【感想・ネタバレ】キン肉マン 四次元殺法殺人事件のレビュー

あらすじ

【小説版登場!】『キン肉マン』がミステリ小説になって登場! キン肉マンが失踪した! 重臣・ミートはキン肉マンへのリベンジに燃えるキン骨マンを相棒に捜索へ繰り出す。しかし、二人は行く先々で超人による殺人事件――すなわち“超人殺人”――に遭遇するのであった! 変形、分身できるのは当たり前で、身体が機械の者、顔面がブラックホールに繋がっている者、時間を止めることができる者、体に付いたトイレに全てを流し込める者……! 様々な異能力を持つ容疑者たちに、物理法則を無視したトリック……! 犯人は誰だ!? そして、キン肉マンはどこだ!? 【目次】プロローグ/事件I 四次元殺法殺人事件/事件II 蘇った被害者/事件III 1000万の鍵/事件IV 呪肉館殺人事件/エピローグ

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主役はミート!

キン肉マンファン向けのミステリー連作(コメディ風味)
事件で死人も複数出るが、超人は復活するシステムがあるのであまり深刻にはならない。
本格推理を期待するというより、キン肉マン通としての知識を使って遊ぶコンセプトかと思う。
挿絵がなかったのが少し残念だが、ライトで読みやすい小説です。

#アガる

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2023年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

