【感想・ネタバレ】アベノミクスは何を殺したか 日本の知性13人との闘論のレビュー

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Posted by ブクログ

アベノミクスの名の下、リフレ派がやりたかった事は政策では実を結ばず、結局はコロナやウクライナ、ガザといった世界の不安定化によって目的に向かいつつある様な感覚がある。日本一国ではどうしようもなかったと考えると忸怩たる思いがある。

金融緩和の代償として背負った一層の財政不健全。
日本国債が潮を引くように買い手が付かなかった時、この国はどうなるのか。その潮目を体験して初めて後の世代への贖罪となるのかもしれない。潮目を延命させるのは正に無責任であるように思う。

所で黒田前日銀総裁は退任後これほど短期間に私の履歴書の執筆を引き受けたのだろう?
もしかすると後に成れば成る程自らの政策の粗が晒されるのを警戒して、今の内に引き受けてしまおう、と考えたのではないか?と思わず勘繰ってしまう。
又、官僚の私の履歴書は基本つまらない。ホントただの履歴書を読んでいるよう(今連載中の武藤元財務次官しかり)

江崎書店袋井店にて購入。

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2024年01月14日

Posted by ブクログ


アベノミクスの名付け親である朝日新聞記者原真人が、
13人の論客と、アベノミクスの功罪について語り切る。
原はもともとこの経済政策を揶揄して「アベノミクス」と表現したのだが、
後にこれは政策を礼賛する言葉になっていったという皮肉。
失われた20年を30年にし、財政をさらに悪化させ、官僚の役割を破壊し、
円安で国力を失い、、アベクロの政策のダークサイドが浮き彫りになってくる。

唯一の光明は株価の上昇。
もっとも安倍元首相はそれだけを狙っていた節がある。
株価が上がってもほとんどの国民には何の関係もないのだが、
資産家が喜び、何となく日本全体の雰囲気だけはよくなる。
これには成功した。

しかし、病人にドリンク剤を与えるようなもので、一時的には元気になっても、
長い目で見れば衰弱が進む。
それでも政策を変えず、変えられず、出口戦略が取れず、現在に至る。
黒田日銀総裁の後を引き継いだ植田さん、来年2024年は動かざるを得ない。

しかし、、、
この13人とて皆が同じことを言っているわけではない。
アベノミクスが失敗であることは共通するが、
ではどうすべきか、ということになるとバラバラになる。
その中で政策を選ぶのは政治家、ということに無理がある。
岸田さんに期待できないのは当然だが、では誰に?
となると、難しい。
というか、一人の人に決断させる時代ではないとも思う。
しかし何もしないわけにはいかないわけで、、、

成長はいらない、という方もいた。
一理あるが、しかしそうなると、中国がその経済力を背景に
軍事力を拡大し、日本を支配しようとしたらどうするか、、
という議論が必ず出てこよう。
一国だけでどうなるものでもない。

一人当たりGDPは人口が少ない方が高まる、という議論もあった。
であれば日本も道州制にして、その範囲でGDPを競えばよい、とも思う。

富は偏在する、多く持つ人がそれを再配分するのは無理、
であればそれを行うのは国しかない。
今その機能がおかしくなっているから、貧困格差が拡大している。

経済、と言っても外交、内政、福祉、すべて絡まってくる。

政治に期待できないと思う一方、かじ取りは必要なのも事実。
どうしたらよいのだろうか?
DXを利用した直接民主主義で解決、なんてものではない。
わからない、、


第1章 すべてはクルーグマンから始まった

翁邦雄 リフレ論を巡る「岩田‐翁」大論争の当事者
白川方明 元総裁が語る「民主主義と中央銀行」

第2章 財政破綻、日銀破綻もありうるのか

藤巻健史 異次元緩和の危うさを最も厳しく問うた
中曽宏 金融危機は、また来るか 
石弘光 平成は「財政不健全化の時代」だった

第3章 成長幻想も経済大国の誇りも、もういらない

佐伯啓思 アベノミクスをなぜ見放さないか
山口二郎 「より良い未来」をあきらめた民意と長期政権
 藻谷浩介 人口減日本の未来図は十分に描ける

第4章 エリートの背信が国民益を損なう

門間一夫 「効果なし」でも、やるしかなかった
柳澤伯夫 正論を吐かぬ主計局の責任は大きい
 石原信雄 「官邸の大番頭」が語る官邸と官僚

第5章 モノあふれる時代の「ポスト・アベノミクス」

水野和夫 アベノミクスの本質は「資本家のための成長」
小野善康 デフレとは「お金のバブル」

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2023年12月19日

Posted by ブクログ

「失われた20年」を是正すべく歓呼の声を持って迎え入れられた「アベノミクス」は、後世に莫大なツケを残し壮大な失敗に終わろうとしている。

かくいう私も当初はクルーグマンの提言に魅力を感じていたひとりではあるが。

「アベノミクス」が危うい、目標達成が困難かもしれない状態になってからも株価が上昇したという成果のみを誇り、軌道修正をしなかった罪は限りなく重い。
政府と日銀がタッグを組み、自らの政策について説明責任を果たさなくなり、軌道修正どころか意地になって大規模な金融緩和を進めてきたその姿は、金融政策の独立という側面からも異様な感じを受けざるを得ない。

