【感想・ネタバレ】日本語が消滅するのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年10月05日

・山口仲美「日本語が消滅する」(幻冬舎新書)を読んだ。 私は金田一春彦のやうに日本語は消滅しない(275頁)と信じることができるわけでもな く、「あ〜あ、日本語はもうお終いかもしれない。そんなに遠 くはない将来を思って、私は愕然としました。」(15頁)といふほど悲観的にもなれない。 分からないのであ...続きを読むる。私の目で 現状を見る限り、日本語の消滅といふ事態には程遠いと思はれ る。30年以上前の金田一の言を信じても良ささうに思はれる。ところが、本書を読み終は つてみると本当にさう言へるのかとも思ふ。「未来を背負う子供たちが、自国語を十分にマスターしないうちに、英語教育を始めることは、将来的にその国固有の言語の衰退を招きま す。」(14頁)とある。筆者には、現代日本の言語教育の現状がかう見えてゐるらしい。のみならず、さういふ外国語教育がその国固有の言語を滅ぼした実例がいくつも見えてゐるのである。本書は「日本語学」連載の単行本化である。かなりの加筆修正がある。個人的には大幅な加筆がなされてゐるのではと思ふのだが、それゆゑに極めて分かり易い。私も、もしかしたら日本語は危ないかもしれないと思ふやうになつた。
・「言語消滅の原因をまとめてみると」(103頁)、その原因は5つある。話者全滅、同化政策、自発的乗り換へ、征服被征服、役割終了、簡単に書けば かういふことで、例へば同化政策はいくつかの地域で現在進行中である。中国のウィグル、内モンゴル、そしてチベット、その他にもある。現在問題になつ てよくきこえてくるのはこれくらゐであらう。ロシアではウクライナの子供を拉致してロシア 人にする、つまりウクライナ語を忘れさせることが行はれてゐる。これは征服被征服でもあ る。このやうに強制的に言語を変へさせられることの一方、自発的に言語を変へることは現在でも行はれてをり、それは「アイルランドの人々が自らの意志でアイルランド語を捨てて英語にのりかえている」こと (276頁)などがある。これらを踏まへて「母語の力を意識する」(143頁)ことになる。筆者の考へはこれに尽きる。母語とは何か、「ひらたく言えば、幼児期に母親などの身近な人々から自然に習い覚え、自分の中に深く入り込んでいる言語」(144〜145頁)、 それが母語である。日本人だからといつて母語が日本語とは限らない。しかし、母語には固有の世界観や文化を作つたり、アイデンティティを形成したりする力がある(169頁)ゆゑに「母語は、単なる伝達の道具ではな」く「民族の血である」(同前)とも言へる。そこで結論、「日本語を大切にしよう。 日本語は自分を支えている言語なのだという意識をしっかり持とう。そのうえで、世界共通語を効率的に学んでいこう」(276〜277頁)。「日本人が日本語を守らなければ、日本語は消滅するのです!」(272頁)。これは考へるまでもなく当然のことである。母語の乗り換へが消滅の一因とし てある。征服されなくとも、自ら乗り換へれば言語は消える。 言語が消え、世界観や文化も消え、更にはアイデンティティも消える。中国やロシアのやらうとしてゐることが正にこれだと知りつつも、私にはこれまでどこか他人事であつた。本書から山口氏の危機感が伝はる。「中学校では英語の授業時間数が国語の時間数を超えてい」 (276頁)るといふ。やはり学校教育では国語が基本である。英語はせいぜいその次であ らう。かういふ考へが現在後退しつつあるのかどうか。ただ、私達はかういふ状況が分かつてゐない。たぶん文化省も分かつてゐない。これは日本語消滅への第一歩である。さうならないことを祈るのみ。

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Posted by ブクログ 2023年07月21日

コンピュータサイエンスなどに携わっていると英語を重視することにも理由は出てくる。古文や日本史に面白さを感じることが日本語を大切する方向性になるだろう。

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