【感想・ネタバレ】デザイン思考2.0 ~人生と仕事を変える「発想術」~(小学館新書)のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年12月07日

990

工学系の人のデザイン論だった。デザインとはアートではなく、顧客の問題解決に徹することだからある意味アートとかよりコンサルティングに近いんだろうなと思う。アートは自分が表現したいものだけど、デザインは徹底して顧客の要求を聴いて実現すること。顧客のニーズは顧客自身が言語化出来てるものと言語化で...続きを読むきてないものもあるからそういう潜在的なニーズをデザイナー側が予想することも大事なんだということが書かれてた。その潜在ニーズを見つけるには「共感力」が必要。

良いアウトプットを行うには良いインプットが必要。

AIが持っていない能力は、「課題発見力」と「共感力」なのでそれ以外はAIに任せて、人間はこの能力を鍛えることが重要だと思った。

デザイン思考というのは人間関係構築にも応用できる。

松本勝
VISITS Technologies株式会社CEO/Founder。東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマンサックス入社。株式トレーダー、金利デリバティブトレーダーを経て、2010年に人工知能を用いた投資ファンドを設立。2014年にVISITS Technologiesを設立し、人の創造性を可視化する「デザイン思考テスト」を独自技術(日米で特許取得)により開発。また、企業向け意思決定DXツール「ideagram(VISITS Forms)」等、企業のイノベーション・DX支援サービスを幅広く展開。内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」委員、金融庁「金融審議会」委員等を歴任。スーツ・オブ・ザ・イヤー2019受賞。趣味はアームレスリング (元日本代表)


一方のベゾスはリスクをとることで有名で、「失敗は成功する企業を構築するために非常に重要な要素だ」とよく話しています。実際、2019年には《失敗の規模が大きくならないなら、変化をもたらすような大きな発明をすることはできないだろう》と株主向けの手紙に綴っています。

 ジョブズやベゾスは結果的に「偉大な人物」にはなりましたが、最初から偉大だったわけではありません。最初は普通の人間だったのです。普通の人間が、何十年にもわたり、毎日ひたすら顧客ニーズにだけ向き合い、サービス作りに挑戦し続けた結果、「偉大な人物」になったのです。

デザインという言葉には「問題解決」という要素が含まれています。日本ではアートとデザインが混同されがちですが、アートは何かしらのアウトプットで「自己表現」を行うことを目的としますが、デザインは達成したい目的や創りたい世界観を実現するためにアウトプットを出す「問題解決」のための活動です。

この例を見てわかるように、デザイナーにとってデザインとはあくまで問題解決のための手段であり、デザイン自体が目的ではありません。デザイナーという肩書で仕事をしている人の中には、この「問題解決」という視点が欠落しているアーティストタイプの人も多くいます。何かしらの問題解決をしたいと思って発注をしている企業側と達成したい目的が共有できず、多大なコミュニケーションコストがかかってしまうという問題が頻発するのは、このような理由からです。

デザイン思考とは「創造的問題解決」であると述べた通り、取り組むべき問題自体が最初から明確になっているわけではありません。しかも、その問題は潜在課題であるため顧客自身も言語化できないケースがほとんどです。したがって、顧客に問題を定義させるのではなく、想定顧客の行動を観察したり、インタビューを通じて顧客のインサイト(本音) を発見し、サービス開発者側で問題を定義する必要があります。

新しいコンセプトを考え出すとは、脳の中に無数の知識や経験が既にインプットされているときに、それらを「新しい組み合わせ」として「新結合」させるという思考行為なのです。知識や経験がないと、そもそも組み合わせることができません。したがって、良いアウトプットを行うためには、まずは良いインプットが必要となります。

この嗅覚とも言える能力は、1万年以上前に備わった「生き残るための能力」だったと言われています。太古の昔、原野で暮らしていた私たちの祖先は、多くの生命の危機に晒される環境の中で生きていました。天敵にいつ襲われて死ぬかわからない状況下では、この変化や違和感に「気づく力」は最も重要な能力の1つだったに違いありません。そう考えれば、現代は、戦うフィールドがビジネスシーンに置き換わっただけで、この力は今も昔も変わらず生き抜くために欠かせない能力だと言えます。

