あらすじ
コロナ禍とウクライナ戦争を背景におよそ半世紀ぶりの大インフレが世界を襲った。低インフレにあえいできた日本も例外ではない。「輸入インフレ」の深刻度は米欧をしのぐ。資源高に根ざす物価高に拍車をかける円安が同時に広がったためだ。世界的なインフレの波のなかでも、日本は賃金デフレの流れが終わらず、日銀は金融引き締めに動けない。輸入インフレと、なお残る賃金デフレ。そのダブルパンチが通貨安を生み、さらなる物価高を生む悪循環になった。
本書は、日本と海外に広く目を向け、市場をウオッチしてきたベテランの日経記者による一冊。ファクトを積み上げ、幅広い取材から総合的な視点で日本の今後を占う。
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Posted by ブクログ
「日銀」に関する一般書はずいぶん読んできたおかげで、本書のような金融政策の本を読みとおすことができた。
著者は、日経新聞の「専門エディター(金融政策・市場担当)」だけあって、詳しいのはもちろん、できるだけ平易な文章にしてくれているために、本書は読みやすい。
しかも、昨今には「日銀」を批判的スタンスで書いている本が多い中、本書は客観的に目配りしているように感じた。
そのおかげで、本書を読んで「日銀」の内部論理もわかるように感じたが、そのおかげで「日銀」メンバーの専門性に大きな疑問を持った。
「日銀総裁」とスタッフは、マクロ経済と金融政策の専門家であり、そうであるならばその専門分野では、全て心得ていて、自由自在にコントロールできるのではなかったのかと愕然としたからである。
どうやら、「日銀」が2013年に「異次元の金融緩和」を始めたのは、はっきりした見通しがあったからというわけではなく、ダメでもいいからやるだけやってみたということのようである。
それでは、専門家ではなく、素人と同じではないのかと感じてしまった。
確かに、経済政策と金融政策は、ある意味前人未到の荒野を進むようなものかもしれない。
しかし、高給を食む日本のトップエリートならば、もう少し正直に「敗戦の弁」を語っても良かったのではないかと、本書を読んで思ってしまった。
本書はそのような黒田日銀の内懐も想像できるぐらにリアルな足跡を追いかけていると、高く評価したい。