あらすじ
秘峰八ケ嶽を舞台に、姫をめぐる兄と弟の愛の確執と惨酷な結末が、果てもなく続く一族の血塗られた歴史の発端だった。憎悪は憎悪を呼び、復讐は復讐を生む。山窩族と水狐族に分かれて争う末裔たちの呪詛と怨嗟の叫びは、時空を越え、いま大江戸の夜に凄然と谺する! 近代劇作の手法もとりこんだ卓抜な構想力と無類の空想力で妖美幻想の世界を拓き、国枝三大伝奇長編の一つと評される豊饒な成果。
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Posted by ブクログ
稀代のストーリーテラー国枝史郎の3大伝奇小説のひとつ。母の呪詛を浴びて育ち不死の呪いを受け、おまけに腕には人面瘡がある鏡葉之助を主人公に、母の仇を討つべく一族をかけて水狐族と戦う伝奇長篇!話は複雑だがとにかく面白い。スピーディな展開に、溢れるように出てくる登場人物たち。勧善懲悪ではない。出てくる者たち皆んな悪人なのだ。いつも話が膨らみ過ぎて最後まで書けない国枝が最後まで書いたことも凄い。
Posted by ブクログ
作者の代表作の一つらしい。
前に読んだ『神州纐纈城』は未完で驚いたので、これもそうではないかとドキドキだったが、ちゃんと完結していた。しかし伝奇小説は未完である方がよいという説もあるし、そういう意味ではこじんまりまとまっている方なのかもしれない。
一人の姫をめぐった兄弟の戦い、その末裔の山窩族と水狐族の戦いを背景に鏡葉之助という青年の波乱万丈な運命を描いた話だが、この主人公も内面に善と悪を抱え込んだ人間で、「それでいいのか」と突っ込みたくなることもしばしば。種族と種族の戦いで盛り上がるところも、そんな昔の因縁は忘れて仲良くしろよはた迷惑な、と思ってしまう。伝奇小説には向いてないのかも。
それでも読んでいる間は、次はどうなるのというワクワク感でどんどん読み進んでしまった。豪華絢爛な物語。