● 感想
 キン肉マンファンの作家による、キン肉マンファンのためのミステリ。探偵役である主人公はミート君で、ワトソン役がキン骨マンという配役のセンスも見事だ。登場する超人たちは、バッファローマンやブラックホールといったメジャーな超人だけでなく、知恵の輪マン、怪盗ルピーン、バイクマンといったかなりマニアックな超人まで登場する。もう、キン肉マンファン、それも相当重度のキン肉マンファンしか対象にしていない、極めてニッチな作品である。
 4つの短編に加え、一応全体を通じた謎が存在する。なぜ各地で超人殺人が立て続けに起こったのかという謎である。この真相は、ミスターVTRが地球の映像を使って、世界の設定をミステリーのような世界にしたというものだが、これは少々とってつけたようなオチで、後から付け加えた感がある。
 キン肉マンに登場する超人の能力を使ったトリックには、ミステリとしての弱さがあるものの、キン肉マン好きにはたまらないネタも多い。好きか嫌いかと言われると、やはり好きなミステリである。個人的な好みという点で付加価値が高く、★4にしてしまおう。
● 四次元殺法殺人事件
 四次元殺法コンビのペンタゴンが殺害される。容疑者はブラックホール。ブラックホールは瞬間移動、自分を影のようにできる、影分身といった特技(技)を持っている。どう見てもブラックホールが犯人のように見える。四次元殺法コンビは、ブラックホールがコンビを解消し、プラネットマンと新たなコンビを組もうとしていたという噂もあり、コンビ解消のトラブルが原因で超人殺しを犯したという動機も考えられる。
 ミートはブラックホールに対し、「つまり、あなたがその気になれば、この世にできない犯罪なんてないんです!」と発言。あとは証拠だけだ。ミートはその証拠に気づき、解決編のゴングが鳴る。
 ブラックホールは、控室にいたことを隠すために、割れたコーヒーカップを「吸引ブラックホール」で吸い込み、証拠を隠滅した。さらに影分身を使って、誰かが部屋から出たように偽装し、瞬間移動で脱出。第三者による犯行と見せかけたのだ。しかし、ブラックホールが控室にいた証拠は、キン骨マンが転売目的で売店の商品を買い占めていたことをブラックホールが知らなかったという点にある。この証拠により、ブラックホールは犯行を認めることになる。
 この作品のポイントは動機にある。実は、すべてペンタゴンの策略だった。ブラックホールは悪魔将軍から、近いうちに正義・悪魔・完璧の三勢力による抗争が起こるため、正義超人であるペンタゴンとのコンビを解消するように命じられていた。それを隠してコンビ解消を持ちかけたところ、コンビ解消を拒んだペンタゴンは、ブラックホールに「相方殺し」の汚名を着せようと画策。パイルドライバーをかけた上で、「クロノスチェンジ」によって自らをブラックホールに殺させた。ブラックホールはこのことを隠そうとしていたのだ。
 この作品は、キン肉マンマニアによる、キン肉マンマニアのための短編ミステリーだ。ブラックホールやペンタゴンのことを知らなければ、トリックを理解することは難しい。ちょい役で登場する宇宙一凶悪コンビ(スカルボーズ&デビル・マジシャン)など、相当のマニアでなければ知ることはできないだろう。ここから超人殺人短編ミステリシリーズが始まるが、これは超ニッチなシリーズだ。キン肉マンマニア以外には全く理解されないかもしれないが、キン肉マンマニアの視点からは、なかなか満足度の高い作品となっている。ただし、ミステリとしては、ブラックホールが瞬間移動などの超能力を持っている点で、ミステリの論理が成立していない。キン肉マン世界という特殊な設定のミステリであり、ペンタゴンの策略という動機のどんでん返しはあるものの、伏線がうまく機能していない印象を受ける。記念すべきキン肉マンマニア向けニッチ短編ミステリとして、★4をつけておく。
● 蘇った被害者
 正義超人ふれあいフェスティバルが舞台。カナディアンマン、スペシャルマン、ティーパックマン、ベンキマン、タイルマン、チエの輪マンといった、キン肉マンマニアにとってはたまらないメンバーが登場。ティーパックマンが殺害されるところから始まり、議論と推理が進むが、決定的な証拠が見つからない。しかし、キン骨マンが「ティーパックマンを生き返らせた方が早くないか?」と発言し、物語が急展開する。
 キン肉マンの世界では、超人強度を「献血」のように分け与えることで超人が蘇るという独自の設定があり、ここで生かされている。この提案に対し、カナディアンマンが反対する。彼の超人強度は100万パワーで、ウォーズマンと並ぶ正義超人最強のアイデンティティを持つ。たった5万パワーでも分け与えたくないと拒否する姿が、カナディアンマンに疑いが向けられる。
 じつは、読者にはカナディアンマンが犯人ではないことが、独白の描写から分かる。カナディアンマンはトイレに行っていたが、そのトイレが洋式だったことがさらに疑惑を深める。しかし、ここでミートが真相を見抜き、解決のゴングが鳴る。
 真犯人はタイルマン。タイルマンはトイレの壁に同化して身を隠し、ティーパックマンを殺害していた。ミートは、タイルマンが「無残に殺害された仲間の仇は俺が打つ」と言ってティーパックマンの死を既に知っていたこと、ティーパックマンの紅茶のシミでタイルが濡れていたことが決め手となり、真相を暴く。タイルマンは、ティーパックマンが第2回超人オリンピックでファイナリストになったことを自慢していたことを恨んでいたのだ。
 その後、ティーパックマンを蘇らせるために超人強度を譲ることになるが、5万パワー足りない。カナディアンマンは渋るものの、最終的にはスペシャルマン、カナディアンマン、ベンキマン、チエの輪マンの四人でティーパックマンを蘇らせる。そして、スペシャルマンの提案でタイルマンも蘇らせるというエンドに至る。
 第2回超人オリンピックを知らない読者には、殺害の動機が分かりにくい部分がある。また、タイルマン、ベンキマン、チエの輪マンの技や特徴を理解していないと、推理や真相もぼやけて感じられるだろう。しかし、キン肉マンマニアにとっては、キャラクターの細かい特徴がしっかり拾われている点が面白い。
