済を重視したのだ。

100億円近い支援を受けた「アンジェス」は、肝心のコロナワクチンは作れず、頃合いを見て撤退を表明するも責任は不問だった。
それどころか、森下氏は大阪万博の総合プロデューサーを務めることになる。
参加企業の選定の権限を得たということだ。
「機能性表示食品」利権も得ている森下と、森下を援護する大阪維新の会が万博を利用して行うことを監視せよというメッセージが伝わって来る。

大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」と国民の健康を前面に打ち出している。
万博では大阪府主導で『大阪ヘルスケアパビリオン』が計画され、これに小林製薬は「プレミアムパートナー」として協賛している。
ニュースでは話題にしていないが、奇しくも森下と大阪維新の会にとって小林製薬問題はタイミングの悪い時期に起こっているのだ。


本書では、自民党の統一教会問題が出てくる。
国葬の話では、「国葬」ではなく「国葬儀」と言い直していたが、参列者に発送した整理券には「国葬議」(儀でなく議)と印刷されていたらしい。
当時閣議決定で決めてしまった「国葬」の実施判断には「一定のルールを設けることを目指す」と言っていたが、今まで何もなされていない。

桜を見る会に反社の人物を呼んでいたことを指摘されると、すぐさま反社の定義を閣議決定で変えたが、後に統一教会の幹部も招待していたことがわかった。

五輪汚職の話は、政治家よりも暴利を貪った企業を非難していたが、国民が驚いたのは汚職の事実ではなく、「いつもなら黙認する東京地検が動いた」ことだと本質を突いている。

裏金問題とか統一教会問題など、陰でこそこそと選挙対策ばかりしている政党に国民を守るコロナ対策などできるわけなかった。
コロナワクチンの効能の話も出てくるが、コロナ自体やワクチンの副反応など調査が不十分で確かな情報がないようだ。
コロナワクチンに関しては、より真実に近いと思われるデータに基づいた正しい見解を選別する必要があるが難しそうだ。

この海堂さんのコロナ3部作を読んで、コロナ禍での社会の様子を再確認できた。
小説では現実と違って、「バカな人」に「バカ」と平気で言えるところがいい。

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2024年04月06日

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