あらすじ
累計1080万部突破
『チーム・バチスタの栄光』シリーズ
厚労省の変人役人 vs 中抜きハイエナ!?
コロナ三部作堂々の完結!
「コロナ三部作は、現実の事象をリンクさせつつフィクションでしかできないことをやってのけた」
鈴木エイト(ジャーナリスト・作家)
(あらすじ)
2022年7月、新型コロナウイルスの新規感染者数は1日10万人を超えていた。その頃、東城大学医学部付属病院のホスピス病棟とコロナ病棟の責任者を兼務する田口公平は、医師のワークライフバランスを主張し、病棟に「効果性表示食品」を導入しようとする新任の中堅医師・洲崎洋平に手を焼いていた。田口は問題解決のための禁断の一手として、厚生労働省の白鳥圭輔を東城大に召喚するが……。
(著者プロフィール)
海堂尊
1961年、千葉県生まれ。作家、医師。第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2006年に『チーム・バチスタの栄光』で作家デビュー。著書は「桜宮サーガ」と呼ばれるシリーズを成し、本作および『コロナ黙示録 2020災厄の襲来』『コロナ狂騒録 2021五輪の饗宴』(以上、宝島社)も連なっている。他に、キューバ革命のゲバラとカストロを描いた「ポーラースター」シリーズ、北里柴三郎と森鷗外の確執を描いた『奏鳴曲 北里と鷗外』(ともに文藝春秋)などがある。
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Posted by ブクログ
興味深く読んだ小説に「続篇」が存在すると知れば、その作品にも興味が湧く場合が多い。本作はそういう「続篇」ということになる。
本作には、前々作、前作の内容を踏まえた事項も在るとは思うが、各々が独立作品なので、各々に愉しく読むことが叶うと思う。
2020年頃の様子を基礎とした『コロナ黙示録』、2021年頃の様子を基礎とした『コロナ狂騒録』と続き、更にその後となる2022年6月頃からの様子が描かれているのが本作ということになる。3作について知り、3作続けて読んだ。そうやって読んで思った。「巷の様子は何?こういうので善いのか??」という程度の湧き起る何かに、作者は衝き動かされるかのように次々と作品を綴ったのではないかというようなことだ。
「未知のウィルス」に揺らぎ、何か腰が据えられないような様相で混乱が続き、長期政権下の様々な弊害のような何かと相俟って、社会の劣化してしまったかのような様子が突き付けられ、やがて「銃弾」に戦慄したというような様子だ。これが3作を通じて描き出された物語だと思う。
前々作や前作と同様、本作にも作者がこれまで綴って来た種々の作品の劇中人物達が多数登場し、そしてモデルが何となく判る様々な劇中人物達も多く登場し、実在地名と架空地名が混在する「作中世界の日本」で、現実の動きを少し反映した情勢が在る中で展開している。“核”としているのは「バチスタ」のシリーズであることも前々作、前作から変わっていない。
本作でも「東城大学」が主要な舞台の一つになっている。「東城大学」は東海地方の架空の街、桜宮市に在る。医学部を擁し、大学病院が在る。この大学病院に在る医師の田口や、少し古い付き合いになっている厚生労働省の型破りな技官である白鳥が物語の鍵となっている。
ところで、本作の田口医師は「東城大学」の病院で神経内科の「不定愁訴外来」という場所の担当というのが本職だ。「不定愁訴」というのは「身体への明らかな異常が無いにも拘らず、様々な症状を訴える状態を指す医療用語」ということだ。そういうことで「丁寧に患者の話しに耳を傾ける」というのが、本作の田口医師の仕事なのだ。3作読み続けて、少し気になったので思わず調べた。(個人的には医療活動、診療科というようなことに明るいのでもない…)田口医師は、この本職の他方に、色々と病院内で役目を与えられて奔走するような感じにもなっている。登場作品ではそういう様子が描かれて来たことになる。
本作の物語は「東城大学」の病院に若手の医師が着任し、田口の部下という形になるのだが、考え方の違いで田口が苦慮しているというような様子が序盤に描かれる。やがて大学病院の敷地にヘリコプターが現れ、大きく状況が動く。
参議院議員選挙の運動期間であったが、候補者の応援演説をすべく桜宮市を訪れた元首相が街頭で銃撃を受けてしまったのだった。銃で元首相を撃った男は直ぐに現行犯逮捕された。
街頭で撃たれてしまった元首相はヘリコプターで「東城大学」の病院に緊急搬送されたのだった。しかし助からなかった。
この「元首相銃撃」の一件の後、「国葬儀」の問題、様々な不正が明らかになって行くようなこと等、色々と事態は動く。濃密な時間が流れ、最終盤は2023年1月に入っている。
濃密な時間の中では、「元首相銃撃」の一件の容疑者と宗教団体との問題、推し進められている万博に纏わること、「効果性表示食品」というようなモノに纏わる話題、株式等を巡る経済犯罪等、随分と情報量が多い。
「物語」として、多少の誇張と抽象で些か戯画化もしながら、「2022年頃?」と問い掛ける興味深い中身になっていると思った。そしてこの「2022年頃?」は、前々作の「2020年頃?」、前作の「2021年頃」に押出される、または牽引され、作者が「書かずに居られない」という様子になって綴ったのだと思う。
本作はノンフィクションではない。が、殆どリアルタイムで世の中の様子を見ながら綴った創作という本作(加えてシリーズの前々作と前作)の中には、「現実以上に現実味が在る真実に近い何か」が宿っているかもしれない。そういう意味で「あの何でも“コロナ”と言っていた時代?」ということで、後世に読み継がれるべき作品なのかもしれない。