未だに2%のインフレ率が達成されていないと言い張る日銀は、庶民との生活感覚が違いすぎてないだろうか。専門家でない私にはどのデータを見ればそう解釈できるのかがまるで分からない。

またメディアの罪も重いと思う。ようやく「アベノミクス」批判も聞かれるようになってきたが、かなり早い段階で「アベノミクス」は上手くいかなかもしれない兆候は出ていたはず。おそらく一強の安倍さんに忖度して批判をしてこなかったのだろう。その罪は限りなく重い。

この大規模緩和からの出口戦略が見出せない今、一部の人が主張するように日本にハイパーインフレが起きて、人々が塗炭の苦しみを味わう事がないように祈るばかりだが、本書を読んで感じることは、人々が価値観を大きく変えないといけない時代になったのかなと強く思う。

もしかしたら、今こそ偉大な哲学者が必要な時代かもしれない。

あと自己防衛できる人は、ドルを少し持っておくような保険をかけて自己防衛するしかないかもしれない。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

リフレ派の言うことは端から信じていなかったが、あれだけの社会実験をやったのだからこういう総括は必要だ。結局小野氏が言うように将来不安に備えた貯金を取り崩してまで欲しいものがなくなったバブル以前の中高年世代と、貯金もなく欲しいものも買えない氷河期以降の世代がお金を使わなくなったことがデフレの真因だろう。お金を市場にジャブジャブ流したって銀行の当座預金に積み上がるだけでインフレは意図して引き起こせない。そしていざインフレになってみると『こんなはずじゃなかった』って世の中になってる。一体アベノミクスって何だったのか。手段はおろか目的からして間違ってるじゃないか。冗談もほどほどにして欲しい。
リフレ派に担がれた安部元首相は単に間抜けなだけだが、黒田の無責任と不誠実さは許し難い。こういうところに日本の劣化を見せつけられるようで、本当に嫌になる。植田総裁の良心に期待したい。

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2023年11月02日

Posted by ブクログ

自称アベノミクスの名付け親、アベノミクスという呼称は、レーガノミクス同様否定的文脈で用いたらしい。安倍晋三の経済ブレインであった浜田宏一からは、天敵呼ばわり。著者の自己紹介である。これらを自らの勲章として、述べるのはアベノミクスの功罪。いや、タイトルに「何を殺したか」とある通り、バランスの良い本でない。複数名の有識者に評価を問うた本。

流動性の罠。金利ゼロ下にそれ以上の金融緩和をしても効果を為さない状態。アベノミクスによる金融緩和が意味を為さなかったという意見が多い。結果論だが、しかし後から振り返り現状からは正しく物が言える。

以下、翁邦雄。グリーンスパン曰く、人々が物価のことを気にしなくなった状態が物価安定状態。年金や賃金との相対関係において決まる。MMTにおいて、自国通貨発行可能な中央銀行を持つ国にはデフォルト危機は存在しないという論は自明。だからといってどんどん拡張しても良いかと言えば、インフレコントロールにおいて制御を失う。

日銀が紙幣を刷りまくって国債を買い上げる。それによって国債価格は上昇し、長期金利が低下する。一見すると景気刺激策のようだが、大量の国債消化にいつも苦労している財務省にとっては、国際管理政策で助かる面もある。だがそのような財政ファイナンスまがいの政策は、海外から横槍が入り持続可能ではない。黒田日銀は500兆円近い国債を買い上げ、事実上の財政ファイナンスをやってきた。2013年には国債の日銀による保有シェア12%だったが、2022年には52%。

資本主義は失敗すると予言したのはマルクスだが、シュンペーターもまた資本主義は永遠には生き延びられないと見ていた。ただし理由は異なる。資本主義は失敗するどころか、成功しすぎてさらなる革新が求められるようになり、自壊するというのがシュンペーターの考え方。

