【感想・ネタバレ】日本人無宗教説 ──その歴史から見えるもののレビュー

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Posted by ブクログ

この本の素晴らしい所は、いままでの無宗教研究をまとめ、
また明治-現代まで無宗教がどう語られてきたのか、その資料をまとめている点です。

1.いままでの無宗教研究まとめ
阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』と礫川全次『日本人は本当に無宗教なのか』が
冒頭文で紹介され、こうした先行研究を踏まえていることが伺えます。
実際本文でも前掲書の理論の簡単に紹介した後、その論理を歴史上の事実から難しいと指摘、
その上で、より現実的な論理として「無宗教だから悪い」という欠落説、
「無宗教だから良い」という充足説、「無宗教は日本固有の宗教」という独自宗教説という
3つの分類で無宗教に切り込んでいきます。

2.豊富な資料
以上の3分類も、根拠がなければ意味がありません。
この本では明治-現代まで非常に手厚く情報を集めていて、
当時の時代の空気を伝える新聞記事等を様々確認できます。
仮にこの本の分析に改める箇所があったとしても、
こうした資料は今後も参照され続けるでしょう。
そのため無宗教研究の決定版であり、今後の基礎となる本と言えます。

3.独自の分析
以上のように豊富な資料を扱うことになったのは、
この本の視点が「無宗教が良い/悪いという事実があるのではなく、
無宗教が良い/悪いと他のものと紐づけて論じられてきたのではないか」というものだからです。
明治時代は無宗教だから列強国でないと知識人が危機感を持ち、
またある時は無宗教だから日本人は道徳心に欠けると嘆きます。
他方、無宗教だから日本は先進国だと言う人もいれば、
無宗教だから道徳心があると言う人まで記録されています。

以上の事実からわかる通り、
「無宗教だから……」という語りは無宗教の話をしたいのではなく、
日本が列強国か、日本人に道徳心があるかなど、他の問題を話題にしたい時に使われる、
そしてなぜそれがあるのか、ないのか説明がつかないので「無宗教だから……」と説明される、
それが豊富な資料により裏付けられています。

4.レビューおわり
以上、この本を読むと「無宗教だから……」となにかを論じる前に、
かつての人々が繰り返した「こじつけ」に陥っていないか自然と注意が向くようになるでしょう。
本書のおわりに書かれているように、「無宗教だから」の話をする前に
「そもそも宗教はどこで区切るのか」という問題も、今までの無宗教研究で行われてきませんでした。
こうした部分も顧みられるべきでしょう。

最後に本書で目についた「無宗教」関連の事件の名前を挙げておきます。
これらの名前に関心がある人は、本書に目を通してから語った方がいいでしょう。
廃仏毀釈、国家神道、津地判決、葬式仏教。

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2023年06月05日

Posted by ブクログ

この著者が本当に言いたい事は何か?
それは、日本に西洋からなる宗教に対する概念を日本に適応させてしまっがために不適合を起こしてしまった。だから、宗教と無宗教の区分けをしている基準は何かそれを問い直し、日本独自の宗教に対する解釈を与えなければならない。これが、この著者が言いたいことである。
多神教は、信仰はなく実践のみである。また、国教のものではなく、個人的なものである。だから、日本的宗教と言う概念を考えるならば、神道、仏教、などの日本古来の文化を大切にし、それを日本独自の宗教として価値あるものとすべきである。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

一般的に日本人は無宗教であると考えられています。しかし、一方で初詣には神社に行き、大晦日には除夜の鐘を聞き、キリストの生誕祭であるクリスマスを祝う日本は多様な宗教の国であるようにも思われます。
実は、こうした「日本人は宗教がない」という言説は幕末に来日した外国人以降、長らく多くの言論人によって語られ続けてきました。
本書ではこうした日本人は無宗教であるという言説を中心に、近現代の日本人がどのように宗教と向き合ってきたのかを考察しています。

【こんな人におすすめ】
日本人の宗教観の歴史に興味がある

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2023年11月22日

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