一寸思うのは、或いはこの先の数年間の世の中の動きを受け、作者は衝き動かされてこの“コロナ”のシリーズのような、新たな作品を送り出すかもしれないというようなことだ。「或いは?」と頭の隅に入れておこう。
Posted by ブクログ
2022年6月~2022年12月までの話。
今は2024年4月だから、1年半程前の様子だ。
ちょうど読もうとしたタイミングで文庫化された。
解説が鈴木エイトさん。
話題がコロナから別の方向にそれている。
ハチャメチャな政府のコロナ対応をテーマに執筆を開始した本コロナシリーズだが、
五輪利権や奉一教会問題が明るみに出て、コロナ対応の不手際よりも自保党批判の色合いが濃くなっている。
この3作目では、浪速万博利権に焦点を当てて浪速白虎党にも苦言を呈している。
「この物語はフィクションです」が、呆れてものが言えない物語です。
本書の内容がヒントになって、私が知らなかった事実を知ることになった。
2024年4月の今、連日ニュースで小林製薬の「機能性表示食品」である「紅麹サプリ」の健康被害問題が取り上げられている。
そんなこともあり、本書で「機能性表示食品」の話題がひつこく繰り返されているのが気になった。
理由は読んで納得だった。
各国でコロナワクチン開発が開始された時、日本政府も国産ワクチンを作るべく大阪の製薬ベンチャー「アンジェス」に巨額の支援金を出した。
この「アンジェス」という会社を作ったのは、森下竜一なる人物。
森下は安倍のゴルフ仲間でもあり、安倍案件だった「機能性表示食品の導入」に尽力した人物だ。
「機能性表示食品制度」は「アベノミクスの規制緩和による経済成長戦略」の一つで、国会決議でなく閣議決定で作られた。
国の審査を経ずに事業者の届け出だけで認定される危険な制度であったが、企業の利益を最優先し国民の健康よりも経済を重視したのだ。
100億円近い支援を受けた「アンジェス」は、肝心のコロナワクチンは作れず、頃合いを見て撤退を表明するも責任は不問だった。
それどころか、森下氏は大阪万博の総合プロデューサーを務めることになる。
参加企業の選定の権限を得たということだ。
「機能性表示食品」利権も得ている森下と、森下を援護する大阪維新の会が万博を利用して行うことを監視せよというメッセージが伝わって来る。
大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」と国民の健康を前面に打ち出している。
万博では大阪府主導で『大阪ヘルスケアパビリオン』が計画され、これに小林製薬は「プレミアムパートナー」として協賛している。
ニュースでは話題にしていないが、奇しくも森下と大阪維新の会にとって小林製薬問題はタイミングの悪い時期に起こっているのだ。
本書では、自民党の統一教会問題が出てくる。
国葬の話では、「国葬」ではなく「国葬儀」と言い直していたが、参列者に発送した整理券には「国葬議」(儀でなく議)と印刷されていたらしい。
当時閣議決定で決めてしまった「国葬」の実施判断には「一定のルールを設けることを目指す」と言っていたが、今まで何もなされていない。
桜を見る会に反社の人物を呼んでいたことを指摘されると、すぐさま反社の定義を閣議決定で変えたが、後に統一教会の幹部も招待していたことがわかった。
五輪汚職の話は、政治家よりも暴利を貪った企業を非難していたが、国民が驚いたのは汚職の事実ではなく、「いつもなら黙認する東京地検が動いた」ことだと本質を突いている。
裏金問題とか統一教会問題など、陰でこそこそと選挙対策ばかりしている政党に国民を守るコロナ対策などできるわけなかった。
コロナワクチンの効能の話も出てくるが、コロナ自体やワクチンの副反応など調査が不十分で確かな情報がないようだ。
コロナワクチンに関しては、より真実に近いと思われるデータに基づいた正しい見解を選別する必要があるが難しそうだ。
この海堂さんのコロナ3部作を読んで、コロナ禍での社会の様子を再確認できた。
小説では現実と違って、「バカな人」に「バカ」と平気で言えるところがいい。
Posted by ブクログ
田口センセが還暦間近となり、ついに学長室を根城とする時代が来たか…と思いきやZ世代の若手医師に振り回されている相変わらずの巻き込まれ体質
お世話になった先輩がどんどん偉くなっていくけど、根底は変わらずいてくれる安心感。
そして、兵頭クンが教授選?!
ほんとに田口センセ達と一緒に時代を歩んでいるんだな…という気持ちで嬉しくなってしまう。
久しぶりのかのたまコンビが2人とも昇進してて、玉ちゃんが警部…!とこちらも感慨深い
全体的には特に後半は政治色が強すぎて、フィクションとノンフィクションの境目がよく分からんくなって面白さという天では失速しちゃった感じ。
でも、ナニワシリーズ再読したくなったなぁ…
Posted by ブクログ
海堂尊『コロナ漂流記 2022銃弾の行方』宝島社文庫。
『チーム・バチスタの栄光』シリーズの新章『コロナ黙示録 2020災厄の襲来』『コロナ狂騒録 2021五輪の饗宴』の続編。
物語は、新型コロナウイルスから遠ざかり、元総理への銃撃事件やら宗教団体の話がメインとなる。どうせならもっと突っ込めば良いものの、事実をなぞるだけで面白味に欠けた。
2022年7月、ついに新型コロナウイルスの新規感染者は1日10万人を超える。その頃、東城大学医学部付属病院のホスピス病棟とコロナ病棟の責任者を兼務する田口公平は、医師のワークライフバランスを主張し、病棟に効果性表示食品を導入しようとする新任の中堅医師である洲崎洋平に手を焼いていた。
定価950円
★★★