あらすじ
ひとりでも寂しくない。 私はもっと、強くなれる――。 「あなたのご先祖様を調査いたします」 風子は、母と生き別れてから20年以上、 野良猫のように暮らしてきた。 東京は谷中銀座の路地裏で、探偵事務所を ひらいている。 「曾祖父を探してください」「先祖の霊のたたりか もしれないので、調べて」など 様々な、先祖の調査依頼が舞い込む。 宮崎、岩手、沖縄…… 調査に赴いた旅先で美味しい料理を楽しみながら、 マイペースで仕事をしている風子。 いつか、自らの母を探したいと思いながら―― 大人気作家による「探偵小説」の傑作が、ここに誕生。待望の文庫化。
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Posted by ブクログ
この本も題名買いした 1 冊。
この本のおかげで何かをしつこく探す癖みたいなのがついてしまったかもしれない。
主人公の、依頼人のプライバシーに深く関わらないようにする姿勢にもどかしさを感じるところもあるけどそれが結果ちょうど良い温度で終わるからなんか読み心地良かった。
探偵対象が人物ではない場合は探偵業申請が必要無いとか、こういう裏付け的なところは作者が弁護士だったりをしているから詳しいのかななんて思ったりした。
俺も元々自分のルーツは気になってたというのもあってこの本を手にしたんだと思う。
別に父母が居ないとかそういうのは全く無い。祖父母だって居たしたくさん可愛がって頂きました。
ただ曽祖父母となると良く分からなくなる。
父型の方の父型は石川県で生まれた、と最近まで思っていたが先日親戚と会う機会がありそこでの話によるとどうやら北海道出身だったという事が分かったり…。
まあここに事細かく書く必要も無いけど、先祖って誰もが持つモノだからそれを辿る事自体が、知る事自体がおもしろい事だと思う。
自分の設定みたいなのを知るとモノで溢れた現代での生き方のヒントに繋がるのかもしれないなと思った。
あと"あらかわ"と読んでたけど"しんかわ"だそうで、すみません作者様。
素敵な本をありがとうございました。
朝ドラとかになったら最終話で"カネコアヤノ / 家族について"流れてほしい。
Posted by ブクログ
【要約】主人公である探偵・邑楽風子(おうらふうこ)のもとに舞い込んで来る依頼と絡み合い、彼女自身のルーツが明らかになってきます。
【感想】
読んでいるうちに、自分の戸籍や先祖を想像してしまった。どんな先祖だったのか。想像するだけでもなんだかワクワクした。物語の序盤の馬場という男は、先祖が武田家に仕えていたと言い張っていた。風子と同じで面倒な客が来たと私も思ったが、今なら馬場という男の気持ちが少しわかる気がする。たぶん、自分には驚くような功績を残した先祖はいないと思うけれど、実際に調べてもらったら少し期待をしてしまうのだろう。どんな先祖であっても自分たちの代まで繋いでくれたことこそが大きな功績であるのかもしれない。自分が本にハマるきっかけをくれた素敵な本でした。
Posted by ブクログ
2022年の同名単行本の文庫化で、特殊な戸籍にまつわる5話
先祖調査を業としている邑楽風子のもとに持ち込まれた依頼と、風子が自分の出自を調べる話で、近代戸籍の範囲の調査だけで、私が依頼を受けている過去帳や宗門人別帳を使わないのはちょっと残念。
1)幽霊戸籍
111才になる曾祖父の最高齢表彰をすると町役場から通知があったので、曾祖父を探して欲しいという依頼は、死亡届が出されない幽霊戸籍だとわかり、おまけにその戸籍をめぐって昔も今も他人になりすました事件が判明する。
でも、戸籍係の職員が他人になって転職するというのはちょっと設定としてどうかなぁ。
2)棄児戸籍
中学生の少女が父方の先祖を調べたいと来た。戸籍から出身地をたとり、訪問した家の亡父は中学生の祖父の従兄弟だが、その写真は少女にそっくりで、少女は両親に似ていない自分の出自に疑問を持っていたので安心した。
