【感想・ネタバレ】事故係 生稲昇太の多感のレビュー

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Posted by ブクログ

エラの張った四角い顔。ゲジゲジ眉毛にタラコ唇。
ブ男。
というより、悪相である。
(本文より)

これが、本作の主人公である生稲昇太。
愛宕(おたぎ)南署の交通課交通事故係勤務の二十二歳の独身巡査です。

風貌に関しては、さんざんな言われようの彼ですが、巡査なのに膨大な知識と明晰な頭脳を駆使して事件を…
解決したりはしません。

警察官としての経験こそ浅いものの、あふれんばかりの正義感と、元気で明るい性格で、署内の人気者…
というわけでもありません。

実際、熱血漢であり、青臭い正義感をもってはいるものの、組織のしがらみはじめ、自分の思い通りにならないことに、時には愚痴をこぼします。
自分が殻に閉じこもって勝手に動いているだけなのに、先輩や上司が自分をわかってくれないと思い悩み、塞ぎ込み、他部署の先輩と酒を飲みながらいじいじしています。

署内のマドンナ的存在の警務課職員の女性に憧れと恋心を抱くも、どうやら彼女は自分とコンビを組んでいる先輩の彼女らしいと気づき、落ち込んでしまいます。

そう、僕が胸に手をあてて考えるまでもなく、僕をはじめ誰にも似た部分が多々ある、ごくごく普通の人間なのです。

さらに、彼の所属からわかるように、日常の仕事は書類の作成と、ノルマのような交通違反取り締まり、交通事故の捜査に取り調べ、五日に一度の夜勤当直、等々。
これまた、派手さのない地味なものばかり。

ラストシーンも、特に変わったことが起きるでもなく唐突に終わって、文字どおり、警察官の日常を何日か切りとって、そのまま編集なしで見せられたかのような感じです。

ところがところが、ものすごく不思議なことに、面白いんですよ、これが。

どこかしら自分とも被る部分があるせいか、昇太にはすんなりと感情移入でき、時には共感、時には「いやいや、それはお前がおかしいやろ」とツッコミを入れながら、気がつけば最後まで読みきっておりました。

僕は小説に対しては、どちらかというと突拍子もない、現実離れした内容を求めたり好んだりする方です。
でも、「こんな風に、普通で平凡なんもありなんかな」と思わされる味わいがありました。

作者の首藤瓜於さんは、江戸川乱歩賞受賞の「脳男」で有名な方ですが、本作はそれとは全く違った物語で、驚かされました。
あっ、愛宕市という舞台は一緒でしたけどね。

「脳男」を読んだ人も読んでない人も、読んでみてほしい一作です。

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2015年04月15日

Posted by ブクログ

警察小説が好きでこれまでにも数多の警察小説を
読んできましたが、本作の面白さは抜群。
警察に知り合いがいる訳でもないので、
警察内部の描写が本当なのかどうか確認する術は
ありませんが、よくここまでと言わしめる内容。
素直に面白かったです。

0
2009年11月25日

Posted by ブクログ

ヒーローの出て来ない警察小説。
主人公がかっこ良くなく、能力が高いわけでも、がむしゃらに努力するわけでも、周囲に恵まれているわけでもない。普遍的な新人。
それでこれだけおもしろいんだから、この小説はおもしろいんですよ!魅力を伝える語彙がないのが残念です。
毎日歩いてる通勤路の看板とか、スーパーのレジ担当の人におもしろみを感じる人にははまる気がします。