 ではこれらのネットワークをどのように活用すれば、創造力を鍛えられるのでしょうか。実は、創造力が発揮されている時に使われているのはDMNです。意外に感じる方も多いかもしれませんが、CENを使って、企画などを集中して考えている時には創造的になれないのです。集中して思考していては、自分の意識や常識の範疇を破るような思考ができず、周囲をあっと言わせるような斬新なアイデアを生むことは難しいことを意味します。

しかし、前述のように、DMN時に活用できる情報は、CEN時に蓄積した知識や経験です。したがって、いかに良質な知識や経験をCEN時に蓄積するかが重要となってきます。  そして、良質な知識や経験を充分に蓄積したら、あえてDMNに切り替える努力をします。例えば、シャワーを浴びるとか、散歩に出かけるなど無意識的にできる行動をすれば、DMNが自然に作動します。

しかし、AIがとても苦手なことがあります。それは、「キングを詰めたり、王将を取ったら勝ちというゲームが面白い」ということに気づけないということです。「解くべき課題」を設定する力、すなわち「課題発見力」をもっていないのです。その理由は、AIには人の感情を理解できないからです。さらに言うと「共感力」をもっていないからです。このAIの「課題発見力」という弱点が、AI共存時代における人間の最後の強みとなります。だからこそ、これからの時代は「共感」をもとに「課題を見つける力」が重要となるのです。

しかし、皆から良いと言われるアイデアは、本当に良いアイデアではない可能性が高いのです。これは、直感に反するものです。ペイパルの創業者で著名な投資家であるピーター・ティールは、「多くの人が賛成しない大切な真実を見つけよ」と言っています。これは、「本当に良いアイデアは多くの人にとって理解できない。なぜなら、本当に良いアイデアはあなただけが知っている秘密(=真実) を含んでいなければならないから。皆が理解できる(=秘密がない) という時点で良いアイデアとは言えない」ということを意味しています。

しかし、この場合ですら、「多くの人が賛成しない、大切な真実」のアイデアのほうが大きな成功を 摑 める可能性が高くなります。なぜなら、誰もがたどり着けるニーズとソリューションをベースとした事業は、競争環境が激しくなるからです。ピーター・ティールは、「競争した時点で負け」とも語っています。競争環境が激しくなると、競争に勝ち残れる可能性が確率的に減るだけでなく、たとえ上手くいったとしても価格競争に巻き込まれて、勝ち残った末の利潤がほとんど残っていない状態になってしまうためです。重要なのは、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」になることで、市場を独占することです。これも、ピーター・ティールは著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版) の中で何度も繰り返しています。 「オンリーワン」になるためには、経験しなければその素晴らしさに気づけないアイデアに取り組むべきです。実際にでき上がったサービスを体験するまで多くの人がその素晴らしさに気づけないため、競合の参入がほとんどない状態でサービスをブラッシュアップし続けることができます。そして、実際に世の中の人々がその素晴らしさに気づいた瞬間には、あっと言う間に市場を独占してしまいます。競合の大手企業が資金を潤沢にもっていたとしても、事業化には最低数年かかるため、サービスを完成させた時には既に市場は独占されてしまっており、参入の障壁が極めて高くなっています。資金力、顧客基盤、人的リソースで劣るスタートアップが大手企業に打ち勝ち、巨大企業になるためにはこの方法が最も近道なのです。

ニーズには大きく分けて「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」があります。顕在ニーズとは、「あなたの困りごとは何ですか?」と聞いて、顧客が「~に困っている」や「~したい」と答えられるニーズです。  一方、潜在ニーズとは顧客自身も求めていることを理解しておらず、実際にサービスなどを体験して初めて自分の求めていることに気づくニーズです。フィーチャーフォン全盛時代におけるスマートフォンのようなものです。スマートフォンを使って初めてその体験の素晴らしさには気づきますが、体験せずに「様々なアプリを楽しめるパソコンのような携帯電話が欲しい」と言う人は、当時はほとんどいなかったでしょう。

