【感想・ネタバレ】ゼロから学びなおす 知らないことだらけの日本地理のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月14日

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旅好きな人は地理好きだろうなと思った。

地理おた部(ちりおたぶ) 
現役の高校地理教師(四倉武士)、フリーランスの地理・歴史講師(瀧波一誠)、イラストレーター(ちまちり)によるユニット。生徒たちが地理の授業に興味を持ってくれるように、意外なネタを集めて解説を始めたことが活動のきっかけだ...続きを読むった。世界の気候区分を擬人化した漫画「ケッペンちゃん」は地理マニア以外にもファンを拡大中。


九州はすでに2回滅んでいる!

最初に九州を滅ぼしたのは姶良カルデラでした。  今からおよそ3万年前の出来事です。  桜島付近で始まった噴火は大量の火山灰と軽石を噴出。さらに大規模な火砕流を発生させました。  火砕流とは、超高温の火山ガスと噴出物が混ざり合って、時速100 ㎞ という高速で周囲に広がっていく現象です。その温度は1000 ℃ に達し、あらゆるものを瞬時に焼き尽くします。

天橋立の地形は、分類上「 砂州」にあたります。  砂州とは、その名の通り、砂でできた州(島、陸地の意)のこと。  河川が運んできた砂や泥が河口から沖にせり出し、その先端が対岸と完全に、あるいはほとんどつながった状態の地形を指します。  また、砂が本土部分と片方だけ接している地形が 砂嘴。飛び出た部分が鳥のくちばし(嘴)に似ていることから、この名前がつけられました。

天橋立が絶景だとされる理由は、やはり 砂州の美しさ でしょう。一般的な砂州に比べるときれいな直線になっていて、まるで何か超自然的な力で橋が架けられたようになっているのです。  砂州は東から流れ込む宮津湾の海流と、阿蘇海に注ぐ野田川の流れがぶつかって形成されたのですが、両者の流れの強さがほぼ釣り合っていたため、まっすぐに土砂が堆積したのです。

さらに、砂州に立ち並ぶ松並木もよく考えれば奇妙な存在です。松は「水」をどこから取り入れているのでしょうか。  実は、砂浜の地下には比重が異なる海水と淡水が混ざり合うことなく存在しているのです。

 なかでもとくに異彩を放つ地形と言えば、 陸繋島 でしょう。  陸繫島は、沖合にある島と本土部分が砂によってつながったもの。  両者をつなぐ砂地は、 陸 繋 砂州、またはトンボロと言われます。  トンボロはラテン語で「土手」という意味のtumulus(テューミュラス)が語源で、その名の通り土手のように盛り上がった状態で本土と島をつないでいます。  陸繫島の代表的な例は、日本では北海道函館市の函館山、神奈川県藤沢市の江の島、福岡県福岡市の 志賀島 など。海外では世界遺産にもなっているフランスのモン・サン・ミッシェルやイベリア半島のジブラルタルなどが該当します。

 ただし、緯度や標高の高さなど降雪量以外にも厳しい条件があり、それらがクリアされなければ氷河は簡単には形成されません。そのため、これまで日本には氷河は存在しないと考えられてきました。   ところが、最近になって、「氷河」が発見されたのです。  それは、北アルプスの立山連峰にある 雄山(3003 m)東面の 御前 沢、そして 剱岳(2999 m)東面の三ノ窓と小窓にある氷雪体です。  2012年の調査によって、この3つの氷雪体は「氷河」であることが確認されました。その結果、極東地域ではカムチャッカ半島が南限とされていた氷河の分布が一気に南に移動したのです。  それまで「日本に氷河などあるわけがない」という見方が圧倒的だったので、この発見は大きな驚きとともに受け止められました。3つの氷雪体は 世界で最も温暖な場所にある氷河 として認められ、現在も調査が進んでいます。  立山連峰の氷河は、世界中の氷河のなかでも比較的容易にアクセスできるものです。  もし、ご自身の目で「氷河」を見てみたいと思われたのなら、訪ねてみてはいかがでしょうか。

日本の「すし」の歴史をご紹介する前に、知っておきたい事実があります。  実は「すし」が生まれたのは日本ではありません。また、もともとは今のように酢飯を使った食べ物ではありませんでした。  「すし」が生まれたのは日本のはるか南方、亜熱帯気候の東南アジア内陸部です。この地域では気温や湿度が高いため、せっかく手に入れた魚(川魚)を腐らせてしまうこともありました。そのため、かつてこの地に住んでいた人たちは魚を腐らせずに保存する方法を編み出したのです。それが 発酵 でした。

日本のお酒の中で、とくに長い歴史を持つのが、 焼酎 と 日本酒 でしょう。  焼酎は蒸留酒の一種。その起源は諸説ありますが、有力なのは東南アジアのシャム(現在のタイ)でつくられていたラオロン(米を原料にした蒸留酒)が琉球経由で日本に伝わったという説です。   15 世紀頃になるとシャムとの交易が減少したことからラオロンの入手が難しくなり、すでに伝わっていた製法を使って「泡盛」がつくられるようになったと考えられています。   16 世紀頃には、薩摩に泡盛の製法が伝わり、米の蒸留酒(焼酎)がつくられるようになりました。泡盛の製造に使われていた 黒 麹 は温暖な気候を好むため、薩摩であれば問題なく麴菌を育てることができたのです。

読者のみなさんの中には、  「テスト勉強で教科書を必死に暗記したのに、テストが終わったらすべて忘れていた……」  そんな学生生活を送っていた人もいるかもしれません。本書を読んで、記憶があいまいになっていた地理の知識を少しでも思い出してもらえたのなら、うれしく思います。

 「地理なんて勉強する意味あるの?」  もしかしたら、同じように感じた人もいるでしょう。  しかし、地理を学ぶと、今まで見ていた光景がまったく違ったものに見えてきます。  みなさんも、本書で琵琶湖や富士山の成り立ちを知ってから、これまでとは違ったイメージを持たれたのではないでしょうか。  見慣れた風景や知っている土地が違ったものに見える──。  これこそが地理を学ぶ楽しさであり、醍醐味なのです。

知識を身につけることで、世界が変わって見える喜びを手に入れたのでしょう。  高校卒業後は、オーストラリアやフィリピンなど、海外に積極的に出かけていくようになりました。

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