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2022年01月23日

Posted by ブクログ

期待が高すぎたのかもしれない。
何しろあの「脳男」の次作なのだから。
見事に肩透かしを食わされた感じだ。
まだまだ新米といえる交通課巡査・生稲。
仕事に対するスタンスの違いに悩み、先輩との葛藤を抱えている。
いろいろな場面を経て徐々に成長していく姿を追った物語だった。
淡々としている・・・というのでもなく、何となく全体的に平坦な印象が残ってしまった。
やけにリアルさを感じる場面もあって面白かったのだけれど・・・。
正義感が強い!!というのは悪いことではない。
しかし、他への影響などを考えたとき「正しい」ことだけに執着するのは生稲の若さからだろう。
「正しい」ことがすべて「正しい選択」だとは限らないのが現実だ。
生稲が片山の域にまで達するのには相当な経験が必要なのだろうな。
いや、生稲の性格を考えたらいつまで経っても片山のような離れ業は出来そうにない。
それでも、生稲のような警察官がいたらちょっといいなぁと思う。

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2017年03月01日

Posted by ブクログ

なんていうか…いまいち。
前作『脳男』がおもしろかっただけに、よけい…。
なんだろ、ふつーすぎる?

ストーリーもふつーだし(特にスリルもなく、テーマ性もなく)、キャラクターの設定もふつーだし(特に魅力もなく)。

なんかいまいち、何が書きたかったのか(何が主題となっているのか)がよくわからない作品です。
前作がバリバリのミステリー作品だったから、著者の息抜き…みたいなものなのかしら?
あっさりしてて、山場のない作品。

ただ、でも、それにしても、警察官である主人公の「日常」を描いているわりに、心理描写も甘く、単純な思考形態をとっているため、あまり共感できない…っていうのが不満。
人間の心理って、もっと複雑なものだと思うのだけど、そういうのがないから、読者側としては主人公の内面に入っていきにくいのではないかと思います。

と、今日はちょっぴり辛口めで…。

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2013年10月16日

Posted by 読むコレ

ずっと前に読んだ「脳男」以降の最初の作品...なのかな?
所謂2作目ってやつですね。
朧げながら記憶にある脳男とはかなり違った作風ですよね。
うだつの上がらない平の交通課の警察官の
成長をゆっくりと、描くこの作品のタッチ自体は
結構好みなのですが、脇を固めるいいキャラ達を
もう少し、じっくり描いてくれると、もっと
ほっこりした気持ちになれたの...かな。

じんわり染みてくる感じの作品だけに少し残念ー。

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2013年02月07日

Posted by ブクログ

江戸川乱歩作品は子供の頃から好きだった。
少年探偵団モノに興味はなく、小学生の頃から陰獣だの人間椅子だの、
危なげな方ばっかり読んでいたけど。

で、その江戸川乱歩の名を冠した賞だもの、気にならないわけがない。
というわけで江戸川乱歩賞作品はケッコウ気にしていたわけだけど‥

ときどき、うーんって思う作品もある。
失礼ながら首藤瓜於さんの「脳男」も、タイトルのインパクトと最初の方はガーッと読んだけど、
どうしてもオチがなっとくいかず。

ただ、その名前は覚えていて、受賞後第一作ということで手に取る。

なかなかの熱血漢のストーリー。
1話ごとに広がりも‥

あれ?でも、オチは?

読み終わって、面白かったけど、なーんも残ってない。
うーん。

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2010年12月26日

Posted by ブクログ

「脳男」で江戸川乱歩賞を受賞した後の第一作。
「脳男」のイメージとは、180度変わり、警察の中でも、滅多に取り上げられることのない事故係に所属する新米警官を主人公にした、ちょっと軽い感じ。
まっすぐで、すぐアツくなる主人公・昇太は、日明恩の消防士シリーズの雄大を思い出させる。
内容自体は、あくまでも事故係の視点から描かれているため、特に盛り上がることもないが、警察の組織の中に「鑑識」と区別がつかない「事故係」が存在して、「あ、ああいう仕事をしている人たちなんだ!」とちょっと警察を身近に感じることが出来る。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

新規購入ではなく、積読状態のもの。
2011/1/19〜1/21

愛宕署事故係に勤める新人 生稲昇太の成長を描く連作短編集。一つ一つのエピソードはまあ良いのだが、全体として何が言いたかったんだろう。中途半端な結末であった。

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2011年01月21日

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