風子が実は捨て子で、姓名は役場の戸籍係がつけたもの、というということが明かされる。
3)焼失戸籍
小学生の息子が、紙を二つ折りにして咥えて呪文を唱える発作を起こすようになって、先祖の祟りだと言われたという相談があり、先祖を調べに岩手へ行くと火事で一家のほとんどが死に、残った子も行方不明になっていた。
憑(つき)祈祷をしてもらうと、「火事、死体、キョンちゃん恨んでねえ」という男の声が聞こえ、その声の主が曾祖父でハッケと呼ばれる占いをしていて、息子の発作と同じ所作、呪文を唱えていたという。
風子と同行者も、キョンちゃんの家で座敷童を目撃し、曾祖父の霊が息子に降りて、キョンちゃんに伝えたかったのだとわかり、息子の発作もなくなってめでたしめでたし。・・裏表紙の「新たなハードボイルド小説」ってなんだかなぁ。
4)無戸籍
出産の費用が払えずに出生証明書をもらえなかったため無戸籍で、学校にも行けず、定職にも就けない男性からの戸籍取得の依頼を受け、産院を突き止めて出生証明書を入手し裁判所に申し立てたが、実は戸籍のある弟が兄になりすまそうという悪企みだと判明。
5)棄民戸籍
風子を探しているという男性がいて群馬県へ向かうが、面会して自分の親ではないと分かる。しかし、直後知らない男たちに襲撃されて、父親が日系ブラジル人のマテウス・オガタというギャングだったとわかる。さらに資料館で自分と瓜二つの女性の写真を見つけて、母親が玉城カメといい、沖縄へ行ったことを知って、風子は沖縄へ向かうと、すでに病死していた。
母親は沖縄からブラジルに移住した一家に生まれ、終戦近くだったため日本国籍がなく、特例で日本に来たものの帰れなくなってオガタと知り合い、子供を産んだもののオガタはいなくなり、「棄民は戸籍を取得できないが、棄児なら取得できる」から娘の将来のために捨てたのだという。風子はショックを受けるが、自分の出自がわかって、これからも先祖探偵を続けようと思う。
最後は母親と似ていることに気づいてほろりとする場面もあるけれど、『元彼の遺言状』の著者の作品としては理不尽さに納得ができない。
巻末に同じ東大法学部出の辻堂ゆめとの対談があって、辻堂ファンとしてはお得感はある。
Posted by ブクログ
新川帆立は読んで失敗はない。
文章に、1991年生まれとは思えない狡猾さを感じる。年齢の割に経験値が高くて、うまいなぁと感心する。
また今回はグルメ的な要素もあり、へぇーそんな郷土銘菓があるのかと興味を持った。
以前NHKで放送していた『ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵〜』にモチーフが似ている気がして、ヒロインはシシドカフカをイメージして読んだ。
Posted by ブクログ
依頼人の先祖をたどる調査をしながら、自分のルーツを探す探偵?の話。
最初の『幽霊戸籍と町おこし』がどんでん返しで面白かった。第三話の『焼失戸籍とご先祖様の霊』は思いがけずオカルトになってしまってびっくりした。
そして最終話の『棄民戸籍とバナナの揚げ物』は話よりも女性の鼻の骨を折る不逞ブラジル人にビビった。
本の中ではリーマンショックまでそういう輩がいっぱいいたらしい。
リーマンショックで外国人が不況で帰らないといけない、みたいなニュース読んだときは同情したけど、けしからん人も帰ってくれて良かったのかも?と小説の中身とは違う感想を考えてた(笑)
母親にはめちゃ感情移入してたけど、父親はそうではなかったのは、記憶がないってのもあるだろうけど、とんでもないやつだったからってのもあるんだろうか。
主人公の家族、日本からブラジルに帰って来れなかったって、大使館と行っても無理だったんだろうか。
社会問題に全くなってないのも闇深すぎる。