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Posted by ブクログ
『一人で始める短歌入門』は入門書として捉えるには体系的ではなく、『天才による凡人のための短歌教室』は興味深くこそあれ、歌人を目指すというストイックなゴールを感じ、やや重めな印象の指南書だった。
それぞれ面白い本なのだが、最初の一歩という点では本書が最適。
本書はザ・入門本であり短歌の世界にどんな要素があるのかをQA形式でさっとひとさらいできる点で大変良かった。
語られるポイントはさほど難しいことでもないようにも感じるのだが、その例として挙げられる秀歌と解説になるほどー、となる。
一見「?」となる歌でも、どこに味わいがあるのか明確に解説があり初学者でも安心してその世界を堪能できる。
一番、「確かに!」と唸らされたのは倒置法。
穂村さんの名歌、
終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
が、
紫の〈降りますランプ〉に囲まれて最終バスにふたりは眠る
だったらムード半減というところ。
全然違う。
もう浮かび上がってくる場面が素敵過ぎると思っていた歌でも、同じ情景なはずなのにその語順が違うだけで全然印象が変わってくる。
これを実感し、語順、韻、てにをは、細かい推敲全部含めてのひとつひとつの作品なのだなぁと改めて認識した。
全体的には入門書ではあるのだが、終盤のQAでは歌を詠む人へのエールも綴られている。
「同じ時期に始めた友人が新人賞をとり、(省略)嫉妬心が止まりません。どうしたらいいでしょうか?」
これに対する答えが、「有名になることが目的で短歌を始めたのでしょうか?短歌が好きだからはじめたのではないですか?」
またその2つ前のQAでは、「参加している歌会での得票数がいつも低いです。自分は短歌に向いていないのでしょうか?」に対して、「全員から消極的に推されて票を集めた歌よりも、たった1人から熱狂的に支持されるような歌の方が語り継がれる歌になりやすい。得票数は参考程度。」
こういう考え方は、ことある毎に思い返し肝に銘じたい。
短歌に留まらず、自分が好きでコツコツと続けているがなかなか結果が出ないもの全般に当てはまると思う。
承認欲求や嫉妬、スランプで自分の軸をぶらしてはいけない。