あらすじ
【内容紹介】
近年、企業においては人材の採用や育成、退職、あるいは組織状況の改善に至るまで、企業ではたらく「人々」に関する様々な問題を解決するために、「データ」を活用しようという意欲や活動が活発化している。このような取り組みは「ピープルアナリティクス」と呼ばれるが、本書はそれを推進するための方法論を具体化した”これまでとは異なる”推進の考え方やノウハウを凝縮した実践の書である。
人材と組織は、人間の人生や思惑が複雑に絡み合う、多様で変化に富む、それでいて重厚で深甚な存在でもある。その諸問題を数値として表現されるデータ「だけ」で全てどうにかしようというのもなかなか難しい。
本書では数値で表現されるデータ以外のデータも活用できることを目指して、既存のアプローチを補強する形で数値以外のデータの活用についても整理を行い、ピープルアナリティクスをより「実践的」に「役立つ」方法論に仕立て上げたいと考え、二つの思いを込めた。
一つは、「活用できるものは何でも活用したい」という思いである。人材と組織は複雑で、絶えず変化する。そして、相手は人間であるために、慎重かつ丁寧な判断が求められる。そうした中で、職場の問題の解決を急ぐのであれば、数値のデータの活用だけに留まらず、使える情報は全て活用した方が良いという考え方である。
もう一つ、「誰でもできる取り組みでありたい」という思いもある。ピープルアナリティクスは、これまで人事部門が取り組むべきものとして、論じられることが多かった。人材と組織のデータは人事部門に集まってきやすく、その成長や変化に責任を持っているからこそであろう。一方で、人材と組織により良い変化を望む人は人事部門だけではない。組織のリーダーや一人の社員であっても、その変化を願ってやまない人々は大勢想定される。そうした人々でも取り組める可能性を切り開くことも、重要だと考えている。ピープルアナリティクスは、人事部門だけの特権ではなく、人材と組織について深く理解し、少しでもよくしたいと考えている全ての人にとって大事な方法論になる可能性もある。
本書の各章をご覧いただきながら、「こんなデータ収集や分析の方法もあるのか」「これは実務できるかも、やってみたい」との思いを手始めに、実践に向けた行動に移してみていただけたら幸いだ。
【目次】
はじめに
第1章 ピープルアナリティクスの定義
1-1:ピープルアナリティクスの定義
1-2:分析の四段階
1-3: 苦悩や困難
1-4:理解と実装
1-5:「理解」のための質的アプローチ
1-6:ピープルアナリティクスの再定義
コラム:「実装」の内実と推進上のポイント
第2章 データ収集の考え方
2-1:量的データの特徴
2-2:「サーベイ」の重要性
2-3:質的データの特徴
2-4:収集方法の使い分けの観点
2-5:出発点となるよい「問い」の立て方
2-6:データ収集を通じて「寄り添う」
コラム:ピープルアナリティクスは「部外者」か?
第3章 量的アプローチ
3-1:サーベイの実践
3-2:既存尺度の探し方
3-3:量的なデータ分析の手法
コラム:ピープルアナリティクスで利用するその他の分析手法
第4章 質的アプローチ
4-1:質的アプローチのメリット・デメリット
4-2:聴く:インタビューの概要
4-3:観る:観察調査の概要
4-4:質的データの分析
コラム:人材と組織に関するデータ利活用の原則、管理
第5章 ピープルアナリティクスの実践例
5-1:事例1)採用基準の見直し
5-2:事例2)社員の離職防止
5-3:事例3)研修の効果測定
5-4:事例4)エンゲイジメント向上
コラム:ピープルアナリティクスの「権力性」
第6章 ピープルアナリティクスの組織化
6-1:なぜ組織的な推進が必要なのか
6-2:組織化のための論点
6-3:組織の成長のために
6-4:「役立つ」ことの両義性
コラム:「科学的人事」の再解釈
おわりに
[付録1]様々なサーベイの回答方法
[付録2]人事データ利活用原則
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Posted by ブクログ
評価
・PAに携わり始めるHRの担当にとって気づきの深い内容だと思われる。
また、それを教える立場においても、十分に基礎を理解したうえで、
何を目的に様々なデータを収集するのか、分析するのか。基礎を身に着けるために
とても大事な要素を網羅して整理している。
感想
・この本は、冒頭反省から入る。「データによって価値がでるという期待と慢心があった」「人間は多様で変化に富む存在で、数値だけでは語り切れない」これがとても本質をとらえていると感じた。そのため、本書の副題は人材と組織を理解するための。となっている。
・こんなデータ収集の方法もあるのか、これは実践で使ってみたい。と思えるようにまとめる、示すことは現場の人事の力になると思われる
内容
・分析の四段階
・理解レベル1(何が起こったか、記述的分析)
・理解レベル2(なぜ起こったか、診断的分析)
➡理解の段階では、予測に役立つ結果を出すことを目的とするケースが多い
・実践レベル1(何が起こりそうか、予測的分析)
・実践レベル2(どうすればできるか、処方的分析)
➡実践の段階では、レコメンデーション(裏付けあり)を示すケースが多い
・ピープルアナリティクスの留意すべき特徴
・人と組織は、様々な粒度を構成(類似状態は困難、量+質の分析も必要)
・人と組織は、距離が近い(分析者と対象者が近く、お互いの信頼関係は絶対)
・人と組織は、変化することへの期待がある(数値断定NG、変化の兆しや可変性を出すことが前提)
・PAデータの種類
・オペレーション(採用・配置・育成・評価・報酬など)
・センチメントデータ(モチベーションや組織風土)
・パーソナリティ(性格や能力)
・アクティビティ(メールやチャット)
・PAの出発点となる問いの3条件
・実証可能性(答えにたどり着けそうな可能性があるか)
・価値、意義(やることによって誰かのためになるのか)
・資源的可能性(検証はリソースとして期限までに実行できるか)
・データ収集の際にあるべき担当者の姿勢
・現場の課題を解決したい気持ち
・公正な立場であるという視点
・相手を一人の人として見ること
➡その後の量と質の分析や実践実例などはネタバレのために記載しない