果たしてアベノミクスが果たし得なかったデフレ脱却をやり切れるか。これからが勝負だ。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」「建設国債を大量に発行し、日銀に引き受けさせる」
安倍総裁が選挙演説で口にしたこの言葉は、にわかには信じられなかった。立派な財政ファイナンスではないか。しかもそれを大衆の前で堂々と言うなんて。
その後、選挙で大勝して政権に返り咲いた安倍自民党は、アベノミクス=異次元金融緩和を進めていく。
当初こそ、円安や株高によって成功したように見えたのかもしれないが、現在になってその副作用が目に見えるかたちで明らかになってきた。そして、本当の地獄を見るとすればこの後だ。安倍氏の死により風化させるのではなく、どのように合意形成がなされていったのかも含めて、しっかりと振り返っておく必要がある。

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2023年09月09日

Posted by ブクログ

正直、話題が難しすぎて、アベノミクスはどのような成果や弊害があったのか、今後の影響は?ということが全く分からなかった。
私は経済学には全くのど素人で、行動経済学に「なるほど」と関心を抱く程度だ。
ミクロ経済もマクロ経済もリフレ政策もMMT(現代貨幣理論)もよく知らない。

異次元の金融緩和とやらで、国債をバンバン発行し予算編成する近年の日本の政策は問題ない?
政府の借金は年々増え続け、今や約1200兆円を超えている。
高橋洋一氏などMMTという新しい理論を根拠に全く問題ないと言うが不安だ。
返済計画の立たない借金を積み重ねて本当に大丈夫?
MMT理論の前提条件である経済成長のきざしも見えないし、その場しのぎの現金ばら撒き対応にしか見えない。
原発の核燃料廃棄物の処理計画が破綻しているように、国債の借金返済はしなくても大丈夫という理論は正しいの?

10年間のアベノミクス政策を経た現状。
・円安・株高になり良かったらしいが、アベノミクスと円安・株高の因果関係は不明瞭らしい。
・当時1ドル70円まで行った過度な円高から100円程度の円安になった時は「良かった」が、近年の150円という安過ぎる状態は良くない。
・雇用状況は良くなったが、非正規雇用のため給与は増えず、中間所得層が減り所得格差が開いた。
・富裕層と大企業は財産を増やしたが、中間層以下には恩恵はなかった。
・経済成長のけん引役になる新しい産業は生まれなかった。有望だと思っていたデジタル技術は逆に世界からかなり遅れてしまった。
・3.11の後で地球温暖化対策も急務だったので、自然エネルギー開発に期待していたが原子力依存から脱却できなかった。

本書を読んで分かったこと。
・現在の経済理論は、経済成長ありきの原理である。
・リフレ政策(後にアベノミクスと呼ばれる)に(白川が総裁時の)日銀と財務省は反対だった。
・日銀の独立性確保が問題視される中、安倍内閣はリフレ派の元財務官僚の黒田を日銀総裁にした。
・「中央銀行がインフレ的な政策をとればインフレが起こる」という考えは間違いであることが証明された。
・日本の高齢者は金持ちだが金を使わない。若者は未来に不安だから金は使わず貯蓄に回す。
・日本社会は現状を維持することで精一杯になっている。
・成長戦略は必要だが、成長の先にどんな社会を作りたいかを考えている人はいない。
・より良い未来の構想がない政治には継続安定を求めるしかない。
・日銀の使命→物価の安定を維持すること。
・日本は理論を変更する(過ちを認める)のを嫌がる。一度はまり込んだら引き返す決断が遅れがち。
・民主的な政治が続くためには、時々政権交代があった方がよい。その方が、国民の声が反映されやすくなる。
・政権交代のたびに、役人がコロコロ変わる人事はよくない。


何かの知識を得たいと思ったら、類似の本を10冊くらい読むのがいいという。
まず基礎知識のために3冊、次に視点の異なる本を3冊、最後により専門的な内容のもの。
基礎知識は池上彰、佐藤優のお二人から得るのがいいと思っているが、それ以外ではどこから情報を得ればいいか困っている。
好き嫌いで主観的評価に偏る人が多いので、客観的評価を行なえる人を見つけたい。
本書で沢山の人の意見を聞くことにしたのは、共通認識と個人的な偏った意見を知るため。

本書は日銀関係者が多数登場している。
アベノミクス下で起きている現実の課題をどのように分析し、どう対応してきたかという様子がよく分かる。
白川方明・日銀元総裁、中曽宏・黒田日銀時の元副総裁、藻谷浩介・エコノミストの3名はもう少し意見を聞きたいと思った。

「金融政策の過失は証明できない。500兆円の国債購入、30兆円の株式買い上げの是非を裁判で判断することはできない。」
と書いてあった。
アベノミクスの成果や弊害も、結局は各個人の判断にゆだねるしかないということか。

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2023年08月22日

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