 ミステリとしての要素は、タイルマンがトイレのタイルに擬態していたというややコミカルなものではあるが、この作品はあくまでキン肉マンファンに向けたものであり、そうしたファンには十分楽しめる内容だ。個人的には★4でも良いが、総合的に見ると★3という評価かな。
● 1000万の壁
 富蟻杉益という富豪は100億円で、巨人の涙という宝石を落札する。そこに、フランスの怪盗超人ルピーンから、この宝石を盗むという予告状が届く。富蟻は、巨人の涙を守るため、ミート、バッファローマン、ウォーズマンに警備を依頼する。
 巨人の涙は、超人強度1000万パワーの衝撃にまで耐えることができるガラスケースで守られている。
 犯行予告の時間、催眠ガスが噴出。部屋が暗くなる。その後、ミートが目を覚ますと、巨人の涙はなくなっており、壁には巨大な穴が空いていた。時計は12時30分で止まっている。
 ミートは、自分に疑いをかけられて激怒するバッファローマン、想定外のことが起こったと考えているようなウォーズマンを前に、時計が止まっていることから謎を解く。そして今、解決編のゴングが鳴る!
 催眠ガスはキン骨マンの仕業。バッファローマンを背負い、ロングホーントレインでガラスケースを割ろうとするが、照明が消えたために誤爆し、壁に穴を開けて気を失う。
 真犯人はウォーズマンに変装していたルピーン。ルピーンはウォーズマンのマスクをしていたため、催眠ガスをあまり吸わず、キン骨マンが気を失った後に目を覚ます。そして、1万パワーを1×2×5×5×5×2×2=1000万パワーにするウォーズマンのベアークロー理論でガラスケースを破壊。この時、時計を壊してしまう。その後、バッファローマンが起きた時点でルピーンは寝たふりをしていた。バッファローマンは狼狽える。
 最後に、超人による窃盗団が巨人の涙を狙っていると告げ、富蟻から巨人の涙を受け取る。結果的にルピーンは予告通り、巨人の涙を盗み出した。
 ルピーンという超マイナーな超人が活躍。ウォーズマンのベアークロー理論は、ゆで理論の代表的なもので、これもキン肉マンネタの小説としては面白い。しかし、ミステリとしてはトリックらしいトリックがなく、平凡な印象。ロングホーントレインという言葉に反応できる人には楽しめる短編だが… ★3としておく。
● 呪肉館殺人事件
 ミートは、「1000万の壁」事件の後、怪盗ルピーンから「キン肉マンが群馬県と長野県の県境の宿泊施設にいるのではないか」という情報を得る。
ミートとキン骨マンは、ガイドブックから「呪肉館」というペンションを見つけ出し、キン肉マンの捜索に向かう。
 呪肉館のフロントで、キン肉マンが1週間前から滞在しているという事実を聞くが、キン肉マンからは「誰も通すな」と言われているという。ミートとキン骨マンは、キン肉マンに会うために呪肉館に宿泊する。
 呪肉館には、キン肉マン以外に、バイクマン、ミスターVTRと謎の超人「ドネルマン」が宿泊していた。
ミートはキン肉マンが宿泊する部屋で、ドア越しにキン肉マンと会話をする。明日の朝まで待ってほしいという依頼を受け、翌朝まで再会を待つ。
 しかし、翌朝、宿泊する1号室の中で、キン肉マンは胸板に短剣が突き刺さり、絶命していた。キン肉マンが殺害された時間帯にアリバイがない超人はいない。ミートは前日の夜、キン肉マンのもとに運んだ牛丼が、まるで今運んだかのような状態であることから、あることに気付く。「……今回の超人殺人、その謎は全て解けました!!」。今、解決編のゴングが鳴った!!
 今回のトリックは殺しの時限装置。犯人はミスターVTR。ミスターVTRは右手のマイクにミートの声を録音し、ミートの声を利用してキン肉マンにドアを開けさせる。ミスターVTRは、キン肉マンを短剣の側に立たせ、刃に向けて押し倒す。そして、キン肉マンをスーパースロー再生を行う。キン肉マンは、夜10時から朝7時にかけて、ゆっくりと短剣に向けて倒れたのだ。
 ここで、さらにどんでん返し。その場にいた「ドネルマン」こそが本物のキン肉マンで、キン肉マンと間違って殺害されていたのはシシカバ・ブーだった。キン肉マンはシシカバ・ブーと入れ替わっていた。ミスターVTRは、王位継承戦を再開するためにキン肉マンを殺害しようとしていた。キン肉マンのキン肉バスターにより、ミスターVTRを倒す。
 キン肉マンは、フェイス・フラッシュでシシカバ・ブーを蘇らせる。
 地の文で「キン肉マン」と書いている人物が「シシカバ・ブー」だったことは納得しにくいところ。シシカバ・ブーとキン肉マンの入れ替わりの伏線もない。ミスターVTRの個性を使ったトリックは、キン肉マンファンには納得。ミステリとしての完成度は低いので… ★2かな。
● エピローグ
 各地で超人殺人が発生したのは、ミスターVTRの映像に関することなら何でもできる能力で、「世界を特定のドラマや時間のように変えてしまった」のではないか。地球を映した写真を利用し、世界をミステリーのような世界にしたのではないか。キン肉マンとミートは筋骨マンとともに、ミスターVTRを問い詰めに行くという場面でエンド

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2024年10月27日

Posted by ブクログ

キン肉マンが好きなら外伝作品としてはとても面白い本書
少なくとも、Ⅱ世や完璧無量大数軍編とは辻褄があっているようには思えるのでなかなかよくできていると思う
それにしても、まさか、ゆで理論がトリックに使われることになるとは夢にも思わなかった
ミステリーとしても及第点をあげられると思うので、キン肉マンが好きでミステリーも好きという方には非常にオススメになっている

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2023年11月01日

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