顕在ニーズであれば、顧客に簡単なアンケートやヒアリングを行うだけで見つかるでしょう。一方、潜在ニーズの場合は、顧客に対してインタビューを行ったり行動観察をしたうえで、「顧客が本当に求めているものは何だろう?」と問いを立て、顧客自身も気づいていない隠れたニーズを特定する必要があります。

革新的なアイデアを生み出すためには大幅な発想の転換が必要です。そして、大幅な発想の転換を実現するためには、より遠くへ発想を飛ばすような前提条件を転換しなければなりません。その際に有効なのが「抽象化」の技術です。

「人脈を作るには異業種交流会に参加して色んな人に会いに行かなければならない」と言われたとしましょう。ですが大勢の集まる場では、自分は多くの人にとってワン・オブ・ゼムに過ぎません。知り合いは増えたとしても、相手から魅力的な存在と認識されなければ、本来の人脈を作った先の目的には活きません。であるならば、自分自身の「独自の提供価値」を磨き上げ、相手にとってあなたがオンリーワンの存在になり、向こうから会いたくなる人物になることの方が大切です。  まずは、相手にとってのあなたの「提供価値」の抽出を行ってみることです。デザイン思考を使ったサービス作りで提供価値の抽出を行ったように、あなた自身をサービスに置き換えて、相手から見た価値と必要性をデザインするのです。これは世の中で言うセルフデザインに当たるもので、裏にある考え方はデザイン思考そのものです。  このようにデザイン思考は生きていくうえの様々な局面で活用可能です。ビジネスにおいてだけでなく、日々の生活に取り入れることで人生はきっと豊かになります。

まずは、相手にとってのあなたの「提供価値」の抽出を行ってみることです。デザイン思考を使ったサービス作りで提供価値の抽出を行ったように、あなた自身をサービスに置き換えて、相手から見た価値と必要性をデザインするのです。これは世の中で言うセルフデザインに当たるもので、裏にある考え方はデザイン思考そのものです。  このようにデザイン思考は生きていくうえの様々な局面で活用可能です。ビジネスにおいてだけでなく、日々の生活に取り入れることで人生はきっと豊かになります。

ここまで述べたとおり、「他者への共感から潜在ニーズを発見する」というプロセスから始めます。したがって、デザイン思考力を高めるためには、まずは「他者への共感力」を高めることが重要です。「共感」する目的は他者の心の動きを詳細に理解するためです。デザイン思考とは、言い換えれば「心の動きを理解することで他者の行動をデザインし、自社のサービスを使ってもらうように上手く誘導するための思考メソッド」です。

気持ちにさせるのか、その理由について考えてみるという習慣をつけると、自然と「人の気持ちの動かし方」が理解できるようになります。

0

Posted by ブクログ 2023年02月06日

ニーズとは何か、提供価値は何か等、全体を通じて具体例を交えて非常に論理的に説明されており参考になった。
「共感」によって人々のニーズを捉え、価値提供に活かすということを実践したい。

0

Posted by ブクログ 2023年12月10日

『デザイン思考とは「今よりもっと良い、理想の世界観やユーザー体験( UX)」をイメージしてから、それを実現するためのサービスを考えよう、という考え方です。 〜デザイン思考とは「創造的問題解決」であり、理想からの逆算思考で行うアプローチとも言えます。「創造的」と付いているのは、まずは理想の状態をデザイ...続きを読むン(創造)する必要があるからです。』『デザイン思考とは具体的にどのようなステップで進めていけば良いのでしょうか。代表的なものに〜① 共感 ② 問題定義 ③ 創造 ④ プロトタイプ ⑤ テスト』とあり、本書では特に問題定義とアイデアの創造にフォーカスされている。
たまに会話に挙がる「気づく力」(必要だが伸ばし方がわからない)についてDMN、CEN、SNという脳のネットワークからの観点での説明はなるほどと思わされた。また、「本源的欲求」 ×「シーン」 =「ニーズ」という関係式からのペルソナ理解は今後取り入れてみたいもの。
ロジカルシンキング、デザイン思考、クリティカルシンキングについて、再解釈のうえバランスよく実行できるようにする。

0

「ビジネス・経済」ランキング